壁ドン系少女
「あっあのー。そっそれでお話って言うのは………」顔を赤らめながら話す少女。淡い赤髪より頬を赤く染め、俯いて話す如月林檎は評判通りの天使のような可愛らしい少女だった。
まぁ、歳は僕や時雨と同じなので本人からすれば失礼に値するかも知れないのだが…
今日僕と時雨がファミレスで話していたのは、週明けに彼女。林檎が僕に告白するらしく、そのことをどうやって回避するか。波を立てず断るか。そのための作戦会議であり、その作戦会議の立ち上げ段階で、本人登場というサブライズにより破綻した。
今はバイト終わりの彼女と僕と時雨でそのファミレス裏で話しているところだ。
いや。実を言えば時間はたっぷりと合った。あれから数時間……
彼女のバイトが終わるまでの時間、僕と時雨は話し合う時間は十分と残されていたのだが……
二人とも勿論そのような、修羅場地味た現場に出くわしたことなど無いため、お互い黙ってただひたすらドリンクバーを飲み続けるという愚行で終わってしまった。。。
僕が言葉を探し沈黙に沈んでいると……林檎の顔はどんどんと弱々しく。泣きそうな顔に。
僕は救いを求めて時雨の方を向くと………駄目だ。〈時雨は動かない。ただの屍のようだ〉。。。
僕は仕方なく。林檎に洗い浚い話した。
僕が女子と触れ会うと色々な症状がでること。時雨から林檎は僕に好意を寄せていて告白しようとしていることをしったということ。時雨とは僕の病気を隠すために付き合ったこと。
言うまでもないが、一線越えたら死ぬなんてことは言っていない。まぁ言わずもがな伝わるはずだ。その証拠にどんどん林檎の顔が真っ赤に……あれ?……雰囲気変わってない?
「へぇー?それでお前らはどーしたらいいのかとここで相談してたってことか?」さっきまでのうるうる瞳が嘘のようにギラッギラしている。。。
「あっあのー?さっきと雰囲気ち。ちがいますね」
僕は微笑を含みながら話をそらしてみる。
ドンッ!
壁ドンされた。女子に壁ドンされた。ドンッって。壁にドンッって。いや!全然キュンキュンするどころか恐怖しか感じないのだが!
「当たり前だろ!こっちが素なんだからなぁ一々説明させんなよめんどくせぇ。それで?お前らはあたしにどーしろと?」
林檎?ちゃんの顔がどんどん僕に近づいてくる。
〈暦は逃げ出した。しかし腕が邪魔で逃げることが出来ない〉
「はい!ちゃんと説明するんでちょっと距離開けて貰って良いですかね?」僕は怯えながら声を出す。
確かに豹変した林檎ちゃんは怖かったがそれ以上に。彼女の顔が。唇が今にも当たりそうだったのだ。もうその吐息は僕の顔に当たっているし。。。
もし当たりなんてすれば………死ぬとまでは行かないが。病院送りにされることは間違いないだろう。
「あぁ?お前はこんな可愛い女の子に迫って貰えて、ありがとうございますの一言もいえねーのか!?」そーいって彼女は僕の顔を両手で挟む………
「あっ!林檎ちゃん!それは不味いよ!」咄嗟に時雨が声を上げるが………
時既に遅し。
全身に激痛がほとばしり、謎の発疹が体の至る所に姿を現す。
さすがに林檎ちゃんも驚いたようで、慌ててその手を離す。
手が離れると痛みは直ぐに和らいだが、発疹は直ぐには直らない。
「あっあの。ご!ごめんなさい!わっ私興奮しちゃうと人が変わっちゃうってよく言われるんです。さっさっきも…暦さんにその病気のこと教えて貰ったのが。なっなんか嬉しくて…ほっ本当にごめんなさい……」
そこには最初に出会った。今にも泣きそうな少女がいた。
「あっあるよね。てんぱっちゃう的なやつだよね。全然大丈夫だよ」僕は何とか声をひねり出す。いや。まさしく別人だったけどね!なんて言葉を言うほど僕は馬鹿ではない。
「あっありがとうございます!あっあと…さっきお話を聞いてて思ったのですが…まっまだ私達は出会って間もないので…お友達からでどうでしょうか?わっ私が告白しなければ、話もこじれないか…」
「それだーーー!!!」
待ってましたとばかりに時雨が横から割ってくる。
もっと早くに割り込んできてほしかった僕は時雨に冷たい視線を浴びせながら考える。
なるほど。彼女の言うとおりだろう。その手が一番波風を立てず話を終わらせられるだろう。いや。終わらせるも何も。林檎が僕に告白をしなければ、その話が始まらないのだから。
「あっあのー。ということは…お二人は、お互い好きとかでは無いんですよね…?」そろそろ熱でもあるんじゃないかと心配になるほど、林檎の顔は真っ赤になっていた。
「もちろんだよー。同盟みたいなものだから。ね?こよみん」
生き返った時雨が元気一杯に答える。
「じゃっじゃあ!わっ私にもチャンス有りますね!がっ。がんばります。あっ。私なんて事…でっではしつれしいます」
〈林檎は逃げ出した。上手く逃げられたようだ。〉
「まぁ!これで一件落着だね!」時雨が近寄ってくる。
「そうだな。一人何の役にも立ってない奴が居たのは僕の心の中だけの秘密にしておくよ」
「えぇー?私が今日の作戦会議を企画したんだよ-?結局良い方向に転んだんだから、これは私のおかげでしょ-?」
そう言ってくる時雨に満面の失笑をかましながら。林檎の告白騒動は幕を閉じたのだった。