表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたの為に、ビジュを良くしてる訳じゃない  作者: 櫻木サヱ
風間たいちという揺さぶり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/13

心を試すような笑顔

翌日。

 桐谷つかさは珍しく、いつもの時間よりさらに早く家を出た。

 理由はひとつ。

 誰にも会いたくないからだ。


 昨日の自分の反応は、どう考えても普段のつかさらしくなかった。

 れんの優しさに揺れ、たいちの言葉に戸惑い、まこに見抜かれ、最後は逃げるように帰った。


 鏡を見るたびに思う。

 自分はこんなにも弱かったのかと。


 学校に着いたのは開門直後。

 校舎に入ると、まだほとんど人がいない。

 その静けさにほっとしながら昇降口で靴を履き替えていると、後ろから声がした。


「桐谷さん、早いね」


 心臓が跳ねる。

 振り向くと、たいちが立っていた。


「……なんで、あんたも早いの」


「昨日さ、色々気になったから」


「気になるって、なにが」


「桐谷さんが。かな?」


 軽い。

 だけど、その軽さを無理に作っているようにも見える。


 たいちはゆっくり歩きながら続けた。


「昨日、一人で帰るって言ったときの顔さ……ちょっと無理してる気がした」


「別に無理なんてしてない」


「してるよ」


 即答だった。


 つかさは言い返そうと口を開いたが、言葉が出ない。

 自分でも無理をしていたことを認めざるを得ないからだ。


「桐谷さんって、完璧だよね。髪も服もメイクも、全部隙がない」


「………だからなに」


「そういうの、誰のため?」


 その問いかけは、図星すぎて胸が痛くなった。


「自分のため」


 つかさは淡々と答えた。

 ほんとうの答えから目をそらすように。


 たいちは少し微笑む。


「うん。たぶんその答え、半分は本気なんだと思う。でも残り半分は……誰かのためでしょ?」


「……!」


「違う?」


「違う」


 反射的に否定した。

 だが、その声の震えは自分が一番よく分かっている。


 たいちは追撃するようなことは言わず、むしろ歩幅を合わせて優しく言った。


「桐谷さんさ、無理してる顔より、ちょっと困ってる顔のほうが魅力あるよ」


「意味わかんない……」


「あ、褒めてる」


 そのやり取りを廊下の角から見ている影があった。


 如月れんだ。


 つかさがたいちと二人で歩いているのを見つめるその視線は、明らかに険しかった。


 つかさはそれに気づいていない。


 たいちは気づいていた。


 そして、口の端をわずかに持ち上げた。


「ねえ桐谷さん、放課後ちょっとだけ時間ちょうだい」


「……なに」


「話したいこと、ある」


 その一言が、つかさの胸をざわつかせた。

 断りたかった。

 でも、昨日の自分が揺れたままなのも事実。


「……少しだけなら」


「うん。ありがとう」


 れんの表情は、遠くから見ていたとは思えないほど荒れていた。


 その日が、つかさにとって転機になるとはまだ知らずに。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ