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第47話四面楚歌



  鎧は魔力が切れ、人型に保っていた形が崩れていった。  



 「ギリギリだった、本当に」



 竜体に戻り仰向けに倒れる。



 「お疲れ様」



 いつも聴き慣れた声だったけど、今まで聞いた中で1番嬉しかった。



 「竜! 本当に心配したんだから! もう大丈夫なの?」


 「いや、全然大丈夫ではないよ、今にも死にそうだよ」



 嬉しくなって竜に戻って小さくなった体で竜に抱きつき、翼で思い切り抱きしめた。



 「なんか今日はいつもより、冷たくないね」


 「もう黙っててよ、早く帰りましょ」


 「うん、マルーを連れてさっさと帰ろう」



 私は竜の肩に乗り、マルーをベッドの上に寝かせ洞窟の出口へ進もうとした時出口から何か音が聞こえた。 



 「ナービ! 敵か!」


 「いえ、どうやら今1番来て欲しい人が来てくれたみたい」


 「悪いね、遅くなってしまって」


 

 そこに現れたのはホルンさんだった。



 「ホルンさん、本当に遅いですよ」


 「ああ、中々鬼達が手強くてね、ごめんって凄い出血じゃないか! 今すぐ治療しないと死んでしまうよ、それでそのベッドに乗っているのはマルー君かい? どうやら目的は果たしたみたいだね」



 ホルンさんの服は所々破れ、足から血を流し、相当なダメージを食らった後があった。


 「はい、なんとかギリギリでしたけど」


 「その小さな龍はナービかい?」


 「はい! この姿を見せるのはそういえば初めてでしたね、どうぞ竜をこれからもよろしくお願いします」


 「いえ、どうぞこちらこそよろしくお願いします」



 ホルンさんはわざとらしくかしこまり、頭を下げた。 



 「本当この洞窟、いや施設というべきかな、不思議な作りをしているねこんな作りの建物は見た事がないよ、マルーが寝ているベッドだってさっき初めて見たし」


 「ホルンさん、その話も良いんですけど、マルーと竜が」


 「ああ、ごめん一刻も早く帰らないと行けなかったね! 早く行こうこんな所鬼達もたくさん居て気味が悪いよ」



 その時部屋の光が一瞬で消えてしまった。 



 「ナービ! 何があったか分かるか!」


 「この部屋はガラス張りのマグマがあるから常に明るいはず! まさか!」



 悪い予感は的中した。 マグマの方向を向くと、強い光を放つ所がありそこをよく見ると、全身からマグマを垂れ流しているラヴァナが立っていた。




◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆



 「もうおしまいだ、まともに戦える人居ないし、ラヴァナはマグマの力を「不細工な縫合」で自分の力として取り込んでしまった。 そんなのこの今も噴火を続ける活火山の力を自分の力にしたようなもの、今のラヴァナは龍を超える魔力数値を叩き出している」



 ナービは絶望した様子でそう答えた。



 「私のせいだ、ラヴァナをマグマに沈めたのは私、全部私の責任だ。 私が最後にもう一度どうにか変身して時間を稼ぐからみんなはどうにか逃げて」


 「ナービ、お前は逃げろ、もうベルトに貯蓄されている魔力は少ない、変身ももう出来ないさ、俺がラヴァナを倒すから」


 「倒すって竜! あんた1度負けたじゃない! 今は負けた時より、体の状態は悪いんだよ? それにベルトで変身も出来ない、どう考えても無理だから!」


 「その意見には僕も賛成だね、 ナービも、リュウもマルー君ももう戦うのは無理だ。 ここは全員揃って逃げるのが正しい!」



 ホルンさんはそう言ったがラヴァナの熱気で鬼達が入っていた瓶が割れ、中から鬼達が100体ぐらい溢れ出て、あっという間に取り囲まれてしまった。



 「ごめん、今逃げるのも厳しくなってきた」


 

 ホルンさんは厳しい顔でそう呟いた。



 「ホルンさん、一生のお願いです、今すぐマルーとナービを連れてここから逃げてください」


 「竜、君みたいな若い人間が命をこんな所で捨てる必要はない、第一君はどうやって戦うつもりだい?」


 「この刀です」



 俺はさっき拾った刀を取り出した。



 「実はこの刀、ナービを逃した時に一緒に外に出して置いたです。 それで俺が負けた時に手元に転がってきて、色々試したらこの刀すごいんですよ? こうやって長さを調節出来るんです!」



 ナービとホルンさんに刀の柄を握り、刀の長さを短くしたり、長くしたりをやって見せる。



 「竜、長さを変えられて何になるんだ。 それ以外はただの刀なんだろ? 無駄に命を捨てても誰も喜ばないぞ」


 「ホルンさん、俺を信じてください、俺は死ぬ為にここに居るんじゃない、勝つ為の戦いをする為にここに居るんだ」


 「…………わかった、どんな形でも良い、帰って来い」


 「ちょっと! 正気なの! ホルンさんが止めないなら私が止める! 竜! 早くベルトを私に渡しなさい!」


 「ダメだよ、ナービ、渡したらお前は変身して真っ先に戦いに行こうとするだろ?」


 「当たり前じゃない! 私はあんたのナビゲーションシステムとして作られたの、あんたがたかだかナビを庇って死んでどうするのよ!」


 「死なないよ、庇うつもりもない、俺が死んでナービが悲しむなら俺は死なない」


 「なら一緒に今すぐ逃げて、これだけは譲れない! 二度とあなたを危険な目には合わせない!」


 「それは出来ない、この鬼達を捌きながら逃げ切るのは無理だし、何よりラヴァナがこのまま暴れたら街が危険だ」


 「街なんてどうでも良い、何万人の命より今は1人の友達、あなたの方が大事なの」


 「今の言葉警備団の一員として言っちゃいけない言葉だぞ」



 そう言って、少しナービ笑いかけてホルンさんに合図を出した。


 ホルンさんは洞窟を少し進み、心玉で出口を破壊した。 破壊され、瓦礫が落ち始め、完全に塞がるまでナービは俺の方をじっと見つめていた、それは脅迫? いや、絶対に帰って来いという命令がこもった目だった。

 

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