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あなたの為に、ビジュを良くしてる訳じゃない  作者: 櫻木サヱ
すれ違いの輪郭

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22/23

近くにいるのに遠い

朝の校舎は、普段よりも人であふれていた。

文化祭の本番を迎え、各クラスの生徒や来校者の声が廊下に響く。


つかさは少し緊張した面持ちで教室に入る。

昨日までの準備の成果が目の前に広がっている。

色とりどりの飾り、整ったポスター、並べられた椅子や机。

全てがクラスの雰囲気を鮮やかにしていた。


「おはよう、つかさ」

背後から声がして振り返ると、れんが立っていた。

「おはよう。今日、頑張ろうね」

「うん」

小さく頷く二人の間には、昨日よりも自然な距離感があった。



クラスの出し物は、手作りのお化け屋敷風カフェ。

来校者に軽食とドリンクを提供しながら、少しだけ演出も楽しめる企画だ。

つかさはカウンター側、れんは接客や注文取りを担当することになっていた。


「準備、できた?」

「ほぼ。れんは?」

「大丈夫、後は俺たち次第だ」

互いに安心できる視線を送り合い、二人は自然に息を合わせる。


開場のベルが鳴り、来場者が一斉に教室へ入る。

つかさは笑顔を作りながらオーダーを受け、ドリンクを手渡す。

れんは手際よく、同じくドリンクや軽食を提供しながら、時折つかさと視線を交わす。


「……れん、今、手元大丈夫?」

「うん、心配するな」

短くても、こうして互いを気遣うやり取りが、二人の間の空気を柔らかくする。



途中、混雑の波が押し寄せ、二人の手が偶然触れる。

お互いに少し息を飲むが、笑顔でやり過ごす。

緊張と高揚が入り混じった瞬間は、なんとも言えないドキドキ感を生む。


「つかさ、ちょっと手伝ってくれ」

れんが差し出したトレーを受け取り、つかさは自然に協力する。

「ありがとう、助かった」

「お互い様だろ」


何気ないやり取りでも、二人の間には信頼と安心感が育っていた。

来場者の楽しそうな声や笑顔が、二人の頬にも自然に笑みを生む。



午後になると、クラスメイトたちも交代で休憩を取る。

まこや木嶋がやってきて、二人に声をかける。

「お疲れ!二人とも手際いいな」

「ありがとう、でもまだ大丈夫だよ」

つかさは軽く息を整えながら笑顔を返す。


れんも少し微笑み、つかさの方を見て小声でつぶやいた。

「……一緒にやると、なんか安心するな」

つかさは心臓が跳ね、顔が少し熱くなる。

「私も……同じ気持ち」


二人の間に、言葉にせずとも互いの気持ちが届く瞬間があった。

互いの存在が支えとなり、緊張も疲れも忘れさせる。



文化祭終了間際。

教室にはまだわずかに来場者が残り、片付けが始まっていた。

「終わったね」

「うん……でも、楽しかった」

つかさはそう言いながら、れんの方を見た。


「ありがとう、れん。手伝ってくれて」

「俺もありがとう。つかさが隣にいてくれたから、頑張れた」


小さな言葉の交換に、二人の胸には温かいものが広がる。

手を握るわけではない。肩を寄せるわけでもない。

だけど、互いを支え合った時間は確かに存在し、二人の絆を深めていた。


夕陽が校舎をオレンジ色に染める中、つかさは小さくつぶやく。

「明日からも、頑張れる気がする」

れんも微笑んで頷いた。

「俺もだ」


文化祭を通して育まれた二人の距離は、少しずつ、確かなものになっていった。

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