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四季暦は死にたくない  作者: 韋駄天
一章
10/14

宣戦布告in敵地

「僕と林檎りんごは、出来上がったプリクラを半分にして、ゲームセンターを後にした。


       

時が経つのは、思うより早いようで、外に出るともう日が傾いていた。

僕は林檎を家に送り届けるため、並んで歩く。


「あっありがとう。もっもうここで大丈夫だよ」

林檎はふと立ち止まってそう言った。

そこは閑静な住宅街だった。学校から言えば、僕の家より少し離れた辺りになるだろう。


勿論、ゲームセンターなど近くにはなさそうだ。

隠れ家風カフェなら有りそうだが。。。


僕は林檎に別れを告げ、帰路についたのだった。


ピローン。

家に帰り、夕食を食べ、風呂から上がったときにメールが届いた音に気付いた。

[今ってあいてますか?]

林檎からだった。


大丈夫だよと僕が返す。


ピローン

[あの。今日の昼間は楽しかったです!!あっでも皆にはプリクラのことは内緒にしとてくださいね]

さすがメールである。流ちょうだ。文明の素晴らしさに驚きながら返信を送る。

[僕も楽しかったよ!そうだね。特に最後の奴は絶対バレないようにしないとね(笑)]

因みにだが、僕の中でこの(笑)は変換すると(必死)になるのである。


ピローン

[家の神棚に飾っておきますね!今度の林間学校もゆっくりできる時間あると良いなぁ。じゃあ寝ますね!おやすみなさい]

林間学校とは一年生達の親睦を深めるための行事であり、五月の頭に二泊三日で開催される。


僕は、おやすみと送って携帯を枕元に置く。

しかし、神棚というのはいささか問題がありそうだが。まぁ何処か適当に置かれるよりは決してバレにくいと思うが。それ以前の問題だからなぁ。


考えても仕方ないと、僕は目を閉じるのだった。


トゥルトゥルトゥル

起こされた。いや寝ては無いのだが。目を閉じて一分も立っていなかったし。


「もしもし」一応寝起き?である。少しぶっきらぼうだったかもしれない。

「あっ!起こしちゃった?ごめんね」

高い声が聞こえる。相手は幼なじみの時雨しぐれである。

ただいつもより、元気は無さそうであった。

「まだ寝ては無かったよ。それで?なんかあったの?」

理由はどうであれ、彼女である。無下になんて出来ない。


「いや。そう言えば、明日林間学校の事色々決めるでしょー?ちょっと私、熱出ちゃったみたいでさ。明日行けないかもだからさ。班決め代わりにやっといてくれない?女の子の方には私から言っておくから……」


何でも、班同士は四六時中一緒に行動することになるため、休んでいる間に、変な男子と組みたくは無いと言うことらしい。

まぁ人気だし、あり得なくは無い話だろう。


「それは良いけど、大丈夫なのか?」

「えっ!こよみん心配してくれるのぉー?うれしいなぁー!嬉しすぎて体温あがっちゃゴホッゴホッ」

言わんこっちゃ無い。まぁ馬鹿は風邪引かないらしいし、やっぱり天然なだけで馬鹿では無いらしい。多分阿呆だ。


これ以上は体に障るといけないので、挨拶もほどほどに僕は電話を切る。

まだ話したいことがありそうだったが…まぁ明日行けば良い。

彼女の家は直ぐそこである。徒歩で20秒と言ったところだろうか?


春から、憧れだった一人暮らしの幕開けだと思っていたら

「暦くんの家の近くなら、時雨も一人暮らししても良いよ」

僕の主治医。時雨の父の一言により、時雨も近くに住むことになったのだ。

勿論、一人暮らしは変わらないのだが……



そんなわけで僕は今度こそ携帯を枕元に封印する。


今日は色々あったからな、お疲れモードなのだ。

一番はチュープリだろう。一瞬ということもあり、運良く顔には出なかったが、風呂の時に見てみると、体のあちこちに発疹が出ていた。

しかし、僕もこのプリクラを隠さねばならない…



神棚にでも隠すか。

そんなことを考えながら、僕は夢の世界へと入っていったのだた。


「おっおはようございます!」

おおっと。やっぱりこれは変わらないのね。


朝家を出ようとすると、林檎りんごが待ち構えていた。

昨日の突然サプライズは、習慣へと成り上がったらしい。


ただ時雨しぐれの顔は、無かった。

林檎もそのことは知っているらしく、

「今日の放課後、時雨のとこにおみ……」

「いっ行きます!!」

早い。テンパっているのだろうか。食いつきが早すぎるだろ。



「こっ暦さん!そっそう言えば知ってますか?『プリクラ』の語源って『プリント倶楽部』っていう一番最初に作られた商品の名前の略なんですよ?」

学校までの道のりで、不意に林檎が少しどや顔を挟みながら話す。

いや。天使のどや顔可愛すぎるんだが……眼福を通り越して最早、毒レベルである。


「あっそうなの?じゃあ最近の。昨日僕たちが使ったプリクラも本当の『プリクラ』ではないってことなのか…」  


最後まで言って僕は自分の犯した罪に気付く。


「あっ……はっ…はい……そっそうなります」


横には、今にもプスプスというような擬音が聞こえてきそうなほど顔を赤くしている少女がいた。

まるでリンゴである。

林檎isリンゴである。


しかし、分かって貰いたい!僕は、無垢な少女の恥ずかしい過去を嬉々として掘り返したわけではない! 

どちらかと言えば彼女が自ら墓穴を掘った方だろう?

情状酌量の余地があるはずだ!

寛大な心で許して頂きたい!


そんな風に僕が見えない裁判長に直談判していると、学校近くの公園についた。


「でっでは!ここで!ごっご機嫌ようー!」

まだ真っ赤な顔をしたままの林檎はそういい残し、一目散に学校の方へ走っていった。


僕は、その姿に若干の微笑ましい感情を抱きながら一人で校舎に入っていく。

そう言えばなのだが、時貞曰く、昨日時雨と林檎がお笑い部に入ったと知り、多くの生徒(主に男子だが)が入部届けを携えて、部室を訪れ、全員泣きながら戻ってきたらしい。

弥生やよいさん手加減無さそうだしなぁ。



今日も一日は早く過ぎ、ロングホームルームの時間となった。

一つ言っておきたいが、今日は一睡もしていない。一瞬も。

昨日はたまたま。猿を木から落ちるという奴だ。


LHRの議題は勿論、林間学校である。

「じゃあとりあえず、班決めからやっちゃうか。うちのクラスは女子の方が一人多いから、基本男子2女子2で、一班だけ男子2女子3なぁ。ちゃんと休んでる皐月も入れるんだぞー」

念のために、皐月とは時雨の名字である。


僕は直ぐに時貞と合流し、昨日時雨から聞いた女子の元へ行く。

「「一応自己紹介しといた方が良いかな?こっちが宮部里奈でこっちが宮部里沙」」

いや。判らない。瓜二つである。双子であると言うこと以外全くもって判らない。自己紹介もシンクロしすぎていて、自己紹介の意味をなしていない。


戸惑いながらもとりあえず僕と時貞も自己紹介を済ませ、黒板に時雨を入れた5名の名前を書き……!!驚きすぎて言葉が出なかった。


黒板にはどの班にも。共通して。全く等しく。同じ名前が書かれていたのである。

【皐月時雨】【皐月時雨】【皐月時雨】…………【皐月時雨】


勿論。このクラスに皐月時雨が何人もいるなんて落ちではない。


僕と時雨が付き合っていることは、みんな承知のはずなのだが。

いや、承知してないのか。あきらめが悪すぎるだろ。。。

まぁ、彼女は性格上、女子からも人気があり。それと男子からの猛烈な希望により。こんな欲望が交差する結果となったのだろう。


と言ってもこれは少し不味い。今のところ、全班が男子2女子2の状況であり、その全てが自分達の班に時雨を迎え入れ、男子2女子3の一席を狙っていたのだ。


うん。仕方ないよね。里奈里沙コンビも普通に可愛いし!僕は新しい交友関係を築くとしようかな!



なんてことを考えても誰からも突っ込まれないのだ!!いまこの学級に僕の病気を知る者は居ないのである!故に僕は無敵である………!!いつもの激痛が体を襲う。

里奈?里沙?(申し訳ないが本当に分からない)が萌え袖越しに僕の手を握っくる。

「暦君!このままじゃ時雨が狼さんに食べられちゃうよ!助けて上げて?」


前言撤回だ。無知とは罪なり。僕は無敵では無かった。

しかし、改めて近くで見ると本当に可愛い。

少し童顔で(勿論。林檎に比べれば大人びているが)セミロングの金髪がとても似合っていた。

僕の偏見だらけの異見を言わせて頂けるなら…

ロシアにいそう!


「まぁじゃあじゃんけんで決めるか」

唐突に担任がこの時雨祭の解決法を提案する。


萌え袖に萌えている暇なんてなかった。

僕がこのまま何もせずに。じゃんけんにも負けてしまえば。この可愛い双子コンビからも。もしかすれば、時雨からも見放されクラス一丸となって、暦大炎上祭りである。


「まっ任して」多分かなり顔を引きつらせていたのだろう。双子の顔が少し不安色に染まるが、手離して貰えた。

ただ幸運だったのは、思考回路までは別だったことだ。

あの行動まで、シンクロしていたら僕は今頃保健室だろう。

そして僕は時雨から、無能彼氏のレッテルを貼られることになっていただろう。


それだけは避けなければ!曲がりなりにも彼女である。僕のハッピー薔薇色いちゃいちゃ高校生活においてのキーパーソンである。


僕は意を決して立ち上がり、クラス全体に。敵に宣戦布告する。

大きな声で。高らかと。


「僕は、昨日時雨から連絡を貰い、僕と一緒の班にして欲しいと言われたので、彼女の名前を書きました。皆さんにも連絡がいっていたのでしょうか?」


「おぉー!かっくいいー!私も暦くんにお願いしとけばよかったなぁー」

聞こえるか聞こえないかほどの声で、僕でなく時貞に助けを求めていた双子のもう一人の声が聞こえる。


多分。きっと。幸い。時貞の耳には届いていないだろう。そう願いながら、クラス中から向けられる視線に耐える僕だった。



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