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四季暦は死にたくない  作者: 韋駄天
一章
2/14

春の討論会

トゥルトゥルトゥル


その日の夜時雨から電話が入る。


「もしもし?」


時雨とは今日から付き合うことにはなっているのだが……今までは病気のこともあり、周りと出来るだけ関わらないようにしていた僕だが……



さすがに高校生。花の高校生活を時貞と二人ぼっちで送るのはさすがに悲しすぎるので、どーしたものかと考えていた矢先、救いの女神?が下りてきたとでも言おうか……



「もしもしこよみん?いきなりで悪いんだけど…相談がありましてぇ……」時雨が申し訳なさそうに話す。


それは、僕達が付き合うきっかけになった。ある意味キューピッドである……来週僕に告白する予定の女の子。如月林檎(きさらぎりんご)についてだった。彼女とは違うクラスなのだが、他クラスの僕にまでもその評判が聞こえるほど可愛いらしい。背丈は小さく、誰もが守りたくなるような。天使と言う言葉がぴったりと当てはまる少女らしいのだが…



何でも林檎は僕のことについて時雨に相談しているらしい。



「いや。そのために僕達は付き合ったんだろう?

しかも時雨はその林檎ちゃんの連絡先も知ってる。それなら悩む必要ないんじゃないか?告られちゃいました-!って言えば良い」


僕は彼女の心配を切り捨てる………


「いやいやいやこよみん!それは自分勝手だよ。自己中心的だよ?それなら、こよみんは無傷ですむかも知れないけど!私への被害は甚大だよ?相談を受けちゃってるだけに!簡単には問屋が卸さないよ!彼女様の一大事に見て見ぬふりをするのは男が廃るよ?」時雨は必死に説得を試みる。



「でも…僕にどうしろと言うんだよ。まず第一僕は、林檎ちゃんについて殆ど知らないだろう?相談受けたなら知ってるんじゃないか?彼女が何で僕に好意を持っているか」


「んー…知ってたらこんな苦労しなかったかもなのにねぇ…」


「なるほどね。知らないんだな、まぁ期待してなかったけどね」


「酷いよこよみん!それは曲がりなりにも彼女様にかける言葉じゃないよ!」

僕のストレートな攻撃にさっきまでの申し訳なさそう声は何処へ。一転、不満満載と言うように声の調子が上がる。


「でもそうなったら詰みだよなぁ。まさか顔がタイプなんて天使様から言われても困るしなぁ。」


「えぇ!こよみん!彼女様へのフォローはなしで、恋敵の林檎ちゃんには様付けなんて!こんな暴挙、全国の皐月時雨が許さないよ!暴動だよ!?」


「それはまずいな。急いで全国の四季暦に避難勧告を出さないと。と言うか、別に時雨と林檎ちゃんは恋敵ではないだろ?悪いが、いくら理由が分からないとはいえ、自分に好意を持ってくれている女の子を大事にしたい、って気持ちくらいは僕にも備わってるんだよ」


「それでも一応でも私はこよみんの彼女様なんだから!丁重に扱ってくれないと血の雨が降るよ!こよみんの!!」


確かに、もし本当に時雨が僕に何らかの肉体的ダメージを与えたいなら、僕に触れるだけで目的が達成できてしまう。

ただ僕の大事な彼女様は、自分の立場を確立さすためには彼氏様を脅すことに何の躊躇いもないらしい…


僕がそんなことを考えていると、不意にあっという彼女の明るい声が聞こえる。


「バラしちゃうんだよ!!こよみんの秘密を!」どや顔しているのが電話越しからでも分かるほどに彼女の声が明るくなる。



「いやいや。それだと元も子もないだろ!僕の秘密を守るために時雨と付き合うことになったのに、それをバラしちゃったら意味がないだろう!?」僕は突拍子もない意見に正論をぶつける。



「まず第一にだよ?協力者は多いに越したことはないじゃない!しかも林檎ちゃんはこよみんのことが好きなんだよ?ハーレムだよ!?こよみんフィーバーだよ!?こよみん時代の幕開けだよ!」


「そうか……確かに!協力者が増えると思うとそれもアリだな!」


僕の尊厳のために言っておくが、ハーレムという言葉に釣られたなんてことは万の1つも…………ない。



「……いや。そうなると今度は僕が二股野郎っていう汚名を浴びないか?」


「えっ……?それは………ねぇ?」危ない。罠にはめられる所だった。


この後僕達のお互いを犠牲にするという水掛け論が続いたのは言うまでもなく……



電話では埒があかないと、日曜日学校の近くにあるファミレスで、もう一度話すことになった。




「さぁこよみん!彼女様のために身を切る覚悟は出来たかい?」


席に着くやいなや詰め寄ってくる時雨は押しのけ、メニュー表を手に取る。


いや別に空腹で倒れそうとかではなくて……


もう店員さんが注文を聞きに来ていたのだ。

仕事が早すぎるにも程があるというものだ。

日曜の昼間、客で賑わっているファミレスで席について、ものの数秒で来るなんて…



「ご注文はおきまりですか?」泣きそうな声が耳に響き、視線をメニュー表から声の方に移す。高校生のバイトだろうか。身長は小さく、淡い赤い髪が肩上でカールしているのが何とも目を引く。まるで……


「林檎ちゃん!!?何でここに居るの!!?」やっぱり?そうだよね。そうだと思った。。。


慌てふためく時雨をよそに僕は声をかける。


「林檎ちゃんだよね?君に話があるんだけど……ここのバイトが終わるまで待ってるから大丈夫かな?」


ゆっくり。優しく。なるべく優しく。今にも泣きそうな彼女がこのまま崩れてしまわないように。



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