気づきたくない気持ち
放課後。
つかさはまこに捕まり、ふたりで帰る予定だったが──まこが急に部活の呼び出しを受け、そのまま走っていってしまった。
一人になったタイミングで、たいちが近づいてくる。
「桐谷さん、一人?」
「まこが急に呼ばれて」
「そっか。じゃあさ──」
たいちが言い終わる前に、別方向かられんの声が飛んできた。
「つかさ、今日は俺が帰るって言ったよな」
「言ってない!」
「言った」
「言って、ない!」
「……じゃあ、言う。つかさ、帰ろ」
たいちが笑う。
「如月くん、強いね。桐谷さん、どっち?」
「どっちも選ばない!」
即答するつかさに、二人は驚く。
「……一人で帰る。今日はそういう気分」
「つかさ?」
「つかささん」
「ついて来ないで!」
つかさは早歩きで校門を出た。
三人の視線から逃げるように。
心がぐちゃぐちゃだ。
朝から何度も揺さぶられ、限界だった。
帰り道、夕暮れの影が長く伸びていく。
「……なんで、こうなるわけ」
つかさは自分に問いかける。
れんに綺麗だと言われて苦しくなる。
たいちに褒められて戸惑う。
二人の視線が自分に向くたびに心が揺れる。
自分のためのビジュ磨き。
そう言い聞かせてきたのに。
結局、どこかで
れんに見捨てられないように
誰かの視界から消えないように
“そうしているだけなのかもしれない”と気づいてしまう。
「……ほんと、めんどい」
その帰り道を、れんが遠くから見守っていたことを、つかさはまだ知らない。
そして、風間たいちもまた──
つかさの背中に興味深そうな視線を向けていた。




