金の斧、銀の斧
男は鉄の斧を落とすと湖の中から美しい女神が出てきた。その女神が「正直者には金の斧をあげましょう」と言い男は金の斧と銀の斧を貰った、その後の話。
「金の斧に銀の斧か…。貰っても金の斧は重くて切れ味も悪い、何よりも近所の家の者に成金趣味と言われてしまう。銀の斧は鉄の斧より柔らかすぎて使い物にはならない。なぜ、女神様はこんなにも使えない斧を与えたのだろう。出来れば鉄の斧の新品を渡して欲しかった」
と男はため息をついた。そこで近所に住んでいる木こりに話をしに行った。
「なるほど、金の斧に銀の斧か。確かに一見使えそうに見えて、かなり使いにくいな」
「だろう。女神様はなかなかに気が利かないようだ、これなら元の鉄の斧の方が良かった」
「ふむ、ちょっと試したいことがあるんだが」
「なんだい?」
「私が湖に行って鉄の斧を落とし、女神様に嘘を言えば鉄の斧が返ってくるんじゃないか?金と銀の斧が正直者のご褒美としてくれたのであれば、今度はご褒美は無しとなりそうな物じゃないか」
「なるほど、確かにそうかもしれない。じゃ、一度顔を見られている私が行くとまずいから君が行ってくれないか」
「もちろんそのつもりだ。試したいこともあるしな」
ともう一人の木こりは鉄の斧を持って湖に来た。そして、斧を湖に投げ込み少し待った。すると湖の中から女神様が出てきた。そして、金の斧を持ってこう言った。
「あなたが落としたのは、この斧か?」
「そうです、そうです。金の斧です。その金の斧を川に落としてしまったんです」
すると、神さまは目をつり上げて「この嘘つきめ」と言って湖の中に帰ろうとしました。木こりの男は慌てて言った。
「ちょっと待ってください。私の斧はどうなるんですか?」
「私がもらう。これはお前が嘘をついた罰です」
「女神様、それは泥棒と言うんです。人の者を勝手に取っては泥棒ですよ」
女神様は少し考えた。確かにそうかもしれないが罰は罰、このまま木こりが落とした斧をそのまま返しては罰にはならないどうした者かと考えてしまった。木こりはしめたとばかりに女神様にこう言った。
「では、女神様。こんなのはどうですか?最近、私の友人がこの池に鉄の斧を落としてしまったそうなんです、しかし代わりに渡されたのは金の斧。友人は金の斧では重くて切れ味も悪い、何よりも近所の家の者に成金趣味と言われいて可哀想なのです。そして、銀の斧は鉄の斧より柔らかすぎて使い物にはならない。ですから、友人に前に使っていた斧をプレゼントしてあげたいのです。どうか友人の為にお願いできないでしょうか」
「ふむ、そんな事が。分かりました、ではあなたにこの斧をあげましょう」
と木こりの男は友人の鉄の斧を女神様から頂いた。渡すと女神様は湖に帰って行こうとしたが木こりはまた呼び止めた。
「女神様、少し聞いてもよろしいですか?」
「何でしょう?」
「女神様はどんな人間にもこうして善悪で金の斧や銀の斧を施したり罰を与えたりしているのですか?」
「もちろんです、それが私の仕事ですから。もうよろしいですか?それではさようなら」
と今度こそ女神様は湖の中に帰って行った。男はなるほどこれならもっと面白い事が出来るかもしれないと思った。そして、もう一人の家に帰り女神様から貰った鉄の斧を渡した。貰った木こりは大層喜んだ。
「いや、助かるよ。これでいつものように仕事ができる」
「そうかい、それは良かった。ところで、一つお願いがあるんだが」
「なんだい」
「その金の斧と銀の斧、使わないなら売ってはくれないか?」
「それはだめだよ、女神様から頂いた物だから使いはしなくても他人に譲る事なんてできないよ。君がいくら恩人だからって」
「ならしょうがない、無理にとは言えないからね。代わりに明日一日だけ貸してはくれないか?」
「一日だけ?まぁ、いいけど」
「助かるよ。では君の斧も戻って来たことだし祝杯を上げよう」
とそれから二人は祝杯を上げた。斧が戻って来た木こりは大層嬉しかったのかいつも多く飲んでいた。
次の日、金の斧を借りた木こりはまた湖に来た。今度は手に鉄の斧と借りてきた金の斧を持って。そして、昨日と同じように鉄の斧を湖の中に投げ入れた。また少し経つと湖の中から女神様が出てきた、そして金の斧を持ってこう言った。
「あなたが落としたのは、この斧か?」
「いいえ、違います」
次に女神様は銀の斧を持って木こりに聞いた。
「それではあなたが落としたのは、この斧か?」
「いいえ、違います」
さらに女神様は鉄の斧を持って木こりに聞いた。
「ではあなたが落としたのは、この斧か?」
「はい、それが私が落とした斧です」
「うむ、あなたは正直者です。褒美にこの金の斧をあげましょう」
と女神様は木こりに金の斧を渡そうとした。しかし、木こりはそれを受け取らなかった。そして、女神様に金の斧を見せながらこう言った。
「女神様、私はもう金の斧を持っているのです」
「ふむ、ならば銀の斧をあげましょう」
そして、今度は銀の斧を見せながら言った。
「女神様、私はもう銀の斧を持っているのです」
「それは困りましたね。では今回は無しという事で」
「待ってください。前に聞きましたよね、善悪で金の斧や銀の斧を施したり罰を与えたりしているのですか、そしてそれが仕事であると。ならば何もなしというのはおかしくはないでしょうか?」
「うっ、確かにそうかもしれません。しかし、他に渡せるものが無いのです」
「それに、私は前は嘘つきでしたが更生して正直者になりました。ぜひ、その辺も加味して頂けると幸いです」
「昨日の今日で更生したとは信じられないですが…。いいでしょう、では何が欲しいのです?本当に斧しか私は渡すことはできませんよ」
「貴方が欲しい」
「………………………、は?」
「女神様をください。いや、結婚して下さいお願いします」
しばしの沈黙ができる。女神様は理解するまでかなりの時間を要した。木こりは真剣な表情で女神様の返事を待っていた。
「なるほど…確かに正直者には褒美をあげないといけませんね。ですが…、それは」
「お願いします!」
「…わかりました、明日また来てください」
と言って女神様は頬を赤くして湖の中に消えていった。それから、「斧は返してほしかったな」と言って木こりは友達の木こりの家に金と銀の斧を返しに帰った。そして、酔いつぶれていた木こりに斧を返しに行った。
「君のおかげでうまくいったよ」
「えっ?何が?」
「近いうちに結婚出来るかもしれない」
「斧を持って結婚?斧で脅迫なんて君らしくないよ」
「いや、そうじゃない。まぁ聞いてくれ」
と木こりは友達に事の全容を話した。友達は笑っていた。
「確かにきれいな女神様だけど、上手くやったな。両方持ってるから貴方が欲しいなんて」
「本当に思った以上に上手くいったよ。一目ぼれだったからね、何とかして付き合う方法はないかと考えたらこうなった。君のおかげだよ、ありがとう」
そして、次の日。また、木こりは湖に行った。湖では女神様が顔を赤くして待っていた。
「おはようございます。女神様」
「…おはようございます」
「では、今日から私の嫁という事で」
「…こちらこそ不束者ですがよろしくお願いします」
それから、木こりは綺麗な奥さんを貰い木こりとして幸せな生活を送ったとさ。
後半のしまりがかなり悪いので誰かに指摘されたら書き直すか、後半部分を別につけます。