藁で炙ると香ばしい
薄暗い中、目が覚めた。
おじぃは厚手の作業着を着ているが俺は薄いシャツにおじぃのお古でぼろぼろ作業ズボンだ。
何が言いたいか?ただ寒いだけだ
「おじぃ、また起きてたの?」
「これが全然寝れないんだよ。なんだかずっと元気でさ、今ならお前にも勝てるな」
は?何の話だよ
「最初からおじぃには勝てないよ、調子乗ってると腰ヤるよ」
「今日も余裕で歩けるよ、もう少ししたら行くぞ。顔でも洗ってこい」
川を下りやっと平地らしい場所まできた。相変わらず木々が茂っているが、あまり疲れなくなった。
まだ川は続いてはいるがどうしたものか?
「おじぃ、このまま下流を行くの?」
「迷うなぁ、地球と違うなら水場の近くって常識すら通用しない可能性もあるし、元々この辺りに集落や町が無いって事もある。道らしき道もまだ見てないしな」
結局は太陽が一番高くなるまで下流へと下った。
「よし、下るの止めよう」
いきなりかよ。まぁおじぃだしな。
「川は南東に伸びてる、だから南西に進んでみよう
」本当に大丈夫か?
「一応理由聞いとく」
「勘に決まってるだろ」
知ってたよ。
結果から言うと木々を抜け出し人が通った形跡のある平原に出られた。さすがおじぃ、俺は信じてた。
「やっぱ冴えてるな俺!」
はしゃぐなよ、おじぃ。俺の足も軽かった。
「このまま行けば集落に当たるかな?」
「当たるとは思うが歓迎されるとは限らないぞ」
そうなんだよな、捕まるパターンは嫌だな。
たった2日、人に会えないだけでこんなに参ってるとは思わなかった。
「人が居る」
おじぃが言った。
僕にはまだ見えなかったが叫びそうになる口を押さえ泣いていた。
ようやく見えて来た、さすがに泣き顔を見せるのは恥ずかしいので心を落ち着かせる。
「おじぃ、話しかける?」
「少し会話を聞きたいな。通りすぎる振りをして会話聞く、言葉が分かるなら話しかける。」
「分からない時は?」
「いい奴そうなら話しかける。」
もう任せた!俺には無理。
向こうから三人歩いてくる、一人は女性のようだ、全身白っぽいローブを着ている。イメージ的には白魔導師。
ああ、やっぱ地球じゃないのか。
残りの二人は滞剣していた。
こちらに気付いたのか、会話は聞こえ無い。
不味い、おじぃどうするよ!
「すいませーん!」
はい、終わったな。
三人はこちらを凝視している。不味いって!
三人にゆっくりと近づいて近所の知り合いに声をかけるかの様子のおじぃ。
「ちょっとお尋ねしたいんですけどね、実は道に迷ってしまって…
言い切る前に二人が剣を抜いた
何か怒鳴っているが全然分からない、多分近付くな的な意味だろう。俺は水の入ったポリタンクを持ったまま動けない。
おじぃは何故か笑顔のままで会話しようとしている。
白魔導師っぽい人が何かを言っている、何故かそいつも笑顔だった。
二人の護衛っぽい人はやっと剣を納めてくれた。
「いやぁ、怪しくて悪いね。ちょっと迷子で困ってるんだよ。町やら集落まで、連れてってくれんかな?」
おじぃ、理解出来ないだろ、多分
おじぃは自分の顔を指差し
「うしお」
俺を指差し
「たつお」
白魔導師が復習している
「ウシオ、カツオ」
なるほどねそう来たか。