56話予感と容疑者
目が覚めると影の団の寮のベッドの上だった。
「リュウ! 起きたの? あの後大変だったんだよ? いきなり倒れちゃって多分私とあんなに激しい戦いをしたせいね!」
そうか、気を失ってしまったのはわかった。 だが、なぜラナは何食わぬ顔で俺と同じベッドで寝てるんだ。
「なんだよラヴァナ、2人だけなんだから別に演技しなくていいんだって」
「なによ、こっちがしっかり合わせてやってるのにそっちも先輩として合わせてよね」
「わかったよ、早く退いてくれ」
「もう、わかったわよ」
ラヴァナはやっとベットから降りて、ベットの隣にある椅子に腰掛けた。
「ホルンさんと、ナービはどこにいる?」
「えーとね、キッチンに居るよ! さっきご飯食べたし」
「ありがとう、くれぐれも悪さはするなよ」
「わかってるよ、あ! ちょっと待ってこれ持ってって」
ラヴァナはベルトを取り出し、階段を降りようとしている俺に投げつけた。
「壊れてたベルトを私の不細工な縫合で直しておいたわ、前のベルトよりは性能良くなってるんじゃ無いかしら」
ベルトには所々につぎはぎの模様が付いていた。
「ありがとな、お前が壊してたんだけど」
「もう! それは言わない約束でしょ、先輩」
ラヴァナが猫撫で声でそう言い切る前に俺は階段を降りる足を早めた。 階段を降りた先には龍体のまま朝飯にがっつくナービと、それをコーヒーを啜りながら眺めるホルンさんが椅子に座っていた。
「おはようございます」
「やっと起きたな、おはよう」
「すみません、山で倒れちゃって」
「いや、良いさ今回は竜が1番働いたからな」
「ありがとうございます。 ナービ、なんだか久しぶりに話す気もするし飯にがっつくのは一旦ストップして話さないか、てか早くベルトの中に戻って来てくれよ」
ナービは大きな口をもぐもぐさせながら、翼で水の入ったコップを器用に掴み水を一気に流し込んで、大きく息を吸い込み大きく吐いた。
「あーー美味しかった! おはよう竜! ベルトの中に戻るだっけ? もう嫌だよ、このご飯の味知っちゃったら毎日食べたくなるし、私のナビ無しでもラヴァナを倒せるぐらいなんだからもうナビなんて必要ないでしょ、お互いもう自分達で戦えるし」
「いや、そういう事じゃなくてさ、俺が不安っていうか、2人で1人みたいな所あったじゃん俺ら」
「2人で1人? そんな事ないから私達はちゃんと別々の生き物よ、それも異性のね」
なんだよ、ナービなんか怒って翼を逆立ててるし、変な事何も言ってないだろ。
「この話はまた話すとして、竜! 今はもっともっと大事な事が起ころうとしてるわ」
「なんだよ、大事な事って」
「私の中のマリーが表に出た事によってリュウマが私の存在に気づいたの」
「それで?」
「確実にリュウマは私をもう一度殺しに来るでしょうね、そして王都も一緒に滅ぼす気でしょうね」
「なんで分かるんだ?」
「分かるのよ、やっぱり元は親子だからどこかで繋がっているのね、リュウマの溢れんばかりの憎悪が伝わってくるの」
「そうか、遂に宿敵の戦いか! リュウマを倒せば帰れるしまさに最終決戦だな! やったるぞナービ!」
「おーー!」
2人で拳と翼を高く築き上げた瞬間だった。 ドアが蹴り破られ鎧に体を包んだ兵士が押し入って来た。
「聞けい! 影の団副団長リュウをガイア山噴火、鬼襲来事件に関して容疑者として名前が上がっている一緒に来い!」
「は?」
俺が呆気に取られそう言った時にはもう手首には手錠が付けられていた。




