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第10話絶望との邂逅

私は絶望とは大げさかも知れませんが何もやる気が起きなくなる時はあります。ですが見方を変えれば意外とそうでもないんですよね。



 走り始め息も絶え絶えになってきた。


 やっと大きな大木を見つけ俺は頑張ってもう一踏ん張りと足を進める。


 ミラとマルーは付いて来てないなよかった。


 この先にあの狐達の親玉が居ると思うとどんどん足が重くなってくる。


「大丈夫ですか?」


「怖いけどなんとか大丈夫、俺1人で行けば命は取らないって言ってたし、マルーとミラを危険に晒すわけにはいかないよ」


「考えてみればミラに話した所で1人で行くのを許してくれるわけないし、2人には悪いけど黙ってここまでくるのが正解だったんだと思う」


「私には正解かどうかは分かりませんがあなたが仲間を思って行動している事は分かります」


 ナービと共に大木に足を踏み入れる。


 中は体育館ぐらいの大きな空間があって中央には、昨日現れた子狐がポツンと座っていた。


「妖天丸様がお呼びです。 こちらに来てください。」


 子狐が進む後に付いて、どんどん奥に進んでいく。奥に進むと5mぐらいのくぼみがある床があり、狐はそのくぼみの上に立って尻尾で手招きをしている。


 ここで逆らってもしょうがないし、ここは従うとしよう。 くぼみの上に立つと地面が光始め、上に上がり始める。


 現界でのエレベーターみたいな感じだな。


 前を向いていた子狐がこちらに振り返りムスッとした表情でこちらを見ている。


「妖天丸様は非常に気まぐれな方です。くれぐれも気分を害さないように絶対にあちらから質問されるまでは喋りかけないでください」


「わかった、注意するよ」


「約束ですからね!」


「わかったよ!針千本でもなんでも飲みますよ」


「いや、気持ち悪いから針千本は飲まなくて良いですよ、何言ってるんですか」


「冗談だよ、冗談」


 こっちの世界の、言葉は翻訳されていてもことわざとかはダメみたいだな、今はそんな事考えている暇もないか。


「そろそろ着きます」


 子狐の表情はどこか強張り緊張しているように見え、この先に居る奴は相当やばい奴だという事が伝わってくる。


 光る床は大きな音を立てて止まった。


「着きました。 この先に居るのが我ら狐達の主人、妖天丸様です。 どうぞ先へ進んでください。」


 どうやら子狐の案内はここまでみたいだ。 長い1本の廊下の両脇には神社でよく見るような狐達の石像がびっしりと並べられ、ろうそくで照らされている。


 一体一体顔が違く、どこか見られているような視線を感じる。 足取りは重くなる一方だがゆっくりと確実に廊下の終わりは近づいて来ていた。


 長い廊下の終わりにはふすまの扉があった。 ふすまに透けて明らかにさっきまで見た狐達のサイズとは、比べ物にならないほどでかい狐が居るのがシルエットでわかった。


「ねぇ、ナービこのふすまの先行かなくても良い?」


「普段だったら確実に引き返せと言ったでしょう。 ですが今は緊急事態です。 ミラとマルーの安全の為にも苦しいでしょうが頑張ってください」


「だよね、やるしかないよな。サポート頼むよ」


「はい、任せてください」


 俺はゆっくりと本当にゆっくりとふすまを引いた。


 入った瞬間に、全ての思考が恐怖でかき消された。 大木内をほとんど余す事ない大きさの狐が鋭い眼光で自分を見つめている。自分の鼓動の音だけしか聞こえず、一歩も動けない。


「動いて良し」


 声を効いた瞬間体の力が一気に抜けてその場に崩れるように腰を落とした。


「やっときたかリュウよ、待ちくたびれたぞ」

 目元が一重になってつり上がって笑みを作っている。どうやら怒ってはいないようだ。


「1人で来ました、妖天丸さんですよね。 俺に何の用ですか? それより今ミラとマルーという私の友人が森であなたの分身と戦っています! 分身を解除してください」


 子狐から視線を感じ、そちらを見ると呆れた表情でこちらを見ていた。


 そこでさっきの言葉を思い出し、ハッとして口をつぐむ。


 妖天丸は笑いながら口を開いた。


「確かに君は約束は守っただがそれは半分だ、途中までは私も見ていたが、マルーという男とミラという女と一緒だったじゃないか、その鎧の中の化け物は例外としてもな、君のやった事は子供のただをこねるそれと同じだ。ただ君は勇気を出して昨日の夜にここに来るだけで良かったのに仲間と一緒に居れば大丈夫という思い込みで仲間を危険に晒したんだ。ただの愚か者だよ君はこれから無惨にも君も君の仲間も全員死ぬんだ」


 愚か者? 俺が? それに死ぬ? みんなの為を思ってただけなのに、なんでそんな事にならなきゃいけないんだ。もう何も考えたくない。ただの人間がヒーローを気取るべきじゃなかったんだ。気分がどんどん悪くなる吐きそうだ。


「そんな顔をするな、リュウ君、私は愚か者は嫌いではないだから私も半分君の条件を飲んでやろう。1、君は助け、仲間は殺す。2、君を殺し、仲間は助ける。さぁどちらか選べ」


 妖天丸は口角が異常なまでに釣り上がり狂気の笑みを浮かべている。


 俺はそんなの決まってる! 1だと心の中で思ったが、口には出さない。当たり前だ、ヒーローじゃないんだ、普通なんだ、俺はそんな自己犠牲出来るわけがない、自分の命が惜しい、何よりも大事だ。大木に入るまでは2人を助けるヒーローになったつもりだっだが今はもう夢から覚めてしまった。







読んでくださってありがとうございます。

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