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あなたの為に、ビジュを良くしてる訳じゃない  作者: 櫻木サヱ
誰のためでもない

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6/13

その優しさは、誰に向いてる?

昼休み、つかさが購買でパンを買って戻ろうとすると、れんが待っていた。


「つかさ、ちょっといい?」


「なに」


 れんは人の少ない廊下まで誘導し、落ち着いた声で言った。


「風間のやつ、なんか距離近くない?」


「……別に普通でしょ」


「普通じゃないだろ。初日だぞ?」


「だからなに。れんには関係ないじゃん」


「関係あるよ」


「ない」


 れんはそこで言葉を詰まらせた。

 言いたいことが喉まで来ているのに、なぜか言えない。

 それがつかさには妙にもどかしい。


「……いや、俺はただ心配してるだけだって」


「なんで?」


「つかさ、けっこう他人に無防備なとこあるから」


「はあ!? どこが!」


「そういうとこ」


 れんの視線が柔らかくなる。


「つかさ、綺麗だけどさ、綺麗なだけじゃないから。放っといたら変なやつ寄ってくるだろ」


「……」


 つかさは一瞬だけ言葉を失った。


 綺麗と言われて嬉しいわけじゃない。

 でも、れんが言うその“綺麗”は、どこか他の人と違って聞こえる。


 胸がざわざわする。


「だから、別に……風間のことが気になってるとかじゃないけど」


「気になってるじゃん」


「なんでそうなるのよ!」


「昨日の帰り、一緒に帰ってただろ」


「道案内しただけだったし!」


「……じゃあ、明日は俺が一緒に帰るから」


「は?」


「それで解決」


「解決してない!」


 れんはまっすぐつかさを見た。


「つかさが誰と仲良くなるのか、気になんないと思う?」


「なんで、れんが気にするの」


「……」


 れんはまた言葉に詰まった。


 その沈黙が余計に、つかさの胸を苦しくする。


 空気を破ったのは、まこだった。


「はいはい二人とも、ここ学校ねー? イチャイチャは自宅で!」


「イチャイチャしてない!」


 二人同時に声が重なり、まこが笑う。


「はいはい、否定のタイミングが同じなのが“それっぽい”んですけど?」


「違う!」


「違う!」


 またも重なり、まこは腹を抱えて笑いだした。


 その光景を、少し離れた位置でたいちが見ていた。


 どこか探るような目で。


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