第1話 ライダーの誕生
大幅に改稿してからの1話目です。これから頑張っていきますのでよろしくお願いします。
俺の名前は佐藤龍、受験を控えた普通の高3男子、今は訳あって空から落下中、目の前には広大な森が広がっている、このままだと森を眺める暇もなく森に真っ逆さまだろう。
でも俺にはこれがあるんだな、俺は手首のブレスレットに手を掛ける、これはさっきの天使に貰った変身アイテムのブレスレットだ。
このブレスレットとベルトで変身すればあいつの話だと俺の移植された竜の体の力を引き出して落下の衝撃にも耐えられるはずだ。
意を決して勢いよく手首のブレスレットを捻って回転させる。
…………は?
ブレスレットは全く反応しない、体は森に向かってさらに落ちていくだけだ。 瞬きをする度に森がどんどん近づいてくる。
これは本当に不味い状況だ、必死にブレスレットを何度も、何度も、回転させるが何も起こらない。 こんな状態になっているのも全てあの天使のせい、俺は力一杯あいつの名を叫んだ。
「ミーユ!覚えてろよ!!」
◆◆◆◆◆◆◆◆
今日も変わり映えのしない無機質な病室で目が覚めた。 いつもの天井、窓から見えるいつもの木、通行する人々、変わらない景色だ。 本当につまらない。
部活帰りに夜道で自転車を漕いでいたら、酒に酔った馬鹿な運転手が俺に突っ込んで来てこの通り、命を落とす一歩手前まで行ったらしい、今はなんとか帰ってこれたが。
事故の衝撃で体を庇った右腕とぶつかった衝撃で車と壁に挟まれた左足が酷い状況で懸命な治療を1ヶ月施して貰ったのだが残念な事に今日は右腕と左足を切除する手術の日だ。
この生まれた瞬間からの相棒達の右腕と左足とお別れだと思うと感慨深いものがあるのかなと思ったけど、事故の瞬間から動かなくなったし、あまり余り感じなかったのだが、最後だしさすっておこう。
もうすでにピクリとも動かない右腕をさすっていると、ドアを2回ノックする音が聞こえてきた。 そろそろ手術の時間なのだろうか、俺は深く息を吐いた。
「どうぞ」
「失礼します。佐藤龍さんですね、手術の時間ですの手術室に運ばせて貰います」
入ってきたナースはまずナースでその髪色は大丈夫なのかというほどの鮮やかな金色で腰まで髪を伸ばしていた。 顔は彫りが深くて外国の女優さんみたいだ。 そして新人さんなのだろうかこの病院で入院してから1度もその綺麗な人を見た事がなかった。 美人は見たら忘れないはずだから確実に新人の人だろう。
「新人の方ですか?」
「はい、1週間ほど前からこの病院に移動なりました。 すみません、不安ですよね新人がこんな大事な手術の担当になっちゃって」
やっぱり当たった、新人でもなんでも俺の大手術のナースさんがこんな綺麗な人なら俺の手足も浮かばれるだろう。
新人のナースさんは申し訳なさそうにしながら、おぼつかない手つきで口につける変なマスクの準備をしている。
「いや、大丈夫です。綺麗な人だから手術の不安が和らぎましたよ!」
「ありがとうございます。 お世辞が言えるのなら大丈夫ですね! じゃあ酸素マスク取り付けます。 一気に眠くなるで体を楽にしてくださいね」
酸素マスクを取り付けられる時にナースさんの金色の長い髪が顔にかかった。 初めて使う言葉だけど芳醇な香りがした、つまり凄い良い匂いって事。
「大丈夫ですよ、楽にしてくださいね」
酸素マスクを取り付けられ、深く息を吸うと冷たい気体が鼻を通っていく、そうするとすぐに意識が遠くなって眠りについた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「起きてください、ほらアホみたいな顔してないで、早く起きて」
薄っすらと目を開け首は動かさず目だけを動かし辺りを見回す。 麻酔がまだ効いているのか意識がまだはっきりせず夢見心地だ。
隣にはさっきの綺麗なナースの人が立っているのがわかって少し安心した。
「手術は終わりましたか?」
「しましたよ、大成功でしたよ!」
大成功ってこっちは足切ってんのに不謹慎じゃないか? 辺りには真上にライトが1つあるだけで、他の所は真っ暗で何も見えない。 手術室ってこんなに暗いのか。
「手術上手くいって良かったですね」
「ありがとうございます」
ナースに視線を向けると、ナースはにっこりと笑い返してくれた、癒される。
「右腕痛くないですか?」
そう言われ、なんとか首を動かし右腕に視線を向ける。 そこには切除したはずの右腕に肩の付け根から、指先にかけて赤い鱗の模様の不気味な腕がくっついていた。 指先には爪が生え、皮膚の鱗はライトの光を反射して怪しく赤く光っていた。
もしやと思い左足も見たが同じように腰の付け根かから指先にかけて同じように赤い鱗と鋭い爪の足が付いている
俺は完全にそこで発狂してしまい、思い切り悲鳴をあげた。 体をばたつかせたがベットに付いているベルトで腰と事故の傷を受けてない腕と足が縛られていて身動きが取れなかった。
「なんなんですか、これは説明してください!」
ナースは着ていた看護服を豪快に破り捨て、背中から大きな白い翼が現れた。 折られていたのが窮屈だったのか翼を何倍にも大きく広げられはためかせられている。
俺は翼のあまりの美しさに息を飲み、痛みも叫ぶ事も忘れ平常心を少し取り戻した。
「私は天使のミーユ。 簡単に言うと、竜の体をあなたに移植しました」
天使!? 竜!? なぜ? いきなりわけがわからない、何を言っているんだ?
「意味がわかりませんよ!」
この返答は普通の人が今の俺のこの状況になったら絶対にこう言うと思う。
「私があなたの傷ついた体を竜の腕と足を移植して元気な体に治してあげたの! 立派な天使の仕事だよ!」
なんなんだこいつはミーユ改め、クソ天使は翼を細かく動かしている。 苛立ちを表現してるように見えた。
「ちょっと待って、情報が多すぎて全然わからない、まず、元気な体とかこの腕と足竜の体なんでしょ?」
「そうだよ! 移植したのは竜の体、ちなみにここは病室じゃないし地球でもないから後君タメ口になるの早すぎだね」
「当たり前だろ体を色々いじられた挙句誘拐した犯罪者に敬語を使うか! 地球じゃないってここはどこだよ」
「もう! 誘拐とか人聞きの悪い事言わないでよ! 腕と足治してあげたじゃん! ここは地球がある銀河からは遠い所にあるアーズって星だよ」
「これは治したとは言わない改造だから、アーズ? そんな星聞いた事ないぞ」
「そりゃそうだよ、遠すぎて地球からじゃ見えないからね、体は痛み大丈夫? 接合した所が痛かったりしない?」
なんなんだこの天使を名乗る女は俺の体を改造した挙句違う星に連れてきて俺に何をさせるつもりなんだ?
「何が目的なんだ?」
「よくぞ聞いてくれました! あなたにはこれを渡します!」
そう言うとミーユは俺の左腕に赤いブレスレットを通し、俺の腰の上に翼が両脇から生えた装飾がされている赤いベルトを置いた。
「あなたにはそのベルトとブレスレットを使って悪を裁いて欲しいの、そして最後には悪の竜、竜魔を倒して欲しい」
「はいや無理無理! 悪を裁くなんて出来ないよ逆に殺されるよ」
「大丈夫その為のベルトとブレスレットだからその2つを使い変身すればあなたに移植された竜の力を引き出して戦えるはずよ」
「もう嫌だ。 いきなりこんな所に連れてこられてわけの分からない事言われて挙句の果てに悪と戦えだなんて俺には無理!」
鼓動が早くなっていくのを感じた、鼓動はどんどん早くなり心臓が痛み出し、竜の腕も足も全身が痛い。
「大丈夫だから落ち着いて」
ミーユは俺にゆっくりと唇を重ねた。 そんな事をされた心臓が破裂するんじゃないかと思ったが段々と痛みは引き鼓動は落ち着いていき、竜の腕と足は事故でボロボロになる前の状態に戻った。
ミーユは唇を離し、俺をじっと見つめている。
「落ち着いた? もう大丈夫だからね、あなたの移植された手足は興奮すると元に戻ってしまうけれど落ち着いている時は元の人間の手足になるようにしておいたからなるべく平常心でいてね」
「あの、人間の手足に戻ったのは嬉しいけど改めていきなり改造とか頭おかしいですよ」
「それは褒め言葉なのかな? どういたしましてと言っておくよ! 変身アイテムを作ったのも君の好きなヒーローに好みに合わせてたんだからね、後は色々分からない事は鎧に取り付けてあるナビに聞いてね」
いや、褒め言葉ではない、何を考えてるんだこの天使はもしかしたら悪魔なんじゃないのか? そうに違いない。
「どうしたら元の世界に帰してくれる?」
「さっきも言ったけど竜魔っていうこの世界を暗黒に落とそうとしてるやつを倒してくれたら返してあげるよ
竜魔っていかにも強そうじゃん、そこはスライム倒したらとかにしてくれよ。
「まぁ頑張ってね! ちょくちょく様子見に行くから! あ! 大事な事言うの忘れた! 変身する時にしっかり「変身」 って口に出して叫ばないと変身できないからね、龍の声を認識して動いてるから」
ミーユはそう言うとベットの脇の赤いボタンを押した。 拘束具が外れ、体を伸ばした瞬間にベッドごと床が開き落下し、落下した先が空の上だったというわけだ。
俺はこうしてなすすべもなく異世界に来て5分で死を覚悟する状況に投げ出されたのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
色々嫌な事も思い出したけれど、声だ! 声で認証して変身するんだった。 焦って忘れていた。
よし、行くぞ! 木にぶつかる寸前でブレスレットを回し腰に付けたベルトに回転しているブレスレットをかざし叫んだ。
「変身!!」
その瞬間ベルトから鮮やかな青色の鎧が飛び出し、手首のブレスレットから全身に次々と装着されていくが体よりふた回りぐらい大きい、最後にベルトの天使の翼の装飾が青色に変わると腰のボルトが締まっていき徐々に鎧はぴったりなサイズになっていった。
ボルトと鎧の摩擦で低い金属音を奏で、その音の終わりと共に鎧の着心地は体の一部かと思うほどのフィット感を感じ、それは変身が完了した事を意味していた。
鎧は独特な柄になっていて、右手には竜の火を吹いてる紋章。
左手には九……あ!
気付いた時にはもう遅い、枝を何本も折り、鎧が木にぶつかってパチンコ玉みたいに色んな木にあたりながら落ちていった。
俺は辺り一面に響いたであろう大きな音を出し地面に叩きつけられた。
確実に死んだと思ったがなんとか鎧のお陰で助かったみたいだ。
上を見上げると、木の枝が落ちてきた形にちょうど折れて穴が空いたようになっていて、鎧に優しい光が差し込み、鎧は綺麗な空色に輝いた。
楽しく読んでいただけたなら嬉しいです。