石に触って三秒
おじぃは凄い、なにが凄いのかと聞かれたらとにかく凄いとしか言えない。例えいきなり知らない場所にぽっぽり出されても居間でのんびりとしている様な表情だ。
俺の家は島の小さな集落にある。高校生になると寮に入るのでたまにしか帰らないし帰る用事もあまり無い。だが今日は年に一度の大事な日だ。
集落から少し外れた山に人の形をした石がある。特に崇めたり祀ってたりはしていないが俺の家はその石を毎年掃除するのだ。理由は昔聞いた気もするが忘れた。
「暑いなー」「おじぃの方が暑いけど」「そんな厚着するからだよ」そんなこんなで石の前に到着。
「おじぃ、なんか石割れてね?」
「ん?どれどれ、割れそうだなぁ。一応擦り過ぎないぐらいでやるか」
「おじぃ、なんか光ってね?」
石がゆっくりと発光した。
「おい、たつ。起きろ」
「ん…おじぃ、俺寝てたのかよ」
「アマルの石が光ったからなのか分からんが寝ていたらしい」
「今さらだけど石に名前あったのかよ」昔教えただろうと返された。
「とにかく一度帰るぞ、なんだか山の雰囲気がおかしい」俺とおじぃは山を下った。
「おかしい、道が無い」
と、おじぃが言うがさすがに俺も分かっていた。
集落の方角へ歩いているがそれらしき姿も形も無い「おじぃ、どうなってんだろ?」
「たつ、一度石まで戻ってみるか」
石まで戻るとおじぃが言った。
「たつ、気付いただろ?気温も湿度も若干違う。それに植物もな。まだ動物は見て無いからなんとも言えんが知らない動物も居るかも知れない」
そういえばと続く
「石の割れ目が無くなっている、どういう事かは分からないが、ここは知らない土地らしい。さて、どうしようかね?まぁいいや、とりあえずしょんべん」いや、とりあえずしょんべんじゃねーだろおじぃ。
「おじぃ、とりあえず動くの?」
「ふぅ、 いや、今日はもうダメだ明日の朝から動こう。なんか食うのあるか?」
「一応おばぁの弁当はあるけどどうする?」
「半分食って半分は明け方に撒いてみるか、知らない動物が食いつくかもしれん」
「分かったまずは火をおこすよ。おじぃは調べものよろしく」
「少しだけ周りを探ってみるか、警戒はしとけよ」
「大丈夫だよ、鉈もあるし」
おじぃが探りに行ってる間に考えたが情報が無さすぎて駄目だな、石は全く一緒だと思うが石を割れば帰れるのか?割れて帰れなかったら洒落にならない。この石が何なのかを調べなければ、まだ割るには早いな。
しばらくしておじぃが帰って来た。
「おかえり、どうだった?」
「いくらかの果実があったが食べられるか分からん、鳥がこの時間には居ないし明日だな」
「あのさ、おじぃ、いくつかあり得そうな事考えてみたんだけど聞く?」
「ん?言ってみ」
「まず一つ、今居るのは日本のどっかの山」
「多分それは無いな植物が日本のものじゃない」
「うん、多分日本じゃない。二つ、外国のどっかの山。おじぃはこれだと思ってるね」
「そうだと思ってるけどな、違うのか?」
「違ってなきゃ嬉しいんだけどさ、もしかしたら、もしかしたらだけど。 異世界とか別の惑星とかだったらどうしよう?」
「へ?異世界?惑星?うーん、もしそうだとしたら不味いな。不味いどころじゃないな。おばぁに怒られる」
いや、そこの問題かよ。
「まだ分からないけどね、とりあえず朝まで耐えなきゃ」
「たつ、お前先に寝ろ。明け方に起こす」
「おじぃ寝ないの?さすがに歳だし」
「二十年早いわ、まぁ正直に言うとな、何故か体が軽いんだよ。今日は大丈夫だ、寝ろ」
「へぇ、分かった。おやすみ」
明日がどうなるか不安だ。
おじぃが居なかったら一人でびびって泣いてたかも。危険が無ければいいなぁ。