四話でありました!
次に目が覚めたのは、暖かいベッドの中だった。俺は、始めての感覚と暖かさに酷く動揺した。それまでは、俺が眠るのは押し入れの隅だったからだ。俺が知っていた感覚は、熱い、寒い、痛い、苦しいの四つだけ。だから、ふかふかの布団に暖かい部屋、洗いたてでいい香りのシーツ、柔らかい枕なんて知らなかったし分からなかったのだ。俺は、始めての感覚に脳が追いつかず、酷く怯えた。俺は、この後どうされるのだろう。そう考えると恐ろしくて、頭を抱えながらふるふると縮こまった。
その時、がちゃり、と部屋のドアが空いて、胡散臭そうな男がこちらを覗き込んだ。俺は、この男を見て酷く威嚇した。こいつも俺を痛め付けるのだろう。優しい振りをして好き勝手に甚振るのだろう。とにかく恐ろしくて、めちゃくちゃに暴れた。確か、噛み付いた様な気もする。でも、こいつは何も聞かずに俺の攻撃を受けながら、頭を撫でてくれた。何故か、目から涙が止まらなかった。とうに枯れたと思っていたのに。
その後、その男は卵粥をご馳走してくれて、先ずは自分の話をしてくれた。ゼトという名前だという事、この世界の事、ここが金ノ國だという事、ゼトも黒ノ國の亡命者だという事。そして、黒ノ國の亡命者は、皆不老不死である事。曰く、黒ノ國は塀の外と流れている時間が違うという事だ。ゼトも、金ノ國でもう数百年は生きているらしい。然し、それよりも一番驚いたのは、ゼトが親父の弟だという事だ。俺は即座に卵粥を吐き出そうとしたが、慌てて止められた。ゼトは、親父と酷く対立して塀を越えてきたようで、嗜虐趣味は無いらしい。俺の羽根に埋め込まれていたGPSを見て、親父の息子だと即座に気付いたという。何でも、親父は自分の物には全て特注のGPSを付けるのだとか。それを聞いて、安堵から心臓が抜け落ちるかと思った。俺を発見した時には俺はもう死にかけて居たので、GPSを抉り出してから止めを刺してくれたらしい。
そこまでゼトの話を聞いた所で、コンコン、と部屋をノックする音がした。ゼトが入っていいよ、と声を掛けると、俺より七、八歳程幼い抽象的な少年が恐る恐る入ってきた。