第49話カトウ
第49話カトウ
体が動かない、気づくと自分の血で溺れそうになるほど出血していた。
そうか、俺はラヴァナに負けたのか、鎧は全て砕けベルトは遠くの床に転がっている。 ナービ! ナービはどこだ! 必死に叫ぼうとするが喉も傷ついて声が出ない。
辺りを見回すとナービは竜体に戻ってラヴァナと向き合っていた。
何をするつもりなんだ、俺の事は良いから早く逃げろ。 声を絞り出すがラヴァナには届かない、俺の意識はそこで途切れた。
気付いた時にはベルトをつけた真っ白なライダーがラヴァナと戦っていた。 白いライダーは俺の名前を、しきりに話しに出しながら戦っていた。 まさかラヴァナなのか、いや絶対にあの姿はラヴァナだ、早く助けないと。 床に手をつくが血で滑り上手く起き上がる事が出来ない、無理だこれはもう、目も段々見えなくなってきてるし、自分の体からどんどん感覚が無くなって行くのがわかる。
その時、誰かの声が近くから聞こえてきた、辺りを見回すが何も見当たらずただ床があるだけだった。
「下だよ、下! は、ら、の、し、た!」
声に反応して床に手をつきやっとの思いで、仰向けにひっくり返った。
元いた床を見るとそこには血まみれの鎧の破片があり、声はどうやらその破片から聞こえているみたいだ。
「俺だよ、刀だよ! 早くこっから出してくれ! 狭くて仕方ない!」
刀? さっき拾った刀か? 力を振り絞り、残り少ない魔力を鎧の破片に流す。 すると破片から刀が飛び出して来た。
「めっちゃ狭かったぜ! お前か! 俺をこんな所に押し込んでたのは」
刀は飛び出すと黒い鞘に入っておりよく見る普通の刀といった感じだ、喋る所以外は。
「俺だけど、刀が喋れるのか?」
「これはテレパシーだよ、テレパシー、俺の体とお前の体、床に流れる血を伝って繋がってるんだ。 俺はラヴァナに封印されてからずっと眠ってたんだけどな、血から魔力を吸収して何とか自我を取り戻す事出来た、お前の血か?」
「俺の血だよ、ラヴァナにやられてこの通り」
「そうか、俺は前の持ち主がやられて俺を振る奴がいなくなった、負けた。 ていうか、お前のその傷致命傷だな」
「分かってるよ」
「助かりたいか?」
刀は俺に言った。
「助かりたいより今すぐラヴァナと戦いたい」
「良い答えだ! まずは俺の柄をしっかり持て、繋がりを強くする」
床を這いずり、刀を弱々しく掴んだ。
「想像以上に無茶苦茶な体してるな、龍の体に、人間の体を無理矢理引っ付けたみたいな感じだ。 それでこの体の損傷か、契約するしかないな」
「なんだよ契約って」
「俺の能力は魔力の吸収と放出の2種類だ。 今からお前の体を最低限動けるようにはする。 だが戦いたいなら俺を自分の心臓に突き立てるしかない、そうすればお前の体全体に心臓から魔力の放出で魔力を流し回復させ、体のアンバランスな魔力の出力を安定させて常に100パーセントの力で戦えるようになる」
「心臓に刀を刺すのは怖いけど、俺にメリットしかないじゃないか」
「ここからが問題だ、 俺がお前の心臓に刺さるとその瞬間から俺とお前の人格が溶け合って行く、そうするとお前の性格やら何やらが変わってしまうかも知れない、それでも良いのか?」
「死ぬよりかはマシでしょ」
「なら契約完了だ、名前はなんていうんだ?」
「佐藤竜、そっちは?」
「え? 初めてだよ、名前を聞き返されたのは、名前なんてない。 ただの刀に憑いた悪魔だよ」
「そっか、じゃあ刀のかたなと刀の違う読み方のとうを合わせてカトウで! お前の名前は今日からカトウだ!」
「カトウか、まぁ、なんでも良いさ受け入れますよ、精々早死にはしないように末永くお願いしますね」
「もちろん、よろしくな」
カトウを手にした俺はカトウを杖代わりに立ち上がった。




