第...五話であってる?
彼はシャルという名前で、紅ノ國の出身だそうだ。元は紅ノ國で一番の傭兵だったが、腕を負傷した為に逃亡し、黒ノ國出身の友人に手助けされて一度黒ノ國の戸籍を取ったらしい。その友人は塀を行き来することが出来る特例で、他國の住人を黒ノ國の住人へとスカウトする「仲介者」だった。戸籍を取った時点で住人は不老不死となるので、シャルは負傷した腕を治す為に一度殺された上で蘇生され、ゼトの所へ預けられたという。ゼトはその友人と腐れ縁だった為に、シャルを半ば強引に押し付けられた様だったが、当時五歳だったシャルを五年の間しっかりと育てたらしい。然し、俺の親父にシャルを虐待されそうになり、大喧嘩の末シャルを連れて逃げ出した。塀から出てくる矢は、シャルが銃で撃ち落としたという。
そこまで聞いて、俺はシャルのステータスに漸く気付いた。五歳で紅ノ國一の傭兵になり、十歳で光速で飛んでくる無数の矢を撃ち落とすのだ。絶対に怒らせてはいけない相手だろう。心臓をひやりとさせ、久しぶりの恐怖が身を包んだ。
そして、最後に俺の話をする事になり、ここで漸く俺は気付いた。俺は、名前を持っていない。