第30話まだ終わってない
クソ! 浜辺まで飛ばされたのか、あのミラとかいう女、不意打ちの技術は一流だな。
まずどうしてあんな奴らに俺がここまで追い詰められなきゃいけない、貴族達があのメデューサのコルサをいじめいたから党に乗り込んできたらしいが、いじめるとかいう以前に貴族は平民に何かをもたらすのが基本だろ。
富を持つ者として、それなのにここまで貴族の腐敗が進んでるとは、貴族の代表として青空の隊の副隊長になったのは良いけど若く経験が浅いからと他の貴族達が言う事を聞かない現状に匙を投げてしまった俺の責任か。
だが、この現状からは逃げない、あの2人を捕まえ、話あって納得した上で入隊させるんだ。 その為にも一歩も引く訳にはいかない。
光線を党の外壁に放ちあの2人にまだ戦えるという意思を示す。
あのバーサーカー2人組は党から出てくるとすぐさまコルサは引き金を引き、銃弾を浴びせてくる。 ここまで消耗していると銃弾を相殺させるのも一苦労だな。
ミラはコルサに合わせ高速でこちらに近づいて来る、浜辺なのに良くあんなに早く走れるな、ん? あれは走っているというよりは滑っている。
そうか! 魔力を靴に集めて何らかの方法で移動している、それならこうだ。
光線をカーテン状にして打ち出す。
「何この感覚は、上手く力が出ない」
ミラはバランスを崩し浜辺に顔から突っ込んだ。
「俺の魔力を満遍なくカーテン状に打ち出した。 範囲に入った相手の魔力の流れを乱す効果がある。 簡単に言うと毒ガスみたいな物だ」
「カイザー、汚い手を使いやがって」
「お前にだけは言われたくないね、後その言葉使いから直さないといけないな」
ミラは上手く魔力を練れず体が上手く動かないみたいだ。 念のため撃ち抜いて動けなくさせておくか、光線を発射しようとするとコルサが狂ったように銃を撃ってきた。
「ミラ! 大丈夫!」
コルサはミラに駆け寄りながら目に銃をかざしと緑色に銃が変わり、こちらに向け構えてきた。
あの石化の弾丸が来る。 俺は光の密度を高め手のひらから光壁を作りだす。 コルサは構わずに石化の弾丸を撃ってくる。
弾丸は緑の線を描きながら光壁に命中する。 弾丸は周囲を石に変えていきすぐに光壁全体は石に変わった。 光壁を手から切り離すと光壁は地面にぶつかり砕け散った。
コルサは追撃をせずに、ミラの元に向かった。
「ミラ!! 大丈夫? 大丈夫?」
「大丈夫だよ、上手く魔力が練れないだけだから、ていうかコルサも光の中に入っちゃったら魔力練れなくなるんじゃないの?」
「うん! 考えてなかった! しかも残りの魔力で撃てるの後、1発」
「めっちゃバカじゃん!」
「おい、何を2人で笑い合ってるんだ。 やっと大人しくしてくれる気になったか?」
「女の会話に口出さないでよね、でも本当に戦いはもう終わりにしましょうか」
「よく言ってくれた、もう俺も戦うのは疲れたからな」
俺は2人の元に向かい、手を差し伸べた。
「ごめん。 手を取りたいんだけどこの光のせいで魔力が上手く練れないの、消してくれない?」
俺は光を消そうとするが、これまでの行いからしてこいつらは絶対に裏切ると思いミラの目をじっと見つめる。 こちらをじっと見つめるその目は嘘を付いているようには見えなかった。 だけど俺は光を消すのはやはりやめた。
「コルサの芝居は中々だけど髪の蛇達が全員そっぽを向いてるぞ?」
その瞬間俺は光を強め、2人を身動きが取れないレベルまでにしようとした。
それとほぼ同時にコルサの両目が光ったが、俺の光の中ではメデューサの眼も光の力で屈折出来る。
いや、最初から狙いは俺を眼で石化させる事ではない、コルサは銃を構え、空に向けて打ち出した。
「空に最後の1発を何をやっているんだ!」
「見てわからないの?」
コルサが不敵な笑みを浮かべた、その瞬間俺の顔に暗い影が出来る。
それは大きな石の柱だった。 そうか、石化の弾丸を使い空間を石に変え、俺を潰す作戦だな、だが無駄だ、光のカーテンに魔力を使っているとはいえただの石を破壊するぐらいの光線なら撃てる余力は残っている。
これを壊して俺の完全な勝利だ。 光線を放ち空中の石を粉々に砕く、これで2人の最後の作戦も粉々に砕け散ったというわけだな。
「あれミラはどこだ?」
「ここだよ」
ミラは落下してくる石から顔を覗かせてきた。
「お前いつからそこに」
「最初からだよ、私が空間を石化させた弾丸に捕まって空中まで飛んだってわけ」
「なら再び撃ち落とすまでだ」
光線を必死に放つが落下してくる岩が増えて、ミラの隠れる場所が増えるだけだった。
「あんたの敗因は最初から殺す気で来なかった事、捕まえようとしてる時点で本気の私達には勝てない」
ミラは光線を岩の影に隠れながら避け、ついに俺の目の前に着地し殴りかかってきた。
敗北を認め目をつぶり衝撃に備えた。
全く殴られた感じもしなくゆっくりと目を開くとミラの拳は見慣れた手に止めれていた。
「団長来てくれたんですね」




