第一話でございます!
かぁ、かぁ、かぁ...
いたい、つらい、くるしい、いやだ、いやだ、いやだいやだいやだいやだいやだ!!!!!!
もうやめて、たすけて、ねぇ、おねがい...
おとうさん!!!!!!
反転
「お父さん!!!!!!」
自分の寝言に驚いて、俺はバッと飛び起きた。またあの夢だ。ここ最近、毎晩ずっと同じ夢を見ている。俺が親父から逃げ出してからもう数百年経ったのに、まだ俺は親父の呪縛から解き放たれていないのだろう。やはりまだまだ未熟だな、と一人自嘲じみた笑みを浮かべた。未だズキズキと痛む頭を抑えながら、煙管を吹かそうと煙管入れに手を伸ばし...そこで俺はトントントンと軽やかに階段を登ってくる足音に気付き、一度煙管入れを枕の下に隠した。
「とうさま、おはようございます!朝でございますよ!もう、朝ごはんは出来てございます!さぁ、早く装束にお着替えしてくださいでございます!」
すぱあん、と勢い良く襖を開け放ち、未だ九つ、十程の童子が忙しなく捲し立てた。相変わらず、敬語の使い方を間違って覚えているようだ。わかったわかったと頭をぽんぽんと撫でてやり、起こしに来た駄賃として蜂蜜の飴玉を一つ。ふわり、と顔を綻ばせる童子に人払いを頼み、俺は山伏の装束に身を包んだ。そして、
「捌の式、捌の式、もう人払いは結構だ。それより、参の式と玖の式に俺が起きたと伝えてくれ。」
と声を掛ける。
かしこまりましてございます、という声と共に、捌の式は階段を降りていった。そうして、俺は漸く煙管をふう、と一吹かしすることが出来た。