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とある兄妹の出来事

とある兄妹の朝

作者: オルフェイス

オルフェイスと申します。ずっと書いてみたかったネタをぶちこんで書いてみました。

初心者です。なんか悪かったらすいません。

ピピピピピピピ─────ガチャ



「…朝か」



時計の鳴る音を止め、時間を確かめる。今の時間は6時30分。いつも通りの起床時間だった。


彼───坂田総司(さかだ そうじ)は社会人である。


今年で22歳になり、8年前に病気で母をなくし、父も4年前に事故で死んでしまって以降、たった1人の家族である妹と共に二人暮らしをしていた。


小、中、高ともに友達と言える人物はおらず、部活と勉学に励む毎日を送り、親が死んでからはバイトを始め、二十歳になった時にとある中小企業で面接をし、無事に合格した。


親しいと言える人物は、就職してからも出来ることはなかったが、総司はそれを気にすることなく仕事に励み、現在は高校二年生になった妹に必要な資金を稼いでいる。



「……」



素早く仕事着に着替え、リビングに足を向ける。仕事まで朝食を含めても大分時間があるが、妹の分も作るので、多少余裕があったほうが良いと考えてのことだった。


リビングにつながる扉を開け、台所に向かおうとした総司の目に、ソファでスヤスヤと寝息を立てて寝ている妹の姿が写った。


坂田幸奈(さかだ ゆきな)───越前高校に通う頭脳明晰、文武両道、才色兼備と三拍子揃った天才妹。吹奏楽部と水泳部を兼部している。


そんな妹だが、幸奈が天才的なのは吹奏楽───つまり、楽器だった。


ピアノ、トランペットの他に、ヴァイオリン、ホルン、フルート、琴などなど……幸奈に扱えない楽器はないとさえ思えるレベルだ。


実際、幸奈が通う学校にある楽器は全て扱え、裏では『歩くオーケストラ』などと言われるほどである。


そんな幸奈だが、容姿も優れていた。月に最低でも五、六人に告白されるほどで、裏では『恋人にしたい高嶺の花ランキング』にて一位をなっているレベルである。もちろん、本人は知らない。


さて、そんな幸奈がなぜ自分の部屋でなくリビングにあるソファで寝ているのか………その理由を、総司はテーブルに置かれた物を見て理解した。



「…そういえば、もうすぐ大会なんだったか?兼部も大変だな」



置かれていたのは、フルート───幸奈が普段から使っている楽器だった。兼部をしている都合上、練習できない時間もあるため、家で近所迷惑にならない程度に練習していた。


普段は家に帰ったら幸奈の楽器の練習を総司も見て、アドバイスしたりしているのだが……夜遅くまで練習していたらしいことがすぐにわかった。


「…熱心なのはいいが、風邪を引くからちゃんと部屋で寝てほしいな」


そう呟きながら、まだ寝ている妹を起こさないように朝食を作り始めたのだった。




▼▼▼▼




「おーい、朝食できたぞー?起きろー」



「ん…んぅ……」



朝食を作り始めてから約三十分。そろそろ起こすべきだろうと総司は幸奈を揺さぶりながら声を掛ける。


そうしてから一分後、幸奈はぽーっとしながらも体を起こし、瞼を開いた。幸奈は朝に弱く、未だに目は完全に開ききっていない。



「…おはよ、ございまふ」



「あぁ、おはよう。朝食は出来てるぞ」



「んー……いただきまふ」



幸奈は体を右に左にと揺らしながらも、箸を手に取り、朝食を食べ始める。総司はそれを見たあとに「いただきます」と総司も食べ始めた。


総司と幸奈は、朝の食事の時だけは喋ることはない。幸奈が朝に弱く、完全に目覚めるまでボーッとしているからだ。そのせいで、幸奈は数年前に恥ずかしい思いをしてからは、総司に幸奈が「寝起きの時だけは何も言わないでくださいお願いします」と懇願し、今の状態になっている。


そんな幸奈だが、朝食を食べ進めていくほど、目元をはっきりとさせ、曲がっていた背中もピシッとまっすぐになっていき、朝食を食べ終わる頃には、先ほどまでのぼんやりとした雰囲気は消え、凛々しい雰囲気を纏っていた。



「ご馳走さまでした。美味しかったです」



「おう、お粗末様」



朝食を終え、食器を片付けたあと、幸奈はすぐに部屋に行き制服に着替え、リビングに戻ってきて、テーブルに置いてあったフルートを吹き始める。



「大会、頑張れよ」



それを見た総司は、短く応援の言葉を投げ掛けた。それを聞いた幸奈は一旦フルートを吹くのをやめ、



「ありがとうございます。けど、兄さん?まだ二週間はありますからね?」



と、兄に向けて微笑みながらそう言った。その顔は幸せそうな様子で、満ち足りてるとでも言わんばかりだった。



────事実、そうなのであるが。



「早めに言っておいてもいいだろ?言われた方がやる気が出ないか?」



「出ます。元々やる気はありましたが、さらに増えました」



「そうか。ならよかった。でも、だからって煮詰めすぎたりはするなよ?ちゃんと部屋で寝るようにな」



「ふふ、はぁい」



幸奈は甘く返事を返し、再びフルートを吹き始めた。総司は作っておいたコーヒーを飲みながら、ケータイを使って天気予報やニュースを確認して時間を潰す。


そうして時間が立ち、そろそろ幸奈は登校、総司は出勤時間となり、総司は予め作っておいた弁当を幸奈に渡し、玄関に向かい────幸奈が突然抱きついた。



「兄さん」



「おう」



総司は、突然抱きついてきた幸奈を驚くことなく受け止め、首を晒した。それを見た幸奈は嬉しそうにしながら首に顔を近づけ───そして、噛みついた。


いや、正確には跡を付けた、というのが正しいだろう。幸奈が噛みついた跡には、小さく歯形が付いていた。


幸奈も総司と同じく首を晒し、その首に総司は噛みつき、幸奈が付けた跡と同じものを付けた。


───これが、坂田家にとっての……二人にとっての『いってきます』であり、『いってらっしゃい』であった。


この行為は、総司が19、幸奈が14の時から始まっていた。父が死んでから三年もの間、互いが互いを離さないようにと───幸奈が発案した『日課』だった。


総司としてはそれを拒む理由もなく、『幸奈がしたいのなら』と、その『日課』を受け入れた。


───以降、跡の付け合いは続いていた。



「───ふふ。いってらっしゃい」



「あぁ。いってきます。学校、頑張れよ」



「はい。兄さんも仕事、頑張って下さい」



幸奈は背中に回していた腕を外し、嬉しそうにニコニコと微笑み、そう言った。


総司もそれに返事をし、改めて玄関に向かっていった。



───そうして、兄妹の日常が始まった。



▼▼▼▼


『妹の独白』



────あぁ。今日も良い日だ。



兄と一緒に、二人だけで暮らしている───それが、すごく嬉しい。さっきみたいに、跡を付け合っている時は、本当に幸せな気分になる。



……正直に言えば、あのまま続けていたら下着が使い物にならなくなっていたかもしれない。夜や休日ならともかく、平日の朝にそんなことにはしたくなかった。



でも、それを含めてもやっぱり私は幸せだ。誰かにこの幸せを話してみたくなるくらいには、そう思った。けど、それはつまり兄さんのことを教えるということだ。だから、絶対に誰にも言わない。



…兄さんは、聞かれたら言うのかもしれない。けど、積極的に言おうとはしない。言うまでもないことだと、そう考えているのだろう。



兄さんは、そういう人だ。そんな性格のせいで、友人はいなかったと言っていた。交友関係はそもそも存在しなかったとすら言っていた。



───嬉しかった。



だって、それはつまり兄さんのことを知っている人はいても、仲良くしている人はいないと言うことなのだから。



お父さんもお母さんもいない今、一番兄さんに近い位置にいるのは、私だ。これは、自惚れでもなんでもない、事実なのだ。



お父さんとお母さんが死んでしまったのは、悲しかったけれど……でも、兄さんがいたから、すぐに立ち直れた。



やっぱり、私は兄さんが好きなんだと───そう思った。



いつ、どの時点で好きになったのかはわからない。知ろうとも思わない。今、兄さんが好きであるという事実だけしかいらない。極端ではあるけれど、兄さん以外に欲しいものはない。



……独占欲が強いというのは、自覚している。わかっているのだ。欲があっても、相手が応えてくれなければ、独占はできない。強制的にそうする力を、兄さんを縛る力を、私は持っていない。



けど、兄さんは応えてくれた。一年前に、私と本当の意味で繋がりあってくれた。その時の気持ちは、とてもではないが表すことなんて出来なかった。



けど、その直後に私は不安を抱いた。『私が求めたから、兄さんはそうした』だけなのではないか、と。



───それは、兄さんに聞いたら半分そうだけど、半分は違うと言ってくれた。『確かに求められたからそうしたけど、だからといってそれだけで応じたわけではない』と……確かに、そう言った。



その時に、不安は解消された。このような不安は、昔、私が兄さんと"本当の"兄妹であると思っていた時ほど長くもなかったが、それでも不安なものは不安だったのだ。



───兄さんと私は血が繋がっていない。お義父さんとお義母さんは本当の親ではない。けど、私の肉親は誰なのか、何処にいるのかは私も知らない。捨てられていた私を兄さんが見つけて、拾ってくれたらしい。



その時から、私は『坂田幸奈』になった。例え肉親が見つかったとしても、私は何の興味も示さないし、どうでもいいと片付けるだろう。



何故なら、私にとっての一番は兄さんであり、それ以外に存在しないからだ。私が好きなのも、体を預けるのも、跡を残すのも、残させるのも────全て、兄さんだけ。



だから───兄さん。



ずっと傍に、いさせてください。そのためなら、私はどんなことだってするし、出来るだろう。



兄さんに比べれば、私は色々と劣ってるけど───ちゃんと、横に並び立てるようになりたい。今は、追いかけるだけでいい。後ろにいるだけでいい。



けど、いつかは─────



そのために、私は頑張る。追いかけ続ける。どんな壁があっても止まらずに、進み続けてみせる。



────兄さん、私は貴方を────愛しています。



だから………離れたり、しないでね?兄さん。



プロフィール


坂田総司(22)

幸奈の兄。社会人。実は現段階の幸奈の学力、身体能力、音楽、水泳全てにおいて上回っている超人。いわば、成長しきった天才。

幸奈も成長すれば兄を越えられるが、今はまだ無理。

趣味は裁縫と料理。


坂田幸奈(17)

総司の妹。学生。天才。だがまだ超人には勝てない。成長途中の天才。愛が重い。全てにおいて兄を優先する。友人はいるが、ただそれだけ。

隠れ肉食系・兄限定でMなブラコン。水泳は趣味に近い。実は少し貧しく(何がとは言わないが)コンプレックス。髪の色はアルビノでもないのに白。目は赤くなく青い。何故なのかは不明。


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