第43話黒幕と消失
第43話黒幕
「マルー! 一体こんな所で何してるんだよ! お前を始末しろって命令まで出たんだぞ!」
「ごめん、これには訳があるんだ」
「なんだよ、理由って! それにこのデカイ鬼はなんだよ! お前が作ったのか?」
「竜! まずはこいつを倒すのを手伝ってくれ」
「わかったよ、後で話して貰うからな!」
鬼は体を震わせ雄叫びをあげ突っ込んでくる。 俺とマルーはそれを危なげなく躱すが鬼はさらにスピードを速め突進してくる。
「竜! この鬼には気おつけて! 他の鬼達とは魔力が比べ物にならないほど大きい!」
「了解!」
マルーが切りかかる刀が深く刺さるが筋肉に力を入れられ刀が抜けなくなり胴体を思い切り蹴り飛ばされる。 鬼は刀の痛みで喚き散らしている。
「おい! 大丈夫か?」
蹴飛ばされたマルーの元に駆け寄る。
「大丈夫だ。 鬼神化のお陰でだいぶタフになったから」
「鬼神化の事は資料で読んだけどやっぱりあの鬼とマルーの鬼神化は関係あるのか?」
「そうだ、俺は2週間前にこの森に刀を取りに入ったんだ。 そしたら遭難してしまって途方に暮れていた所にイチゴという赤い果物を見つけた、その果物を口にした瞬間に俺の鬼神化は覚醒したんだ」
「それでどうしてあの化け物は生まれたんだ?」
「俺は鬼神化に成功した後イチゴを食べながら森の奥に進んでいき、この洞窟を見つけ中に入った、そしてその先であの女に出会った」
「その女が鬼を作ったのか?」
「そうだ。 あの女は鬼神化した俺を赤子のように扱い拘束し俺の体を使って実験を始めた。 そして出来たのが俺の鬼神化と超高濃度の魔力の結晶のイチゴを核とした兵士、鬼だ」
「そういう事だったのか、その女の名はなんて言うんだ?」
「その名はラヴァナ、いつも白い服を着ていて、力を求めているとかなんだとか言ってた。 俺は隙を見て逃げ出した所を鬼に追われ戦闘していたら竜が来たんだ、本当に良いタイミングだった。 この追ってきた鬼は一角と言って鬼の中で最も強い個体だ、正直1人で相手をするのは厳しかったんだ」
「マルー今の話が本当なら一刻も早くラヴァナとか言う女のを止めないと行けない。 ラヴァナが意図的に鬼を街に放ったならガイア山の噴火とタイミングが合いすぎる。 そしてこの洞窟の奥はガイア山の噴火口の真下だ。 条件が揃いすぎている、今回のこの騒動の黒幕はその女だ。 先を急ぐぞ!」
「ナービ! 時間が惜しい、30%力を解放する! そして一角の核の位置を調べてくれ、一撃で決める」
「わかった! 核の位置は右胸ど真ん中! でも竜これ以上の力の解放は鎧を付けていても危険よ」
「やるしかないだろ」
「わかったよ、10……20…………30%竜化完了!」
鎧からは蒸気が吹き上がり身体中に激痛が走り、右手は徐々に大きくなり力を増し、鎧はパンパンになり鎧のの下から赤い模様がチラチラと見え始める。
「竜! いつでもいける! ぶちかまして!」
「当たり前だ!」
マルーに切られた傷が癒えた一角が再び突進を仕掛けてきた。 両足を肩幅にしっかりと開き右拳に力を込める。
「今よ!」
ナービの掛け声に合わせ拳を振り抜いた。 一角の右胸には拳大の風穴が開き、電源が切れたようにその場に膝から崩れ落ちた。
「竜! 良くやったな!」
「結構ギリギリだったよ、早く進もう」
一角の死体を通り過ぎ、さらに洞窟の奥深くに向かって進んで行く。
「ナービ後どれくらい?」
「後、5分ぐらいだよもうすぐそこ、完全にレーダーは使えなくなったからここからは慎重に進んでね」
「了解!」
奥に進もうと足を踏み出したその時後ろから腹部に大きな何かがぶつかった。 後ろを振り向くとさっき倒したはずの一角が後ろに立っていた。 素早く一角を突き飛ばし距離を
「竜! 大丈夫か!」
マルーは泣きそうな表情を浮かべこちらを見ている、泣きそうな顔が少し面白い。
「大丈夫、傷は無いよ、多分鎧が」
衝撃のあった所に目をやると鎧は砲弾が当たったようにボロボロになってに穴が空き、体からは血がとめどなく吹き出ている。
「何んだこれ」
「竜! 気を確かに、でもなんで! 確実に核を潰したはずなのに!」
ナービの声もなんだか遠く聞こえてくる。
「竜! 竜! 寝るな! 眠っちゃダメだ!」
意識が遠のく、竜の体はすでに動かず、人間の体は微かに動くだけだ。
「クソっ」
ナービと竜の呼びかけは完全に俺の耳には届かなくなった。




