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四季暦は死にたくない  作者: 韋駄天
一章
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敵地学校

とりあえず回れ右する……!!

身体中に激痛が走る。

時雨(しぐれ)が僕と腕を組んで、耳打ちをしてくる。


「そういえば、言い忘れてたんだけど。昨日あの後林檎(りんご)ちゃんと話して、私たちが付き合ったこと皆に伝えたから。勿論、告白してきたのは、こよみんっていう設定だよ」

いやいやいや。報告。連絡。相談。のうち『事後』報告。しかできてないのだが……


呆れて僕は、回しの視線を掻い潜って、自分の席に座る……

「暦ー!!一言相談してくれてもよかったじゃねーか!告白ってあれだよな?金曜日の放課後だろ?」時貞が話しかけてくる。

睦月時貞(むつきときさだ)。僕が高校に入って初めてできた友達であり、ノリもよく、人情に篤い。良友ってやつだ。ただ中学の時に問題を起こしたらしく、周りの受けはあまりよろしくない。まぁそんなことは全く気にしないのだが。


金曜日。僕が時雨に告白したとされている日。その日は時貞とお泊りでゲームを楽しむはずだった日だった。勿論。告白?が終わった後時雨とはすぐに別れ、一人でいたのだが。

時貞といれば、ついついそのことを話してしまいそうと思った僕は、彼との約束を断ったのだ。

こんなすぐ話すなら、遊べばよかった……彼からすればそれこそ、僕は報告。連絡。相談。どの一つもしてないのだから。

といっても病気のことがあるだけに。『事後』報告もする気にはなれないのだが。


悪かったよ。またゆっくり話すよ。と言いながら机に突っ伏す。


疲れた…自慢じゃないが家から学校までの間に僕は二度も気絶しているのだ。しかも、当事者である僕でも、この病気を知ってから、今まで知らなかった事実。二人の女子から同時に接触されると気を失うということ。。。

もしも。もしもこのことが、僕に悪意を持つものに伝われば。僕をこの世から消すなんてゲームのチュートリアルより簡単に終わってしまうだろう。しかも、服越し触れば、発疹などもでないため。ただただ僕が気絶するという事実しかのこらない。少し頭を使えば、完全犯罪もセットでついてくるというものだ。

自分で言うのもあれだが、お得すぎる。


安心。安全。誰でもできる完全犯罪。なんてあってはならないことだろう。

まあ僕。又は僕と同じ病気を持つ方にしか当てはまらないのだが。この秘密だけはしっかりと守らないと。

勿論、高校一週間でもう、林檎にばれたというのは今は考えないことにしている。無意識に……そう無意識にね………


「おい。暦ー?大丈夫か?先生たちは気づいてなかったけど、さすがに寝すぎだぞ?月曜からお疲れだな」

………トキサダ…ノコエガ……キコエル



しまった。寝てしまったようだ。慌てて時計を見るともう、昼休みを告げていた。


「ごめんごめん。まだ学校始まったばかりで慣れなくて…」苦笑しながら、時貞と購買へと繰り出していく。


いつものように時貞と他愛もない話をしていると…すれ違う人。すれ違う人に顔を見られているような……


「まぁ無理もないよな。いくら幼馴染だっていっても、学校でも相当話題になってた美少女。皐月時雨さつきしぐれと早々に付き合っちまうんだもんなぁ。まぁそのうち止むだろ。無視しとけよ」笑いながら話す時貞を他所に、僕はどうしてもその視線が気になってしまう。


1時限目から4時限の終わりまで寝ていたのだ。いやでも頭が覚えてしまっている。特に男子からの視線が痛い。突き刺さってる。

生徒と。特に男子生徒と。もっと言えば先輩男子生徒と。すれ違う度に精神的ダメージを喰らいながら。教室と購買を往復した。


時貞から聞いた話だが。やはり人の噂話は適当なもので、尾ひれがついたり、背びれが取れたり。

時貞にも中学時代の知り合いの、先輩からメールが来たらしいのだが、先輩方からすれば、僕と時雨が幼馴染としらない人の方が多く、ぽっと出の同級生が先輩を差し置いて付き合ったと。げきおこらしい。


そうこうして。ようやく教室に戻ると。いや。正確に言うと、教室の少し外からなのだが。

男子だけの行列ができていた。そしてその全員が僕たちが。僕を。睨んでいる。

うちの学校は学年のによってネクタイの色が1年は赤。2年は青。3年は紫。と違うため、その全員が一年生であることはすぐに分かった。


ただ別に入り口が塞がっているわけではなかったので僕たちは、その間から教室へと戻る……


途端。女子の数名が僕に駆け寄ってくる。話したことはほとんどないはずだが…

「暦君!彼氏なんでしょ?時雨ちゃん困ってるよ?」

おおっと!めんどくさそうだ。<暦は逃げ出した。しかし女子の目力が強く逃げられない>


僕が行列の先へと歩を進めていくと、その先頭の先にいる時雨が僕に気づき、僕へ抱きついてくる。


「みんなごめんね!知ってる子も多いと思うけど、私たち付き合ってるから!ごめんね」


さっきの抱きついてくるとは比喩でもなんでもなく実際僕は、服越しではあるが時雨に触れられ、悶絶しそうな痛みを。それ相応の顔を。我慢するのに必死だった。

さすがにこの空気で、時雨を突き放しなんてすれば…僕はこの学校で居場所をなくすだろう。

ただでさえ今は多くの男子が敵なのだから……


僕の登場により、行列は烏合の衆となり下がり、その場に崩れるもの。自分の教室に返っていくもの。様々な者に別れた。


「それで?なにがあったの?」

「いやね!これからある部活動見学に一緒にいこうって誘いだよー。みんな断ってるのにどんどん増えてさ!大変だったんだよー」本当に大変だったようで、僕の問いに答える時雨の顔には疲労が見えた。


どうやら、付き合ったという話が広がり、現実を受け入れられない者が最後のチャンスとばかりにあつまったらしい。

困ったものだ…


「もしかして。付き合ってる時雨でそれなら…」林檎が危ない。

僕は席を立つ。。。

「痛い痛い!!はい座りますから。」時雨に腕をつかまれた。


「ここで、こよみんがいったら余計にみんな怒っちゃうよ?林檎ちゃんと私が仲良くてまだ付き合って間もなくて気まずいからっていう設定で今日も一緒に部活動見学回るんだから!若干こよみんが変な目で見られようと仕方ないねっていうことで落ちついたんだから」

焦る僕に、時雨が諭すように言う。


それもそうか。ここで僕が行けば火に油を注ぐようなものだしな。おとなしく…

「マテマテマテ。やっぱり僕の立場は考える気0じゃないか?それ?」

「テヘッ。口が滑ったようだ。まぁもうここまで来ちゃったら引き返せないしね!部活は入らないといけないんだから」

彼女は反省する気も0らしい。


そうして。部活動見学が幕を開けるのだった。


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