嫉妬の正体
文化祭準備の時間が長くなるにつれ、つかさとたいちの距離は自然と近づいた。
たいちは飾りつけのセンスがよく、つかさの作ったデザイン案を褒めるたびに、つかさの表情は少しずつ柔らかくなる。
「桐谷さん、色のバランスめっちゃ良いよ」
「……ほんと?」
「うん。誰が見てもそう思う」
たいちのその言葉は、見た目だけじゃなく“作品の良さ”を拾ってくれる、つかさにとって新鮮な優しさだった。
一方、教室の隅からその様子を見ている如月れんは、顔に出さないようにしても目つきが険しくなる。
「……なんであいつ、あんなに桐谷と楽しそうなんだよ」
同じ班の男子が苦笑して言う。
「おまえが話しかけりゃいいだろ」
「いや、別に……」
「別にって顔じゃねぇぞ」
れんは否定するが、視線はずっとつかさに引っ張られたまま。
本人は自覚していない。
けれど周囲には、とっくに分かっていた。
れんは嫉妬していた。
文化祭準備中、たいちがつかさの髪についた紙片を取った瞬間。
れんは反射的に立ち上がった。
「桐谷、それ……」
「ん?」
「いや……なんでもない」
何も言えずに戻るれんが、悔しそうに眉を寄せる。
つかさはその視線に気づきながらも、どんな意味なのか分からず動揺するだけだった。
「れん、ちょっと荒れてない?」
帰り道、まこがつかさに耳打ちした。
「今日のれん、視線めっちゃ刺さってたよ」
「刺さってた……?」
「うん。たいちと話してるときのつかさ、ずっと見てた」
つかさは胸がざわつく。
れんはそんなに自分を気にする理由なんてない。
でも、あの視線は確かに“何か”を訴えていた。
その“何か”が分かってしまいそうで、つかさは怖かった。




