第37話日常
2週間後。
今日もこの小さな塔の中で目が覚める。 体を思い切り伸ばし大きなあくびをしてからベットから起き上がりホルンさんが居る2階に降りる。 ホルンさんは先に席に着いてテーブルに朝食の皿を置いている。
影の団に入って1週間が経って少しずつ生活にも慣れてきた。 3日目からは俺とホルンさんの交代制で朝ご飯を作っている。 昼と夜はほとんど外食で済ませてしまう事が多い。
「おはようございます」
「おはよう」
挨拶をして席に座る。 ホルンさんは目がしばしばしていてなんだがまだ眠そうだ。
「今日はまたパトロールですか?」
「そうだね、1日パトロール、何もないと良いね」
ホルンさんは出来たての目玉焼きを食べながらそう答えた。
この世界では目玉焼きなんて食べれないじゃないかと思ったがそんな事はなく、マルタ村では火を起こして豪快に強火で一気に作る料理が多かったが、聖都では誰でも使える魔法調理器具というものがあって、フライパンの様な物の持ち手に魔術回路が書いであり、それに触れて魔力を流すと回路が作動してフライパンを熱してくれるという仕組みだ。
火を直接起こしているわけではないので安全面にも配慮している。 俺は左手を使わないと回路に魔力を通す事は出来ないけど。
朝食を済ませた俺達は塔を出てホルンさんは心玉の上に乗って街まで向かい俺はバイクをブレスレットから呼び出し聖都レグルスに向かう。 レグルスはここから20分ぐらい行った所にある。
影の団の塔は聖都を見下ろすように小高い丘の上にあるのでクネクネした道を下っていけばレグルスに着く。 しばらくバイクに揺られ聖都に着いた俺はバイクをブレスレットにしまいホルンさんの到着を待つ、ホルンさんはすぐに空からふんわりと降りて来た。
レグルスの入り口には関所があり、レグルスで生まれた人はレグルスの中央塔の内部ににある井戸に血を一滴垂らして住民だと登録するらしい、多分遺伝子情報みたいな物だろう。 そして登録した住民は関所の出入り必要なのは血一滴だけで良くなるらしい。
俺はよそ者なので俺や他の国からの商人達はレグルスで発行して貰った紙を毎回いちいち見せないといけないので面倒だ。 行ける機会があったら中央塔に行って市民登録をして来よう。
「僕はこの関所の血抜きが1番1日の中で嫌いな行動だよ!」
「良いじゃないですか、ホルンさんはちょっとチクッとするだけで済んで、俺なんてこの紙忘れたら塔に取りに行かないといけないんですからね、もう2回も取りに行ってますよ。 ほら渋ってないで早く終わらしちゃってください」
ホルンさんは渋々丸いプレートの上に親指を置く、するとプレートの下から細い針が一瞬出てきて親指を刺して一滴血を採取する。
「相変わらず本当痛いよこれ、龍にもやってもらいたいよ」
「出来る事なら俺もそっちの方が良いですよ、忘れ物出ないし」
後は血の登録の照合待ちだ。 ホルンさんはここでの生活が長いせいなのか照合の時間が段々と伸びている気がする。
「なんか長くないですか?」
「本当だよ、あんな痛い思いをしてるんだからさっさと通して欲しいよ」
「よし! そこの2人通って良いぞ!」
重装備の兵士達が大声でそう言った。 正直余りの関所の兵士達は好きじゃない、関所は聖都を1番始めに外敵から防ぐ重要な拠点である為、中央塔の直属の兵士達が付いている。 明らかに他の兵士達よりも良い装備を身に付けているし、プライドも高そうな顔をしている。 優等生タイプだ。
「良しじゃあ今日はこの大通りをてきとうに歩いて行こうか」
「わかりました」
関所を抜けるとすぐに中央塔までの一本道があり、大勢の人で溢れかえっている。 道の脇には商人がそれぞれの商品を売ったり、宿屋、服屋、武器屋、魔力回路を用いた便利グッズの店頭での叩き売りなど大体の物はこの大通りで手に入るし、警備していて見てて飽きない。
レグルスには冒険者のような存在はほとんど居なく、そういう存在はそれぞれ警備団に所属していてレグルスの外に派遣され、ダンジョンにチームで潜ったり、危険な魔物の住む森に行って素材を収集したりなど仕事として冒険をするというシステムになっている。
「じゃあ僕はまた用があるので1人で警備よろしくお願いします」
「ちょっと!」
声を掛けたがもう遅くホルンさんは心玉に乗って裏路地の方に飛んで行ってしまった。 最近はいつもこうだ。 影の団は俺とホルンさんだけの団なので他の団より出来る事が少なく、生活する為の物の買い出し炊事洗濯、警備とは名ばかりの街でのブラブラぐらいしかない。 影の団だけの特別な仕事があるらしいけど今の所はやった事がない、暇だ。 うだうだ言ってても仕方ないし、今日も1日街の警備を頑張ってやって行くか。




