気づかない嫉妬
文化祭前日、教室には独特の高揚感が漂っていた。
飾りつけやポスター、椅子や机の配置など、最終確認をする生徒たちの声が賑やかに響く。
つかさはクラスの掲示板の前で、最後の飾りの位置を確認していた。
「ここ……この色の紙をもう少し上にした方が目立つかな」
「それなら、こっちの方が映えると思うよ」
後ろから聞き慣れた声がして振り返ると、まこが手伝ってくれていた。
「ありがとう。まこ、さすがだね」
「いやいや、二人で頑張ってきた成果だから」
ふと教室の端を見ると、れんがポスターを手にして立っていた。
二人の目が合う。少しの間沈黙があった後、れんが小さく口を開く。
「……ここ、こうした方がいいと思う」
手に持っていたポスターを指さしながら、れんは提案する。
つかさは驚きながらも笑顔で頷く。
「ありがとう、れん。確かにこっちの方が見やすい」
二人が作業に集中している間、クラスメイトたちが周りを取り囲む。
「さすがだな、桐谷とれん。コンビ最強」
「俺も手伝うぞ」
モブの声に、つかさは少し恥ずかしそうに笑う。
「二人とも息ぴったりだな」
「うん……でもまだ、微調整必要だね」
れんの横顔が、夕陽に照らされて少し赤く見えた。
つかさの胸は、思わず高鳴る。
⸻
作業の合間、つかさは廊下の窓から外を見た。
夕陽が校庭の木々を黄金色に染め、文化祭当日への期待感がじわじわと湧き上がる。
「明日……緊張するな」
小さくつぶやいたその声に、れんが耳を傾ける。
「大丈夫だ。俺も緊張してるけど、桐谷がいればなんとかなる」
つかさは恥ずかしさで視線をそらす。
「そ、そうかな……」
「うん、絶対だ」
れんの真剣な声に、つかさは少し安心する。
「じゃあ、最後の飾りつけ、二人でやろうか」
れんが笑顔で提案する。
つかさも小さく頷き、二人で協力して最後の作業を始めた。
手が触れることはなくても、互いの距離感は自然と近くなっていた。
⸻
夕方になり、作業はほぼ終わる。
クラスメイトたちも一息つき、教室内は和やかな雰囲気に包まれる。
「これで完璧だな」
「うん、頑張ったね、みんな」
まこが声をかけ、他のモブたちも笑顔で応える。
つかさとれんは肩を並べて座り、静かに教室を見渡す。
「……なんか、達成感あるね」
「うん」
その瞬間、れんがつかさの方を見て微笑む。
「明日、楽しもうな」
つかさも微笑み返す。
「うん、楽しもう」
夕陽が二人の影を長く伸ばす。
言葉少なにしても、互いの存在を確かめ合える時間。
文化祭を前に、二人の関係は自然と温かく、少しだけ近づいていた。




