昔の仲間たち
俺には三年前まで共に戦う仲間がいた。
臆病な性格、故に「最初から仲間多い方がいいんじゃね!」と始まりの街で適当にスカウトしたのであった。
【魔法使い クリスタ】 華奢な身体付き、金色の髪に碧眼の瞳が麗しい、何より胸が大きい!!心優しい性格。
【弓使い シルファ】 積極的な性格、黒髪ショートがよく似合う、ガンテツに気があるらしい。口癖は、ねえ。
【拳闘士 ガンテツ】 年中、上半身裸の筋肉バカ、見ているこっちが寒くなる、短期な性格。
【サムライ ハゲタカマル】 容姿が整って格好いい、普段は落ち着いているが時々情緒不安定になる、名刀、霧斬を所持している、通称 ハゲ丸。
4人の仲間たちは日々、エルトのスライム討伐に駆り出されていた……が。
「ねえ? いい加減、魔王倒しに行かない?」
「ああそうだな、いつまで始まりの街でスライム倒してりゃいいんだよ」
「俺も同感だ……」
「待ってよ皆、エルトはまずレベルを上げてから安全に進もうって……皆の事心配しているんだよ?」
「ちょっと考えてみろよ、俺達、既にレベル30超えてるんだぜ? なのにスライムばかり狩って半年だぜ? 半年!? 気が狂わない方がどうかしてるぜ!!」
「なあエルト……お前いつまでここでスライム倒しているつもりなんだ……?」
「えっ? 99レベルになるまでだけど?」
「…………」
「悪い、俺一人で魔王倒してくるわ」
そう言い残しガンテツは後を去った。
――数日後
「ねえ、ガンテツ戻って来ないよ?」
「あいつの事だ、本当に一人で魔王倒しに行ったのかも知れないな……」
「そんな……一人でなんて絶対無理だよ……」
「ねえエルト、今からでも遅くないからガンテツの後、追いかけよう?」
「行きたきゃお前だけで行けば?」
「………」
無言のまま、シルファは去っていった……
――そして更に数日後
「二人のことが気に掛かる……俺も後を追う……」
「そんな……ハゲ丸まで居なくなったら私どうすれば……」
「心配するな……必ず二人を説得して戻ってくる……」
「エルト! エルトも何か言ってよ!! ハゲ丸までいなくなっちゃうよ!?」
「どうぞご自由に」
「……」
「じゃあな……必ず戻る……」
ハゲ丸はフラグをビンビンに立て、去っていった……
――その翌日
「エルト、皆、行っちゃったよ……今からでも間に合うよ……」
「俺は勇者として死ぬ訳にはいかないんだ! だから99レベルになるまでは絶対ここを離れない!」
「…」
「ごめん……私、皆が心配なんだ……じゃあね、さよなら……」
心優しいクリスタは目を虚ろにしながら去っていった……
――ひのきの棒を引きずりながら些細な昔のことを思い返していると前方に街が現れた。
どうやら魔物に占拠されていると思われる様子だったが、めんどくさいのでスルーした。
――数分後、勇者として流石にそれはまずいと思い直し後に引き返した。
【ファイアー】しか使えないエルトだがステータスがチートなので十数匹の魔物は抵抗する間もなく全滅するしかなかった。
「まあ考えても見れば勇者が始まりの街に三年も居れば魔物が黙っていないのは当然だよなぁ……」
牢屋を確認すると街の住民に紛れて最後に去っていったクリスタが捕まっていた。
「よお!クリスタ、久しぶり!」
勇者の問いかけにクリスタは蒼白した顔で視線をそらす。
「ひっ……殺さないで……御願いします……」
外見が変わっているので俺がエルトだとわからないのだろう。
怖がるクリスタに転移石を渡し先を急ぐ事にした。
――先を往くこと数日後
またしても魔物に占拠された街を発見する。
「ちょっと……魔物、仕事しすぎじゃね……?」
当然、原因は俺が現れるのが遅れたことによる結果なので何も言えない……
魔物の群れに一匹、禍々しい奴が紛れ込んでいたが反撃の一つも出来ずあっけなく壊滅した……
嫌な予感はしていたが案の定、牢屋を確認するとハゲ丸が捕まっていた。
「よお! ハゲ丸! 元気か!?」
クリスタ同様やはり俺のことは分からない様子だった。
「我が人生に一片の悔いなし!!」
袖に隠し持っていた短刀で切腹しそうになる。
このままでは血を見るはめになるので慌てて抑え込み転移石を押し付け道中に戻る。
――更に往くこと数日後
「ちょ……またかよ……」
くどいようだがまた見つけてしまった……
しかし、魔物の情報網は意外と早いらしく街は既にもぬけの殻だった。
「どうせ、ガンテツとシルファが居るんだろ……」
一応、牢屋をこっそり覗いてみると当然のことの様に、二人は捕まっており、イチャイチャしていた。
「ねえ……ガンテツ、もっとキスして……」
「こ……こうか……?」
「ねえ、ガンテツ……好き、好き、大好き……」
「シルファ、俺もだよ…」
「……牢屋で何やってんだよ……こいつら……」
「ねえ、ガンテツ……もっとぉ……」
「あ、ああ……」
――延々と続きそうなので「見なかったことにしよう」と強く心に決め、爆殺☆してやりたい気持ちをグッと堪え、ガンテツとシルファは放置し魔王城へ向かう。
「ちっ……リア充、死に晒せ」
――ようやく到着