その優しさは、誰に向いてる?
昼休み、つかさが購買でパンを買って戻ろうとすると、れんが待っていた。
「つかさ、ちょっといい?」
「なに」
れんは人の少ない廊下まで誘導し、落ち着いた声で言った。
「風間のやつ、なんか距離近くない?」
「……別に普通でしょ」
「普通じゃないだろ。初日だぞ?」
「だからなに。れんには関係ないじゃん」
「関係あるよ」
「ない」
れんはそこで言葉を詰まらせた。
言いたいことが喉まで来ているのに、なぜか言えない。
それがつかさには妙にもどかしい。
「……いや、俺はただ心配してるだけだって」
「なんで?」
「つかさ、けっこう他人に無防備なとこあるから」
「はあ!? どこが!」
「そういうとこ」
れんの視線が柔らかくなる。
「つかさ、綺麗だけどさ、綺麗なだけじゃないから。放っといたら変なやつ寄ってくるだろ」
「……」
つかさは一瞬だけ言葉を失った。
綺麗と言われて嬉しいわけじゃない。
でも、れんが言うその“綺麗”は、どこか他の人と違って聞こえる。
胸がざわざわする。
「だから、別に……風間のことが気になってるとかじゃないけど」
「気になってるじゃん」
「なんでそうなるのよ!」
「昨日の帰り、一緒に帰ってただろ」
「道案内しただけだったし!」
「……じゃあ、明日は俺が一緒に帰るから」
「は?」
「それで解決」
「解決してない!」
れんはまっすぐつかさを見た。
「つかさが誰と仲良くなるのか、気になんないと思う?」
「なんで、れんが気にするの」
「……」
れんはまた言葉に詰まった。
その沈黙が余計に、つかさの胸を苦しくする。
空気を破ったのは、まこだった。
「はいはい二人とも、ここ学校ねー? イチャイチャは自宅で!」
「イチャイチャしてない!」
二人同時に声が重なり、まこが笑う。
「はいはい、否定のタイミングが同じなのが“それっぽい”んですけど?」
「違う!」
「違う!」
またも重なり、まこは腹を抱えて笑いだした。
その光景を、少し離れた位置でたいちが見ていた。
どこか探るような目で。




