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四季暦は死にたくない  作者: 韋駄天
一章
8/14

サンドイッチのサンドイッチ

……………………うぅ


「こよみん大丈夫!?」

「だっ大丈夫ですか?」

僕がまぶたを開けると、時雨しぐれ林檎りんこが心配そうに、こちらを覗き込んでいた。


「何があったの?すぐ気失っちゃって……」

僕がそう言うと、二人の表情がみるみる沈んでいく。


「おぉ!やっと気ぃついたんか。すまへんかったなぁ。おどかしたろぉ思てクラッカー用意しててんけど、まさか気絶してまうとは思わんかってん」

声の方に目をやると、一人の知らない生徒が立っていた。

ウェーブのかかった明るめの茶髪に、カラコンでも入っているのか、大きく見える目。うん。多分ギャルかな。化粧をしているのか、少し大人びて見える。大きいし………

「なんやー?起きて早々じろじろ見てぇ?あぁせやったな。すまんすまん。うちは桐島弥生きりしまやよい双星高校二年生で、この部活の部長やで。まぁうちしかおらへんのやけどな」

笑いながら彼女は説明した。


ある程度意識がはっきりしてきたところで、時雨と林檎を呼ぶ。

「あのさ。僕は一つの推論を立てたんだけど…」

この二人以外は僕の病気のことを知らないので…なるべく小さい声で話す。

「うん。さすがこよみんだね!多分それが大正解だよ!」


僕が扉を開けるとき、左右に林檎と時雨がいたのだ。

そう。勿論、僕はいくら不意打ちクラッカーといっても驚いて失神するなんて考えられない。


弥生さんの放ったクラッカーの音に、驚いた時雨と林檎が僕に飛びつき…晴れて僕が失神。

天使と美少女に強制サンドイッチされ、具材の僕はこのサンドイッチに感謝するべきだろうか?

否!

襲ってくる痛み。問答無用の失神。

これらと天秤にかければ、失神前に感じられるか感じられないかレベルの幸福なんて要らないだろう?


ん?なんのサンドイッチかって?


勿論チキンのサンドイッチである。


僕はチキン野郎でも何でも無く、ただの被害者なのだが……

といっても、病気のことは言えないため、時貞と弥生さんにはチキン野郎認定されてしまっているだろうが。。。


「それでやねんけどな。見学来てくれたのは嬉しいねんけど、別に今日活動せーへんで?」

少し申し訳なさそうな顔をする弥生さん。


いやいや。それは心よりお礼申し上げ奉りたい。


「それは仕方ないですね!じゃあ僕達四人、入部届だけ書いて帰らして貰いますね!」

先手必勝である。勢いこそ正義。僕はそそくさと部室を出ようと……… 


痛い!!


「まぁまぁ!待ちーな。折角はいってくれるんやさかい!色々お話でもしよーや。それで?あんたこの可愛い時雨ちゃんと付きあっとるらしいーな?」

強引に戻された。腕を引っ張られた。


僕の尊厳のために言っておくが、断じて力負けした訳ではない。いつものやつだ。全身激痛により……である。

僕の昼過ぎで帰宅作戦は失敗に終わりそうだ…

まぁ別にやることなどはないのだが。


「はい。一応。まぁ」彼女とはお互いの利益のために付き合っているだけであるため、歯切れは悪くなってしまう。


「なんやねん!もっとシャキッとしーや!あんたから告ったんやろ?それで?時雨ちゃんの何処が好きやってん?ええ?おねーさんに教えてーや。」詰め寄られる。近い近い近い。オラオラ系林檎の時くらい近い。



僕は助けを求めて他の三人を見る。


〈林檎:顔を真っ赤にして俯いている。既に屍のようだ〉

〈時雨:目をキラキラさせながらこちらを見ている。僕の答えを知りたがっているようだ〉

〈時貞:顔を真っ赤にしてこっちを睨みつけている。今にも襲ってきそうだ〉


駄目だ。僕のパーティーは役立たずばっかりじゃ無いか!!


「まぁ。なんと言いますか。全部ですかね……ハハハ」

笑ってごまかす僕。

「おぉ!よく言った!聞いた?時雨ちゃん。クラッカーで失神する奴とは思えへんなぁ」そう言って僕の背中をガツガツ叩いてくる弥生さん。手が背中に当たるたびに、全身に痛みが広がる。


時雨とはいうと、嬉しそうににやついてる。

いやいや助けてくれよ。彼氏の一大事だろ!


「ねぇーさん!!今度は俺に質問して下さいよー!」

強引に弥生さんから僕を引き離す時貞。

真意は置いておいて。さすが僕の友達だ。

にやついて動かない彼女より数倍有能だ。

先程までの、睨みつけていたような熱い視線もきっぱり水に流そうと思う。



それからはらうだうだと皆で他愛のない話が続き…

「そういえばやねんけどな、今週の土曜日にお笑いコンサート見に行くねんけど、部費で行けるさかいタダやけど来る?」

弥生さんが突如話す。


「弥生さん。もしかして…たまに出かけますって言うのは…」


「あたりまえやん!部活にしたら、タダでお笑いコンサート見れるんやで」僕の質問に笑いながら返す弥生さん。


「わっわたし。行けます!ばっバイトもお休みの日なっなので。」

「私もいけまーす!こよみんもいけるよね?」

林檎の言葉に続きながら、時雨が僕と腕を強引に組む。

痛い痛い痛い。

脅しのつもりなのだろうか?


彼氏様の一大事は見て見ぬふりを決め込んで、都合がよくなればこれである。



「うん。行けるんだけど……その~」

デジャヴだ。入学式再来だ。そう!当たっている。


「おー!お熱いやんけ!ん?なんや暦。照れとるんか?楽しそうやな。うちも助太刀するで~」

助太刀とは一体……

「いやいや。弥生さん。それは困りま。」




そう!おわかりの通り、気絶で入場してきて、気絶で大丈夫である。

ただ一瞬、ものすごい痛みと、それにも勝る幸せを感じた僕だった。

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