放課後の誘い
放課後。
つかさは誰よりも早く帰り支度を済ませた。
たいちに呼ばれてはいるが、行くべきかどうか迷っていた。
しかし、迷っている時間も与えないようにたいちが教室に入ってくる。
「桐谷さん、行こ?」
「……少しだけ」
たいちは笑い、つかさを連れて校舎裏へ向かう。
夕陽が差し込み、影が長く伸びる。
人目が少ない場所につくと、たいちが口を開いた。
「桐谷さんってさ、なんか無理してる気がするって言ったじゃん?」
「言ったね」
「やっぱり、そうだと思う」
つかさは心臓が跳ねるのを感じる。
「別に無理なんてしてないってば」
「してるよ。俺、感覚鋭いから」
「自分で言う?」
「うん」
たいちは少し間を置いてから、真剣な目を向けた。
「桐谷さんさ、誰のために綺麗でいようとしてるの?」
「……自分のため」
「ほんとに?」
「……ほんと」
つかさはまっすぐ答えた。
でもたいちは、一歩も引かない。
「じゃあ、俺が言っても平気?」
「なにが?」
「桐谷さん、好きだよ」
「…………は?」
言葉の意味を理解するまでに十秒かかった。
胸が跳ね、思考が止まり、呼吸が浅くなる。
「いや、告白とかじゃない。今すぐ付き合ってとかも言わない。でも──」
たいちは続ける。
「桐谷さんを見てると、何か守ってあげたくなる。綺麗で強そうなのに、ほんとは誰より無防備だから」
「……だからそんな勝手なこと言わないでよ」
「勝手でも、嘘じゃない」
つかさは混乱していた。
たいちの言葉が心を揺らす。
でも、それ以上に気になることがあった。
れんはどう思うだろう。
れんは今、どこにいるんだろう。
その瞬間。
「つかさ」
低い声が刺さった。
振り返ると、れんが立っていた。
表情は驚くほど静かで──静かすぎて怖い。
「話、終わった?」
その質問は、穏やかに聞こえるのに、どこか張りつめていた。
たいちは笑みを崩さず言う。
「まだ途中かな」
「そう」
れんはつかさの横に立つ。
「つかさ、帰ろ」
「……別に、一人で帰れるし」
「帰ろ」
有無を言わせない声。
たいちは面白がるように二人を見ていた。
「ふたりって、ほんと見てて飽きないね」
れんはたいちを無視し、つかさの腕を軽く掴んだ。
その温度に、つかさの心はぐちゃぐちゃになっていく。
この放課後が、三人の関係を大きく変えていく。




