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69話最後のナビ

最終話 最後のナビ



 「なんだ? まだ何か手があるのか? 面白い見せてくれ!」



 リュウマは瞬きをした一瞬で距離を詰め拳を振りかざして来る。


 「避けて!」



 ナービの叫び声に反応してギリギリの所で拳を避ける。 拳を避けた瞬間に隙が出来たリュウマに拳を浴びせ続けるが全く効いている様子は無く。 振り下されたリュウマの拳が地面にぶつかり、周囲の地面は粉々に砕け、大きなクレーターが出来て砂煙で辺りは見えなくなった。



 「今のうちだ。 ナービ、ミーユは? 連絡取れた?」


 「竜が戦っている間に何とか連絡先取ったよ。 今は天界に居るって言ってる」


 「じゃあ俺と話させて」


 「わかったけど、連絡を取ってる間はミーユに魔力の波長を合わせないと行けないから多分竜の精神は寝る事になるよ」


 「じゃあこの体はナービに任せるよ、すぐに済むから少しリュウマからの攻撃を耐えてくれ」


 「倒しちゃって良いんでしょ?」


 「もちろん、出来るならね」



 体の操作権をナービに譲り、俺の意識は段々とまどろんで行って気づいた時にはこの世界に始めてきた時のあの手術台の上に寝ていた。



 「何しにきたの?」


 「ミーユか、力を貸して欲しい」



 ミーユは暗闇から声を出しているようでこっちから姿は見えない。 



 「怒ってないの?」


 「怒ってないよ、ラヴァナと君はマリーの為に行動してたみたいだし、今はリュウマを倒す為に力を貸して欲しい」


 「許してくれてありがとう、戦いが終わったらちゃんと元の世界に帰すから」


 「そう!それだよそれ!」


 「え? 何が?」



 戸惑うミーユに俺はリュウマを倒す作戦を説明した。



 「なるほど確かに良い作戦ですが魔力が足りませんね」


 「そうだ、肝心な事を忘れてたよどうしよう」



 作戦の欠陥を指摘され頭を抱える。



 「いや、ちょうど良いのが居ました。 あっちの世界に戻ったらラヴァナが近くの木に隠れて居ると思うので探してください。 それで解決するはずです」


 「わかった、恩に着るよ」



 空間が徐々に崩れ始めてきた。



 「時間みたいですね、貴方とはもっと話がしてみたかったです。 ナービを最後までよろしくお願いします」



 ナービを最後までよろしく、この言葉が俺の心を沈ませた。 



◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「ナービ状況は?」



 ミーユとの通信を終えて戻ってきた俺は体はナービに預けていた為、ベルトの中から外の状況を伺う。 外は木々は俺地面は割れて大災害が起こったんではないかというぐらいの荒れようだ。



 「竜やっと戻ったのね、作戦は出来そう? 正直もう限界だよ」



 体の権利が戻ってきて意識が体全体に広がった。 その瞬間肌が切り裂かれるような強い魔力を感じた。



 「作戦は完成したけどあれがリュウマ?」


 「うん、私は指輪の力で戦っているうちに人型のリュウマの攻撃は見切れるようになってある程度戦えるようになってきたの。 そしたらリュウマは戦い方の違いから私達の中身が入れ替わっている事に気づいて激怒してあの姿になったってわけ、もう完全な龍の姿ね、体も塔と同じぐらいでかいわこうやって木の陰に隠れるので精一杯な状態だよ」



 リュウマは人型を捨てて完全な龍へと姿を変えていた。 余りの大きさに息を飲んだ。 リュウマの周囲は魔力が高すぎるからなのか周囲の大気は歪んでいる。



 「竜! 出てこないなら終わりにするぞ大まかな位置は分かるから全て吹き飛ばす」



 リュウマの口に光が集まっていき、周りがだんだんと暗くなってゆく。



 「あれは光そのものを吸収している」



 ブラックホールって所か、光を吸収し一箇所に集めて打つ光線か当たったらひとたまりもなそうだ。 だけどナービの戦闘の影響でだいぶ鎧にガタが来ている。 あのサイズから放たれる光線を避けるのはもう無理だろう。 


 「ナービ、お前だけでも竜化してここから逃げられないか?」


 「いやよ、もうどこにも行かないわ、最後まであなたのナビをするわ」


 「ナービがそう言うなら良いけど、良い作戦だと思ったんだけどな、ラヴァナも見つからないしもう諦めるしかないか」


 「そうか、もう悪あがきはやめたんだな、久しぶりに楽しい戦いだったぞ。 さらばだ」



 全てが見えなくなる眩い白い光の中で俺はそっと目を閉じた。



 「竜! 何やってんのよ! ささっと目開けなさい!」


 「その声はラヴァナ! って何その姿は」



 目を開けた先にいたラヴァナは必死にリュウマの光線を吸収し続け、初めて会った綺麗な姿でも仲間になった時の幼女の姿でも無い、これまでにないほど太ったラヴァナだった。 男でもここまで太った人はテレビでも見た事がなかった。



 「ちょっと突っ立ってないでよ、リュウマに一泡吹かせてやろうと隠れてたらあんたがれそうになってたから必死で助けに入ったの。 早く私に触れて魔力を受け取りなさい。 一瞬だけどあいつの魔力に匹敵する力を持てるはずよ」


 「わかったよ」



 ラヴァナに触れると力がラヴァナは元の綺麗な姿に戻っていき、俺に魔力が流れ込んでくる。



 「私はもう限界だわ、魔力を溜め込みすぎて体が張り裂けそう。 これで助けてもらった借りは返したわ後は頼んだわよ、私は少し休むわ」



 ラヴァナはそう言って静かに倒れた。 魔力を纏った鎧は今にも沸騰しそうなほど細かく震えなんとか魔力を鎧の中に押し留めていた。



 「竜! 早く魔力を使わないと私達事弾けちゃうよ。 今はギリギリ指輪の力で英雄の皆さんに精神を支えてもらってるから大丈夫だけど早くなんでも良いから魔力を使って!」


 「わかってるよ、これがオレの最初で最後の魔法。 ナービ俺に合わせてくれ」


 「わかったよ」



 本来の龍の姿に戻ったリュウマに今にもはち切れそうな魔力を向ける。



 「竜! いくら魔力が並んだとはいえそのまま攻撃しても倒し切れないよ!」


 「わかってるよ、これは攻撃じゃないんだ。 帰るための魔法だよ」



 鎧を覆う魔力を一気に解き放つ、魔力は大きな赤い竜の形になってリュウマに向かっていった。



 「確かに凄まじい魔力だ! だがこの程度で俺を倒せると思うなよ!」



 リュウマはもう一度光線を放った。



 「竜!」


 「大丈夫、信じろ」



 リュウマに向かっていった赤い竜は光線の周りをなぞるように避けながらリュウマすら通り抜け、リュウマの後方で爆破した。



 「外れだな、今度こそ終わりだ」


 「俺の勝ちだよ、リュウマ」



 リュウマの後方で爆発した竜は空間を歪ませ、リュウマの大きな体がすっぽり入るほどの穴を空中に作り、その穴は周囲を凄まじい勢いで吸い込んでいっている。



 「何をした!」



 体のバランスを崩しながら必死に前足の爪を地面に食い込ませて踏ん張りながらリュウマは叫んだ。



 「地球だよ、俺の住む星にその穴は繋がってる。 良い所だぞ? 飛び込んでみろよ」


 「誰がお前ごときの言う事を聞くか!」


 「じゃあ無理矢理だな、ナービ! 行くぞ」


 「任せて! 体を楽にしてそのまま飛び上がって!」



 ナービの行った通りに飛び上がった俺の体は一直線にリュウマに向かい、魔力を込めた渾身の蹴りがリュウマの前足の爪に当たった。 最初は何とも無い様子だったが段々と爪にヒビが入り遂には砕け散り、片方の爪を失ったリュウマはバランスを崩し穴に吸い込まれていった。 当然俺も穴の吸い込む力に耐えれる訳もなく穴に飛び込んだ。




◆◆◆◆◆◆◆◆




 穴を抜けて起きた所は少し前は死ぬほど見ていた、固いコンクリートの地面だった。 体はどこにも傷は無いけど、変身が穴を抜けた衝撃で解けてしまっていた。



 「ナービ、今残りの魔力はどれくらい?」


 「後6パーぐらい、後1回の変身が限界だよ、それにしてもここおかしいよ。 鎧の魔力が一向に回復しない」


 「良かった、計算通りだよ。 地球には魔力という物質は存在しないから魔力を持った俺たちがこの世界に来たら、魔力は体に完全内包しているわけではないから、少しずつ魔力は体から漏れ出して最終的にはただの人間と同じになるんじゃないかと思ったんだ」


 「確かに私達は鎧の力で魔力を留められているけど…………ちょっと待って、私はどうなるの? この鎧の魔力が切れた時、私は竜のナビ出来なくなっちゃうよ」


 「わかってるごめん」


 「良いよ、謝らなくて……勝てる方法がこれしかなかったのは私も分かるし、それより! 竜の体はどうなるの? 魔力であなたの移植された竜の手足は繋がれているけどあと1回変身したら竜の手足は千切れちゃうよ」


 「分かってるよ、でもやらないといけないんだ」


 「しょうがないわね、死ぬ時はお互い一緒よ、最後のナビ頑張ってやってあげるわ」


 「よろしく」



 大きな巨体を震わせながらリュウマは苦しみ出した、体が大きいから魔力が漏れ出すのが早いのかも知れない。



 「どこだここはそれに体からどんどん力が抜けていく」


 「魔法で空間と空間をつないで俺が住んでる東京という土地にあんたを連れてきた。 良かったよ本当に人の群れの中にアンタが落ちなくて。 周りに人はたくさん居るけどスクランブル交差点に落ちてくれたから誰も死なずに済んだ」


 「空間を繋げた? そういう事かならまた魔力を安定させて空間を繋げれば良いだけの事だ」



 リュウマは魔力の消費が激しい龍体から人型に戻り目を瞑り始めた。



 「ナービ、最後の変身だ。 今までありがとう」



 俺とナービは声を合わせて叫んだ。



 「変身!」



 両腕のブレスレットをベルトのバックルにかざすとブレスレットが腕から動き全身を駆け巡っていき鎧がバックルから飛び出し体に装着されていった。 鎧は1番最初に変身した時の綺麗な空色の竜と天使のマークが入った鎧だった。



 「最後は始まりの鎧にしたよ、1番魔力消費が少なかったからね」


 「じゃあ行こう! リュウマが空間を繋ぐのを防いで魔力が切れれば俺たちの勝ちで、もし阻止できずに空間を繋げられてあっちの世界に戻られたら俺らの負けだ」


 「なんか呑気な言い方ね」


 「ナービが居れば負けないって分かってるし、それにあんだけ強かったリュウマをここまで追い込んだ事に感動してるよ。 最後にもう一踏ん張りしよう!」



 詠唱中のリュウマに向かって体内にしまって置いたカナタを投げる。 リュウマに向かって一直線に飛んで行ったがカナタはリュウマの目の前で止まりその場に落ちた。



 「何かバリアの様なものを張ってるわ、接近戦で叩き割るしかないわね」



 すぐに距離を詰めリュウマに殴りかかるがリュウマには後少しの所で届かずゴムみたいに押し戻されてしまう。



 「私達の今の魔力じゃあのバリアを破れない。 竜こうなったらリュウマの魔力が溜まり切ったその瞬間に全力を叩き込むしかないわ、空間連結魔法を使う時はリュウマもバリアを解かなくてはいけないはずだから」


 「わかった、やってみよう」



 リュウマは詠唱を続けていると胸の前に白い球体が現れ、リュウマは目を見開いた。



 「竜! 今よ!」



 空中に飛び上がり渾身の蹴りをリュウマに浴びせるためにリュウマに向かって飛び込んで行く。



 「よくやったよ、竜。 私は元の世界に戻るより前にお前を殺すと決めていた。 竜! お前を好敵手と認めよう! 長く生きていてこんな感覚は久しぶりだっただがもう終わりだ。 ゆっくり休め」



 リュウマの胸の前にある白い球体から眩い光と共に鎧全体に光線が目にも止まらぬ速さで直撃した。



 「竜! これは空間連結魔法ではなくただの高度な攻撃魔法です! 残り魔力全てを防御に回します! だがそれでもこれは! いや私のデータ全てを魔力変え防御に回す絶対に守ります! 竜さよならです」



 光線で何も見えず感じられない中確かに俺の中から心が1つ消えたのを感じた。



 「これも耐えたか!なかなかしぶとい。 だがお前からはもう魔力を感じられないな、決着は付いたな。 久々にギリギリの戦いだったぞ特別に殺さないで置いてやる。 これからは俺は元の世界に帰るが邪魔をするなよ」


 「ふざけるな! 絶対に行かせない! ナービを犠牲にしてまで生き残ったんだ何をしてでも止める!」


 「まだやるのか? わかった、お前のその目を見れば本気な事が分かる。 来い命を捨てるつもりでな、お互い最後の一撃だ」


 「カトウ!」



 リョウマの近くに落ちていたカトウを引き寄せそのまま体内に突き刺した。 万が一の為にカトウをリュウマの近くに置いておき魔力を吸収させていたのだ。 これであと一撃だけ繰り出せる。 さっきの衝撃で鎧は砕けちった、鎧を修復させる魔力ももうない。 右足だけを変身させ、全ての魔力を一滴残らず込めた。 右足で地面を踏み抜きリュウマの真上はるか上空に飛びあがった。 ナービが居ない今目標を修正する力は無い。 ただ重力に任せて落ちるだけだ。 隕石の様に。



 「来い! 竜!」


 「竜星群!」



 右足をお守りにしてリュウマに向かって一直線に落ちていった。  リュウマは魔力の膜のバリアを何重にも発生させて攻撃を防ぐに当たった瞬間に何枚かは一瞬で割れた。 あと数枚、最後の力を振り絞り魔力の出力を上げた。 魔力の膜は破れついにリュウマの体に攻撃が加えられようとした時リュウマは手で右足の鎧を掴み粉々に握り潰した。



 「悪いなまた俺の勝ちだ」


 「いや、俺の勝ちだよリュウマ」



 足の裏からカナタを飛び出さし、リュウマの手から腕にかけて深々と刺さった。 その瞬間カナタはリュウマから魔力を吸い上げ一瞬でその容量が満杯になり真っ赤に染まり、カナタと繋がっている俺の体も真っ赤に染まった。



 「リュウマ、お前はもう最強を名乗らなくて良い縛られなくて良い楽に生きろ!」



 溜まった魔力を全て放出し、俺は真っ赤な弾丸と化した。



 「俺は認めんぞー!!ぅおおああ!」


 「うおおぉおぉおぉ!」



 真っ赤な爆発と共に俺の足はリュウマの腹を貫いていた。 やっと終わった。 だが俺ももう限界だった。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆




 「竜さん、竜さん、起きてください。 手術は成功しましたよ」


 「ここはどこですか? あなたは誰?」


 「私はあなたの担当ナースの吉田ですよ、今日はあなたの交通事故で負った怪我の緊急手術だったんですよ。 奇跡的に足と手を切断せずに済みました」


 「そうですか、ありがとうございます」



 これまでの事はただの麻酔中に見ていた夢だったのか。 吉田さんにストレッチャーを押されて病室に移動した。



 「とりあえず今日は様子見て明日から退院に向けてリハビリしていきましょう」


 「ありがとうございます」



 病室には誰も居なくなり俺は外の景色が見たくて窓を開く、太陽の光で一瞬俺は目を瞑った。



 「もういつまで寝てるつもり?」


 「ナービ!」



 気のせいか、俺はそう思い窓とは反対側に体を倒した。 俺の視線の先にある机の上には良く見慣れたベルトが置かれていた。



 「竜! 久しぶり!」


 「ナービなのか?」


 マリーと大体顔の作りは似ているが所々が少し違う。 もちろんものすごく可愛いんだけど。


 「うん、ナービだよ、あの後データを復元してもらってマリーの体を元に私も体をミーユさんに作って貰ったの、これで生身で竜をナビ出来るよ!」


 「そっか、嬉しいよ! でも今更ナビする事なんて無いんじゃない?」


 「何言ってんの? リュウマはまだ死んでないし、街にはリュウマから漏れ出した魔力の影響で動物や人間が凶暴になって怪人かしてるわ、まだ私達は必要よ」


 「そうか、ナービこれからもナビよろしく頼むよ」


 「うん、あなたの一生をナビしてあげるよ」


 「それは俺からもよろしく頼むよ」



 ナービは少し頬を赤らめた気がした。

 

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