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全力前進  作者: 兼好法師
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若きソルジャー

目の前は見渡す限り闇だ。

現時刻2235、多少の寒さはあるが幸いにも雨は降っていないため、体力の消耗は抑えられている。

雨が降ると体力が通常の2倍は消費する、その上寒さで身体が動かなくなる。

ザッザッザッっと、皆一定の対人間隔で前に進む。

SPが1600だったから、逆算しても約6時間はこの調子で足を運んでいる。

無駄に口を動かしたりしない。全員無言のまま歩き目的地に向かう。

坂になると、肺がきつくなる。

ハァ、ハァっと息が上がっているのが聞いて取れる。

皆苦しいのだ、眠気もある、中には足に豆ができている者もいるだろう。

足元が見えず、石ころに躓く者もいた。

だが、歩みを止めない。前に前に進む。

行進は40分、休憩を20分のペースで着々と進んでいく。

前の隊員からハンドサインがでた、腕を横に突き出し指を3つ出す。『休憩3分前のサイン』これを自分も同じ様にして後ろに送る。

このサインが来たら、自分の武器・装具を点検。手で触って有無をあたる。

それを後ろから前の隊員に回す、最後に先頭の班長に伝達しなければならない。

トントン、っと後ろから肩をたたかれ、小声で「異常なし」それに対し自分は親指を立て「了解」と気を紛らわす為笑顔で返す。

それぞれが点検の有無を伝達し終わった辺りで、もう1つのハンドサイン、腕を横に突き出し手は握る。『停止』やっと休めると、皆んなが一息つく。

まずは、小銃を降ろし脚をたて地面に置く。

肩に食い込み始めた背嚢を素早く、背中に面してる方を上にして降ろす。

後は装具を外し、半長靴を脱ぎ、靴下も脱ぎ蒸れた足を乾かすも良し。『休憩時は全力で身体を休めるべし』が班長の教えだ、皆は各人ごと身体をケアする。

コレでも皆初めての訓練からしてみれば、だいぶ様になっている。

最初は何も知らず、歩き方も、休憩の仕方も自分も含め良く成長したと思う。

最初の行軍は忘れられない『事件』だった。




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