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四季暦は死にたくない  作者: 韋駄天
一章
7/14

四人寄れど武田の知恵

「いや!どんな風の吹き回しだよ!」

時貞ときさだが声を上げる。

時雨しぐれ林檎りんごは、考え込んでいるようだった。


「いやいや。見てみてよこれ。」

そういって僕は、部活動一覧表を指さす。

【お笑い部:基本平日水曜日だけ:たまに出かけます】

皆が確認したところで僕は追撃を加える。

「ほかの部活はどれも週2以上で基本週3だよ?しかも、確か時雨はお笑い好きだったよね?」


僕と時雨は幼馴染であり、僕の病気を昔から知る数少ない協力者であり、色々な経緯は合ったのにしろ。一応僕の彼女である。


『異性交遊シンドローム』

簡単にはに言えば、女子と一線を越えると死ぬ病気。しかもそれはゴールであり、それまでにも服越しの接触をすれば、全身に痛みが走り。服越しじゃなければ、痛みとともに全身に発疹がでる。唇を交えてしまえば、呼吸不全に陥り、晴れて病院コースだ。これは最近判明したことなのだが、服越しでも二人からの女子と接触すると、一瞬壮絶な痛みが走り、僕は気絶してしまうようだ。


当たり前のことだが、これを服越しじゃなくしてみたり、三人以上でも試してみるような勇気はない。

いくらめちゃめちゃかわいい天使のような子が、三人で僕を誘惑したとしても僕はなびかない自信がある。

だって二人で気絶するんだよ?もしもの事も射程圏内だろう。


そんなことが起こればその子たちは、天使から一変。僕専用の死神とかすのだから。

天使たちにそんな重い十字架を背負わすほど、僕は神を嫌ってはいない。


「いいじゃん!さすがこよみんだね!」

「はっはい!わぅわたしも。こっこの内気性格を直したいので」

女子二人の意外な反応に、時貞だけでなく僕もびっくりしていた。


いや。時雨は乗ってくれると思っていたのだが…まさか林檎まで即OKとは思っていなかった。

林檎は僕に好意を寄せてくれている女の子で、先ほどの話ではないが本当に天使という言葉がぴったりな愛らしい少女だ。

性格も内気……なのだが。二重人格張りにたまにもの凄くオラオラ系の性格に代わる。


といっても、出会って一週間で告白しようとしていたのだから。オラオラ系林檎でなくても。内気系林檎でも十分といっていいほど行動力はあると思うのだが。。。


「林檎ちゃんほんとーに大丈夫?無理なら皆で他に変えてもいいんだよ?」

時雨が助け舟を出す。いや。これは助け舟なのだろうか?少なくともこの船に林檎が乗った時点で、今度は僕が溺れることになるだろう。


しかし。。。


それはただの杞憂に終わった。

林檎の意思は固く、もしかすると時雨より乗り気だったからだ。


勿論こうなってしまえば、時貞は……

「いや実は俺も気になってたんだよねー!これで万事解決じゃん」

と乗ってくる。


まぁきっと彼もいきなり、学校でも超人気の女子二人と行動を共にしたのだ。テンパっていたのだろう……今日の行動は目を瞑ってやろうと考えながら、四人でお笑い部の部室へと足を運ぶ。


うちの高校は部活動が多いこともあり、部室専用棟がある。そこに部室がひとまとまりにされているのだ。



部室専用棟につくと、部室の外にもチラホラと見学生がいた。運動部はもちろんグラウンドや、体育館でしているが。

文科系の部活は基本部室だけでするものであり、迷ってるけどとりあえず来てみた勢っぽい。


「多分ここの一番奥だと思うぞ」一覧表を見ながら、時貞が呟く。


いくら時貞がいるとしても。時雨と林檎を連れて、ここを堂々と通り過ぎることは僕にはできなそうだ。

多分、通りきるまでに僕のガラスのハートでは、視線攻撃を食らいすぎて、ライフポイントが尽きるだろう……

何かいい手は……

僕が考えていると


「こよみん?知ってる?速きこと風のごとしだよ!強行突破以外ありえないよ!」

そういいながら準備運動を始める時雨。

それに釣られて、林檎も深呼吸を始めた…… 


「いやいや!待て待て待て!千思万考って言葉を知ってるか?そんな強引策より一旦考えるって方向にシフトチェンジしないか?」


「こよみんカッコ悪いよ?千思万考、審念熟慮したって結局は風の木阿弥だよ?」


「造語を作るな!なんだよ風の木阿弥って!それは一人で考えてたからだろ?こっちには四人もいるんだぞ?三人寄れば文殊の知恵っていうだろ?四人なら文殊越えだろ?」


「でっでも、せっ船頭多くして船山を登るといいますし…かっカッコいい暦さんが見てみたい……です」


あー言えばこー言われるとはこの事だろう。

ただ僕も学園のアイドル二人に囲まれ、無意識のうちにテンパっていたのかもしれない。


その証拠に。

天使と言っても過言ではない林檎の口から、ホストクラブで一気飲みをするときに聞こえて来そうな掛け声が発せられたと思ってしまったのだから。

あるわけない!きっと僕の聞き間違いか幻聴だろう。


「腹くくれたか?暦」

俺は何時でも行けるぞとばかりに、時貞が声をかけてくる。


「あぁ、なんとかね。よしみんないくぞ。3.2.1.GO!!」

僕の言葉と同時にいきなり現れた男女四人が、全力疾走で走っていく光景が始まる。


「ちょっとすいませーん」時貞が先頭に立ち、僕たちの走行の障害になりそうな生徒をどかしていく。


「はぁはぁ。いっいい運動になりましたね」やり切った顔の林檎に軽く反応しながら僕は、部活専用棟の一番奥にある、小さな『お笑い部』という表札を掲げる小さな部室の取っ手に戸をかける。


ガチャッ——————パンッ


ここで僕の意識は強制シャットダウンを食らったのだ。

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