剣と飛行船で
投稿遅くなってごめんなさいっ
ゴオォォォォ
時間帯にして深夜、村は赤い光に照らされていた。
家が燃え、村人達は攻めて来る魔物達に追われている。
村の勇気ある男衆は農具や武器になりそうな物を構えて魔物に立ち向かうが、普通の人間が魔物に敵うはずがなく次々に倒され、食われていった。
もはやそれは戦、抵抗ともいえぬ一方的な虐殺であった。
その狂乱の最中、村の中心部分に2人の男が向き合っていた。
片方の男は全身黒い貴族衣装のような出で立ちで手には刃幅の広い洋剣を持っていた。
「お前達はもう少し静かにできのか……?そちらの方が楽に死ねるというのに……英雄さん」
剣を構えなおしながら気だるそうにいい放つ。
元は澄んでいたであろう黒い目はドブのように濁っていた。
「チッ! まだそんなこと言いやがるのか貴様は……ッ!!」
英雄と呼ばれたもう片方の男が舌打ちしながら日本刀を構え直す。
その男は茶色の和服に身を包んでいた。
がっしりとした顔つきで実直を絵に描いたような英雄は剣をあげながらもジリジリと眼前の男に近づいて行く。
そしてそれを迎い入れる男
そして英雄と男が対峙する
そして時間にして数十秒が過ぎた頃
「ドリヤャァァ!!」
先に動き始めたのは英雄の方だった。
日本刀を両手に持ち替え目にも留まらぬ速さで男に向かって斬りつける
「ハァ……愚かな……」
男はその全ての斬撃を交わすが
「その油断が命取りだぞ!」
最後の斬撃をし終わると同時に懐から針を投げる。そしてその針が男についた瞬間点火する。
「な……ぐぁ!」
男は微かに身を捩らせ視界を煙に遮られる。
いかに邪に染まった「冥獣王」とはいえノーダメージでは無かった。
そしてその隙を見逃す英雄では無かった。
「喰らえやー!!」
日本刀をまっすぐに構え渾身の力で振り下ろす
。
「グハッ!……」
日本刀は男を両断したはずだった、が
「グ……クソ!!」
刀は男に命中していなかった。
男の左腕が黒い靄のように広がり、その帳の中から1人の男が刀で英雄の刀を受け止めていた。
かつて「天魔王」と呼ばれ、罪もない人々を手にかけたその男の「闇」が英雄の剣を受け止めていた。
「そうだったなー、そういう能力あったなーー!!」
男を睨みつきながら手に力を込めるが剣はビクともしない
「これでチェックメイト」
男は小さく呟き男を蹴り飛ばす。
「グッ……」
人の物ではないその圧倒的な力に英雄は吹っ飛び壁に激突し、そして目を閉じた……
まだ思い出して下さらないの、あなた……?
「起きてリュート、おーきーてー」
突然誰かに肩を揺さぶられ慌てて飛び起きるリュート。
しかしリュートは声の主が誰だかわかると今度は彼女に肩を預け再び眠り始めた。
「もうーお客さんが来てるんだよー」
リュートの白い両頬を軽くぺちぺちしながら沙月がため息をつく
まぁまだ朝の六時だからしょうがないか、とつぶやきながら眠そうに目をこすっているリュートの手を引っ張りながら客人が待っている居間へと向かうのであった……
居間
居間では沙月に相談しに来た客人の少年と沙月がお茶を啜り、沙月の隣に座るリュートが置いてある茶菓子をパクパク口に運び、部屋の真ん中を半透明の少女がぷかぷか浮いていた。
「これは、どうゆう状況でしょうか…?」
「うーーーーん……」
数時間前
「あ、あのー、君は幽霊なの…?」
恐る恐る少年は空中をぷかぷかしながら彼の部屋を色々物色している少女に声を掛ける。
彼は生まれてこのかた幽霊というものに会った事がなく一度会ったら積極的に話をしてみたいと思っていたがいざとなると中々話しにくいのであった。
そんな感じで少女を眺めていると少女は本棚から一つの本を取りだす少年の目の前までよってきた。
「それは・・・外国語の単語帳・・・?」
その埃を被った本はまさしく外国語の単語帳であった。
小さい頃に親に買ってもらった物だが途中で放り出してしまい、それからながらく本棚の肥やしになっていたのであった。
「・・・・・・ここは・・・どこですか?」
少女の姿とは裏腹に大人びた声を発する。
案外中身は大人なのかも知れない
「えっ、ああここは僕の部屋だけど・・・」
多分そういうことじゃないと思う・・・
少年がそういうと少女はふるふると首をふり、窓の外を指さす。
「・・・?ああー、ここはただの田舎村だよ。特に特徴のない村だけど・・・」
少女の言葉の意図に気付いた少年は説明しようとするが少女は少年を見ずに窓の方を食い入るように見つめていた
「・・・分かった・・・ここが例の「あそこ」ならまずは現場に向かおう・・・」
少女はなにやらブツブツ呟くと壁を抜けて外に行ってしまった。
しばらく少年は唖然としていたが
「あっしまった!写真撮り忘れちゃった!ちょっ、待ってーーー」
少年は急いで部屋着のままカメラをぶら下げるながら外に飛び出した
無論親がその声で飛び起きたのは言うまでもない。
で今に至る
「・・・・・・て感じなんですけど・・・悪い幽霊には見えないんですけどね」
少年は言い終わると出されたお茶をすする
「でも・・・この子幽霊っていっていいのかなー?」
沙月は腕を組みながら考え込む
沙月が出した彼女の正体は「物の幽霊」だ
長い年月を経た物はやがて自分の意思を持つことがある。しろうねりのような妖怪がそれだ
母がいればなぁ、と沙月は思うがあいにく彼女は温泉旅行中だ。あと数ヶ月くらいしないと帰ってこない
「あのー、今のところあの子はなにも悪い事はしてないんですよね?」
「はっ、はい」
「なら後何週間か、うちの母が帰ってくるまでそちらで家に置いてもらえないですか?」
「え?」
「ね?」
「ええ?」
「ね?」
押し切られてしまった
まあいいんですけど、と溜め息をつきながら再度お茶を啜る少年
多少ぬるくなっていたがそのぬるさがいい加減にのどを潤してくれる
「本当にごめんさいね、力になれなくって」
申し訳なさそうに頭をさげる沙月
「でも何かあったらすぐに私のところに来てね」
「はいっ」
少し嬉しそうに答える少年
その顔は心なしか赤かった
「なーに赤くなってんのさ」
リュートはそんな少年をジーッと見ながら沙月の膝に座る
「あのね、あの女の子が沙月のこと呼んでたよ」
沙月が少女の方を見る
少女は両手に本を持ちながらフワフワ浮いて沙月の眼の前まで近づいてきた。
そして口を開く
「あの…この人って「例の事件」を起こしたっていう…」
少女はリュートを指差した
「例の事件って…なんのこと?」
心あたりのない沙月は首をかしげる
リュートはいつの間にか沙月の膝の上で寝息を立てていた
「……まあいいや、また来るから」
少女は少年の隣に来ると少年の肩を引っ張った
「うわっ、わかったよっ、じゃあまたお願いしますね沙月さん」
少女に引っ張られながら沙月に手を振る少年、やはりその顔は赤かった。
沙月もニコッとして手を振り返す。
そして完全に二人の姿が見えなくなると沙月はリュートを抱え寝床に戻った
「…む〜眠いよー」
リュートは目をこすりなが大きいあくびをする
「じゃあ今日は10時くらいまで寝ちゃう?、どうせ今日は神社休みだし」
沙月はリュートを布団におろし、隣の布団を押入れに片付けるとリュートの布団に入り込んだ。
「いい匂い…」
リュートは沙月のお香のような匂いを嗅ぎながら沙月に抱きつく
「ふふ、おやすみ」
沙月はリュートの頭を撫でながら眠りについた
なんかあまりイチャイチャ出来てないような気がする・・・次回からは二倍増しに挑戦してみたいと思います