死にゲー登校
そして次の日。月曜日を迎えたわけだが…
「あれ?どうして僕の家の前に時雨と林檎が居るのかなー?あっあれかな!?学校と間違えちゃったかなぁ!ちょっと待ってね!いま地図書いてきてあげるからねー」〈暦は逃げ出した。しかし時雨と林檎に両腕を掴まれた。暦に甚大なダメージ〉
「あっ!さすがに両方一度にっていうのは刺激が強かったかな-?」
「あっあの。すっすみません!。だっ大丈夫ですか?暦さん」
〈反応がない。既に屍のようだ〉
「それで?何でまた二人揃って僕の家に?」
僕達は学校を目指しながら並んで歩いていた。今まで試したことは無かったのだが、服越しでも二人から触れられると軽く意識が跳ぶらしい。
言うまでもないが、林檎は勿論のこと、一応彼女である時雨とも手など繋いでなんていない。
確かに。もしこの作戦が成功した暁には、僕は晴れて『両手に花』の体現者となり。世界の男子から尊敬と嫉妬の念を集めることだろう。ただそのハーレム教の教祖が体中に発疹が出しているのだから目も当てられない。自主規制というやつだ。
「いやね考えてみてよこよみん?こよみんのために告白しない林檎ちゃんが、学校で違うクラスのこよみんと一緒に居たら問題じゃない?」
「そっそのとおり。だっだとお思います。」
時雨の問いに林檎が答える。
タシカニ……
「いやいやいや!バレたらこの三人登校も十分問題でしょ!!」
気付かれたと言わんばかりに二人が顔を見合う。
「「えいっ」」…………!!!
「大丈夫-?」
「だっ。大丈夫ですか?」
朧気な視界の先に、二人の美少女の顔が………僕は気を失って倒れていたようだ……!!
頭のなかでアラートが鳴りまくる。
僕は起き上がり、二人と距離をとる。
キョトンとした顔をする二人。
「待て待て!あれかな?これは選択肢間違えるたびに死んじゃう鬼畜ゲーかな?僕には選択肢を選ぶ権利が無いのかな!?」
「私賢いこよみんが大好きだよー!」
僕の問いに笑いながら答える時雨……
前言撤回。発言訂正。僕はハーレム教の教祖などでは無かった。。。誤りを認めよう。思いに違いに謝罪しよう。
ハーレム教。改め。尻しかれまくり教の教祖。なら僕ほど適任者はいないだろう。
そんなこんなで、僕達一行は学校の近くまで着いたのだった。
「で。では!これで私はしつ。失礼しますね。でっではまた。あとでー」彼女の発言に僕は疑問を覚える。
「ん?あとでって言うのはなんだい?さすがに帰り道も一緒だと一週間もしないうちに僕は死んじゃうぞ?」
突っ込まれた。盛大に背中を叩きながら突っ込まれた。
「痛い!痛いから!!」僕は悲鳴を上げる。
「ごめんごめん。いやね。こよみんは置き勉派なんだなって。予定を見てなさ過ぎでしょ。今日の授業は午前までで午後からは全一年生強制参加の部活動見学だよ」
部活動見学………
「そう…か。なら申し訳ないが林檎に伝えておいてくれ。僕は帰宅部の見学に行くから。君とは……」
「あるよ?帰宅部」
………………「はい!?」
人は想像もつかない事があると、想像もつかないような声が出るらしい。僕がその証人だ。
「ほら!うちの学校の校訓は、『風紀ある自由』でしょ?だから、相当なことが無い限り、部活動も自由に作れるんだよ?」
「いやいや。帰れよ。帰宅部が家に帰らず何が帰宅部だ………」
「それは駄目だよこよみん!うちの学校は部活動強制参加だから!部活動入ってないと退学ものだよ?」時雨が僕の心の叫びを一刀両断する。
『風紀ある自由』………『自由』とはいったい?
簡単に言えば、好きなことやらしてやるから、部活動には入りなさい。そういった考えらしい。
……困った。何も考えてなかった。好きなこと……これと言ってないんだよなぁ。
ただ家に帰ってぐうたら………これ以上の発言は僕の尊厳が失われる可能性を考慮して控えさせて貰おう。
「いやいや!こよみんは運動神経も神がかってるんだから!適当に運動部入れば良いんだよ!それで私と林檎ちゃんはその部活のマネージャーでー……甲子園に連れてってやる!とか!」
時雨は目をキラキラさせながら話す。
確かに僕は、神がかっては無いにしろ。運動神経は良い方だろう。
春休みにも。それこそ。甲子園に連れてってやる系漫画も顔負けに。道路の猫を助けたし。
少し擦り傷を負ったが……それより飼い猫だったようで、飼い主の女の人に御礼を言われながら手を握られた事の方がつらかったので、そそくさと逃げ出したことを覚えている。
「運動部なんて論外だぞ!僕はそんなもの絶対にやらない!確かに僕はキラキラした青春を送りたい願望があるが、運動部のはキラッキラだ。
いや!汗ダクッダクだ!何が嬉しくてそんなこと…」
僕の発言に少し肩を落とす時雨。
「こよみんのカッコイイ姿見放題だったのになぁ。こよみんもモテモテ甘々生活をみすみす逃すことになるんだよ?」
待て待て待て。
「時雨はそういうモテモテ生活から僕を守るために付き合うっていう提案をしてくれたんだろ?それを自分で推奨したら本末転倒だろ!」
「テへッ!口が滑ったようだ!」
そんな会話を続けながら僕達はすっかり桜が散りきった校門を抜けて、教室へと入っていくのだった。
そして僕は直ぐに家に帰りたくなるのだった。
痛い。視線が痛い。
まさか…これが尻にしかれまくり教の教祖に向ける眼差しなのだろうか?
クラスの男子からの熱い妬み光線。
「やっぱりあれだな。自宅警備部作った方が良さそうだな…」
そんな叶わなそうな願いを呟きながら、僕は敵地へ。否、自分の教室へ入っていった。