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シューデルグの世界

なんか目が合うんだけど気のせいだと思いたい。

作者: 董凛






私、ココリエッタ・アルスは現在非常に気まずい思いをしています。



いや、いきなりなに言ってんだと思うかも知れないが目の前の状況を見れば誰でもそう思うだろう。


なんといったって目の前には一人の女子生徒に数人の男子生徒が吐き気がしそうなほどの甘い言葉を囁いているのだから。

自分で行動しといて今更、尚且つ毎回思うけど。


「(何で私みたいな普通の人間があのハーレムを監視してるんだろ。)」


甚だ疑問だ。





そもそものキッカケはハーレムの中心にいる女子生徒、レイシア・エンハートが発した言葉を聞いたからだ。


「うふふっ。やっぱり私はヒロインなのね!炎帝は俺様な態度で私を独占しようと力づくで誘うし、水帝は綺麗な顔と甘い言葉を囁き腹黒キャラらしく私に群がる男達を排除しようとするし、風帝はチャラチャラして女の取り巻きを作っていたけど私に会い一目惚れして他の女を切って私に愛を伝えてくれるし、地帝は教師だけど私を手に入れるために大人な雰囲気とセクシーな声で誘惑してくるし、光帝は控えめな性格で女性を苦手にしているけどどうしても私が欲しいのか照れながらも一生懸命アピールしてくるし、闇帝は無口無表情で光帝と同じく女が苦手だけど私に対してだけには微笑み低いけど優しい声で私を守ってくれるし、隠しキャラの全帝はまだ出てきてないけどきっと私に群がる男達に嫉妬して我慢できずに出てくるわ。あぁ、ヒロインな私。天使級に可愛くて優しい私って罪!」



何言ってんだコイツ。頭おかしいだろ。


お手洗い場で一人で恍惚としながらマシンガントークを繰り出す彼女は、正直言って気持ち悪かった。

そしてその場にたまたま居合わせた私の運の悪さに呪った。


彼女が逆ハー狙いの悪性転生者だと気付き絶望した。もし彼女が私の尊敬する先輩達に接触してしまったら相当な被害が出るんだろうなと現実逃避をしたくなってしまった。



彼女は知らないだろう。彼女以外、すなわち私や先輩達も転生者であり先輩達の婚約者は攻略対象者なのだと。その攻略対象者は婚約者を溺愛していて万が一手を出してしまったら恐ろしい事になるだろうことを。


学園を破壊してはならないと、そう思った私は彼女を監視しようとストー・・げふん。見張っていたら前触れもなく風帝が此方を見、私と目があった。

瞬間、私は脱兎のごとく逃げ出した。


「何でっ、<気配遮断>してるのに毎回目が合うのっ!?」








「あらら。それは大変だったねぇ。ココ紅茶でも飲んで落ち着こう?」

「甘いお菓子もありますよココちゃん。」

「ううっ。ありがとうございますアリル先輩、フィア先輩。」


私が最も尊敬するアリンルシア・ウェルティ先輩とフィアナ・エンハート先輩に毎度の事ながら愚痴、もとい泣きつく。

お二人はこの学園で有名な<姫>の称号を持つ方達で私と同じく転生者だ。スペックが違いすぎるけども。

私自身は貧乏貴族であるアルス男爵家の出身。顔も体も内面も平凡で、自慢できることといったら平均より高い魔力と諜報能力だけだろう。だからこそハーレムを監視しているのだけど。

そんな平凡を地でいく私を先輩や、先輩の友人(お姉様方)は可愛がってくれる。正直言ってすごく嬉しい。


「うっうぅ。何で毎回あの男と目が合うのっ!あの男のせいで監視を中断するはめになってるのに!」

「でも風帝君の事は好きなんでしょ?」

「ゲームだった時は確かにお気に入りでしたけど~!」


そうなのだ。あの女性に対する態度を除けば風帝・・・ゼイン・ルーガレイドは私の好みドンピシャリ。ただそれはゲームだったからであって、現実となった今では関わりたくない存在。なのに監視している時必ず彼と目が合う。

思えば初めから目が合っていたような・・・。いや!気のせいだ!


「気のせいでしょうか?」

「気のせいじゃないと思うよ?」

気のせいです!




そんな会話があった数日後。私はハーレムの監視を休み、図書室に足を運ぶ。私が好きな作家が書いている本の最新作が入荷したと聞き(これでも読書家なんです。)ウキウキとその本が置いてある場所に行き、そこにいたものを見た瞬間私は固まった。

そこにいたのは今最も会いたくなかったゼイン・ルーガレイド。彼はその長い足を組み、とろりと甘やかな瞳は瞼の中に閉じ込められている。つまり寝ていた。


「(なっ何で!?何でこんなところにこの人いるの!?いつもみたいにヒロインの側に居るんじゃないの?そうじゃなくても女のひととかっ!)」


予想外の事態にその場でグルグル考え込んでると目の前の麗しい男性の瞼がふるりと揺れた。

起きる!と思った私はその場からさっと退いた。後ろを振り向く瞬間に男と目が合った気がしたけど気のせい。絶対気のせい!


そんなことばかり考えながら図書室から出た私は彼がずっと見ていたことに気づかなかった。そして知らなかった。




「へぇ?ずっと見られてたのは知ってたし、アレを見てるなんて変わった女子だと思ってたけど近くで見たら案外可愛いじゃん。あの女に絡むのもそろそろ飽きたし、次はあの子かな。」




ニヤリと笑い獲物を見るような目で私が去った扉を見つめてそう呟いていたことを。





ココリエッタ・アルス

16歳。

黒髪橙目。

どこにでもいる少女。ただし小さい背とちょこちょこ動く様から小動物的扱いされお姉様方から大人気

得意魔術は、気配遮断、変化<獣>。

あの後必死に逃げ隠れたが、見事に捕まりヒロインの比ではないぐらいの甘い言葉と只でさえ好みの顔が近くにあるので本人陥落寸前。




ゼイン・ルーガレイド

17歳。

金茶髪緑目。

女性受けの甘めな顔と瞳。スタイルはモデル体型。

攻略対象者で「風帝」、生徒会会計。

得意魔術は、風、空間操作。

表向きは女性を虜にして彼女達を自分の取り巻きにしているが、裏では王国に属する諜報部隊「影」の一員として現在「炎帝」である王子の護衛と学園内の情報収集をしている。取り巻いている女子生徒は彼の協力者。ココの事は警戒対象のヒロインに取り付き監視しているときに気付き何気なく見ていたが、小動物みたいな動きをするココに和み、ヒロインの情報を粗方調べあげた為、本格的に捕獲しにかかる。



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― 新着の感想 ―
[良い点] すっごく可愛くて、すんなり入ってくる物語です♪ [一言] このシリーズの物語、大好きです♪ とくに人形姫の物語!! できれば 長編で もっと突っ込んだ話が読みたいです! …
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