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四季暦は死にたくない  作者: 韋駄天
一章
9/14

密室=プリクラ事件

「じゃあ今日は取り合えず、帰らせて貰いますねー。」

「ほーい。じゃあ皆!また連絡するわー」

色々と話した後、連絡先を交換して入部届を出した僕達は、お笑い部を後にする。


「さぁ帰るぞー!」思いの外早く帰れることになり、僕のテンションはだだ上がりだった。

時間で言えば、まだ三時前だった。


「わりぃ…俺はこれで抜けるわ…

宿題忘れてて、部活決まったら職員室に来いって言われてるんだよ」泣きそうな声で話す時貞ときさだ


「私も抜けるね-!他の友達がまだ決まってないみたいで-!ちょっと付き合ってくるー」時貞に続くように、時雨しぐれも何処かへ行ってしまった。


ありがたいことだ。これでさっさと帰ってお家でごろごろ出来るぞ!


…………ん?


隣でなにやらモジモジしている林檎りんごを発見する。


「林檎は予定ないの?」

こう言う時は男子がリードしてあげるべきだろう。

「そっ。そうなんです。なっな。なので。よかったっら一緒に帰りません………か?」

「そうだね!それなら仕方ないね!林檎みたいな可愛い子を一人で帰られると危ないしね。家まで送るよ!」

断っておきたいのだが、言い訳では無い。事実である。


そう言うことで、僕達は一緒に帰ることにした。




「こっここ!です!」

学校から10分ほど歩いた、繁華街で林檎が急に声を上げる。

「えっ!家ここなの!?」変な声になってしまった。


僕達の目の前には、ゲームセンターがそびえ立っていた。

少し、いや。ほんの少し考えて間違い訂正する。

「そういうことね!まぁ案外早く終わったし、少しくらい寄り道していこうか」


彼女は僕に好意を寄してくれているらしいし、僕も林檎と居るとかなり安心する。さすがは我が高校随一の天使と言われるだけある。一緒に居るだけで癒やし効果が半端ないのだ。

本気でマイナスイオンでも出していそうなほどだ。


しかも、学校の外と言うこともあり、そこまで目線が痛い訳では無いので、これなら林檎の回復効果の方が上回っている。


僕達は、UFOキャッチャーやエアーホッケーなどかなり熱中して遊んでしまった。

不意に、林檎が僕の腕を掴みしゃがみ込む。

痛みに釣られて、僕もしゃがみ込んでしまう。


「おっ同じ学校の!せっ生徒です。」林檎が耳打ちをしてくる。


僕も隠れながら様子を覗うと、複数の男子がいた。ネクタイを見る限り、同じ1年生だろう。顔は全く知らない連中だが。


!!こちら側にやってくる。僕達には気付いてないようだが…

僕は慌てふためく。僕は今学校の中で時の人である。

学校でも相当人気である時雨と付き合っているから。

もしその僕が、同じくらい人気の林檎と二人でゲーセンにいることがバレたら……


二人は悲劇のヒロインに。僕は美女二人を誑かした世紀の大悪党だ!それは困る。心底困る。


「こっ。こっちです。」

と、腕を掴まれ引っ張られる。痛みがあったので、きっと林檎だろう。


「こっここなら!取り。合えずだっ大丈夫。です」

林檎が微笑ンでいるのを見ながら、周りを確認するとそこはプリクラ機の中だった。


確かに。ここならあの男子集団が、何処かに行くまで隠れれるだろう。そうして、僕達はさながらスナイパーのように、男子集団を影から監視することにした。

すると彼らは、数十分もしないうちに店から出て行ってしまった。


「よし!出て行ったぞ。これで安心して僕達も外に出られるね」

そういって堂々とプリクラ機から出ようとした僕は、全身に痛みを感じ、出していた足を止める。

「どっどうしたのかな?」振り返りながらその痛みの元凶である林檎に話しかける……


「もっもしかしたら。まっまだ!外にいるかもだ……よ?

それっに!せっ折角はいったんだから一枚とっとりたいです。」

そこには、こちらまで恥ずかしくなるほどに頬を真っ赤に染めた林檎がいた。

最早語尾もめちゃくちゃだった…



確かに。これは僕の人生において千載一遇のチャンスかもしれない。天使のような少女とプリクラをとれるなんて、一般ピーポーなら、30年年後に人生のピークだっと武勇伝のように語れるレベルだろ…ただ……


「いや。ほら。でもだよ?もし、ここでとった写真がバレたりしたら……僕死んじゃ……」

ドンッ

止められた。壁ドンで言葉を止められた。


「ごちゃごちゃいってんじゃねーぞ?折角あたしから誘ってやってんのによー?黙って「はい!そうしましょう!」くらい言えねーのかお前はよぉ?」

でっでてしまった。オラオラ系林檎様のおなーりーである。

こうなると僕は全くの無力である。


「はっはい!そうしましょう!」そう言って二人でプリクラを取り始める。


『3!2!1!』パッシャ

沈黙の中、機械から聞こえるアナウンスとシャッター音が数回繰り返された後……

「今はチュープリって言うもんがあるらしいなぁ?あたしもされてみたいなぁ。なぁ?」林檎がおもむろに口を開く。


「えっとそれは……どういう意味で……」

『3!2!1!』パシャッ

プリクラ機は空気を読まず、作業を進行していく。


「お前はそんなこと女の子に聞いちまうのか?」

オラオラ系林檎の表情がどんどん強張っていく。

「あの。ほっぺとかで良いですかね?唇同士だと、僕呼吸不全になるんで……」

『3!2!1!』パシャッ

『次がラストだよー』

無情な機械音が響き渡る。


「当たり前だろ?あたしのファーストキスをこんな所でとられてたまるかよ!早くしろ!これで最後だぞ?」

「はい!失礼します!!」


『3!2!1!』パシャッ


終わると同時に林檎の柔らかな肌から、唇を離す。

そして直ぐに、彼女の方を確認する。


するとそこには、今にも故障しそうな林檎が口をパクパクさせていた。


『次は横で落書きしてね』


「ツッッツギハ。ラクガキコ。ーナダヨ」


何とか出したであろう彼女の声は、先程までのアナウンスより、よっぽど機械音じみていた。。。



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