67話新しい力
67話新しい力
変身し、鎧から生えてきた羽を広げしならせて矢のように飛ばす。 だがリュウマは当然のように効かずに翼を片手で受け止めている。
リュウマが羽を受け止めている間にリュウマの上をミラを背負って通り抜けた。 塔の外に出てミラを地面に下ろし、再び戦う為に姿勢を整える。
逃げる考えが頭をよぎったけど重傷のミラを置いてはいけないし、そもそもリュウマから逃げるのは無理だろう。 となると私がする事はただ1つで竜がここに戻ってくるまで時間を稼ぐ事だ。
そんな事を考えているうちにリュウマが塔から出てきた。
「そのおかしいな姿は何なんだ、マリーの事を私は確かに殺したはずだったんだがな」
「私はナービ確かにあなたはマリーを殺しただろうけど天使のミーユ様に作られたAIナービ、今はこの体を借りて活動している。 そしてあなたは私が課せられた使命の中でも1番重要な目標! あなたを殺します」
「そんなつまらない理由で俺の娘を使っていたのか」
「つまらない? あなたが殺したんでしょ! この体を!」
「マリーは私が間違っていると意見をし、その間違いを認めさせる為に私と戦いそして負け、死んだ。 私達の中では至って普通の死に方だが」
「この体にも記憶は残っているけど、あなたはやっぱり間違ってる! 自分が最強で居続けたいが為に他の有力な龍族を全て殺し将来有能な人材を殺し続けずっと最強居ようとする。 そんな事を続けて何になるんだ」
「その言い方マリーにそっくりだな、そうだな理由か、考えた事もなかった。 私が最強で生き続ける事だけが存在意義であり、龍族が全ての生物の頂点と言う証明であり、個人的に私より強い生物が過去、現在、未来において存在する事が虫酸が走るほど嫌なんだ」
「それよ、その理由を毎日、毎日私は聞かされてきた。 私はあなたのその考えが本当に虫唾が走るわ、あなたが居なくても勝手に龍族は繁栄するし、他者を殺して維持しようとする強さに意味なんて無い」
「完全にマリーの人格が戻ってきてるな、これ以上はもう話しても無駄だろう。 もう一度私に挑んでみろ勝てる可能性はゼロに近いがな」
「今度こそ負けない、間違いを正して見せる。 この翼使い方も思い出した」
鎧から生えた翼は自然と抜け落ち2本の白い剣へと姿を変えた。
「そうだ、お前の全力を俺にぶつけて来い!」
リュウマは土から茶色の子龍を5体ほど生み出し、私に向かわせ自分は党の上に飛び上がり高みの見物をしている。
私は剣を振りリュウマに向けて飛び立ったがリュウマが生み出した子龍が足を掴み爪が足に食い込んだ、だがすぐに腰を捻り、翼の剣で頭を跳ねる。
子龍は体の力を失い、そのまま地面に落下した、私はすぐにもう一度飛び上がったが別の子龍が背中にしがみついてきてそのまま地面に引きづり落とされた。
子龍は私を囲んで、舌からよだれを垂らしている。 ジリジリしと子龍達は近寄ってきたが今の私の剣は誰よりも素早い子龍の首を全て跳ね、もう一度飛び上がりリュウマの喉元に向け切っ先を突き刺し、切っ先はリュウマの首を完全に捉えた。
切っ先は1つも傷を付けられずに粉々に砕け散った。 すぐにもう1本の剣を脳天に振り下ろした。
「もう良い」
リュウマはもう一振りの剣を掴むとそのまま握り潰し、私の鎧に軽く触れると鎧は砕け散り、そのまま私は塔の上から落下した。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ナービ! ナービ! 大丈夫か!」
俺は塔の下に倒れていたナービに声をかける。 道中の木が全て倒されていて予想よりだいぶ早く着けた。 こんな無茶苦茶な事、思い当たるのはラヴァナぐらいしか居ないが今はそんな事どうでも良かった。
「大丈夫か?」
「あなたは竜ね、ナービを通じて見ていたわ」
「マリーなのか?」
「うん、あそこにいるリュウマと戦っている最中に完全に戻ったわ」
「じゃあナービはどこに行ったんだ?」
「居るべき場所に戻ったわ、後これ返しておく私にはもう戦う意思はないから」
そう
「わかった、ゆっくり休んでくれ、それかどこか遠くに逃げても良い、ミラは居るか?」
「そこの木の陰に寝かせて置いたわ、まさか戦う気なの?」
「もちろん、そもそもあいつを倒す事が俺のこの世界での目的だし」
「あのね、私もナービを通じて聞いてたけどミーユが出来る事でリュウマに出来ない事は無い、リュウマに話して見ればあなたを元の世界に返すぐらい容易い事だと思うけど今のまま戦っても犬死にするだけよ」
「大丈夫、策はあるそれにお前の分も頑張らないと行けないしな」
「もうそんな事しなくて良いあなたは元々この戦いには関係ないんだから。 ナービもそうだけど私達が巻き込んだのよ」
「もう、うるさいな黙ってろ俺がやりたいからやるんだよ。 俺がナービやマリーやミラや光の団員達を傷付けたり殺したりしたリュウマが許せないんだよ」
「わかった勝手にすれば良い、その代わり勝ってね」
「もちろんだよ」
俺はマリーをミラの隣に寝かせた。
「ミラ大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ、いつでも戦える」
「いや、戦わなくて良いこの指輪をベルトに組み込んで欲しいんだ」
「ちょっと待って! その指輪さっきの墓から持ってきたの? それは隊長から頼まれたやつでしょ」
リンさんが横から口を出してきた。
「リンさん、もう薄々気づいているでしょ、あれはもう前の団長なんかじゃないですよ、あなたの部族に龍を放ったのもあいつです。 そしてあなた部族が僅かな可能性でも自分を殺せると思ったから殺したんです。 リンさんも力を貸して下さい」
リンさんは一瞬躊躇った様子を見せたがすぐにいつもの鋭い目に戻った。
「わかった、あいつが獲物って事ね、協力するわ」
「出来た! これで指輪を嵌めながら変身すればこの指輪の魔力と英雄達の経験を得たまま変身出来るはずよ」
「ちょっとあなた私の意見聞かずに作業に取り掛かってたでしょ!」
「当たり前でしょ、一刻も早くあいつを倒さないといけないんだから」
「全く、まぁいいわ、私とミラで援護するから竜は早く変身しなさい」
ベルトはボロボロに傷ついていたがミラが補修をした事で多少は元に戻っていたが、ベルトの赤い塗装は所々禿げ銀色のベルトが見えている。 ベルトの脇からはケーブルが伸び指輪に繋がっていた。 指輪をはめるとケーブルが肌に張り付き血管のように馴染んでいった。
「変身!」




