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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした

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第96話 スルト


 とうとう魔王城まで来た。

 これからは今までのようなオークやオーガと言った人間寄りなタイプではなく巨人や半獣のモンスターたちが現れる。もちろんデーモンたちはいつだって出てくる。本当は巨人たちも他の所に出没するはずなんだけど、魔素の減少で魔王城だけに登場させているのではないかとアルは言っていた。


 なので目の前の門にすでに一振りの剣を持つ巨人がいる。スルトだ。真っ黒な巨体から炎が噴き出ている火の巨人。近寄らなくてもすごく熱いし、威圧感が半端ではない。リアン君は火と風の魔法剣士だから、俺とは相性が悪い。どうすればいい?


 俺の躊躇をよそにアイリスがスルトに切りかかった。炎が彼女を襲うがエリカがすばやく氷の盾を作って彼女を守る。炎が盾に当たるたびにものすごい蒸気が発生する。盾の氷が一瞬で気体に変わるからだ。その蒸気をステルス状態のミランダがスルトに当てるように吹き飛ばすがアイリスが火傷しない以上の効果はないようだ。

 それでも人間であるアイリスには有益な助力だ。それに彼女は剣聖なので剣を持つ相手にはめっぽう強い。とにかくうち負けると言うことがない。敵の振り下ろした剣を貴族令嬢の細腕で受け止めている。とはいえこのまま1人だけ消耗させるのはよくない。


「カイル、君は水の属性もあったよな。剣に水の魔力を纏わせて援護してくれないか」


 さすがにチェリーの魔法陣では威力がたりない。モカは物理専門でスルト向きではないし、チェリーを守りに入っている。それでも少し気を逸らせればアイリスなら活路を見出すだろう。


「うるさい! 俺に指図するな!」


 叫んではいるものの、どうやらカイルは足が震えていて立っているだけでもやっとらしい。今までのチュートリアルのような敵ではなく、本物の強敵に怖気づいているようだ。俺だって怖いよ。向こうじゃ絶対に出会うことのない敵だからな。前回はアルがサッサと切ってすぐ倒していたし、今冷静でいられるのはリアン君の経験のおかげだ。だから彼を責められない。俺が何とかしなくてはいけない。



 俺はエリーちゃんが討ち直してくれた剣を抜いた。そこに彼女のくれた水の魔法陣が描かれた魔紙を巻き付ける。これは飲料用にどこからでも一時的に水が湧き出すもので、決して戦闘用ではない。でも女神の魔法陣だ。多少は効き目があるかもしれない。


 俺はアイリスと打ち合っているスルトの後ろ脇から攻撃した。俺の剣がヤツの体に触れた瞬間、俺は弾き飛ばされた。だがポニョンとしたものに受け止められた。ステルス状態のモリーが大きくなって受け止めてくれたのだ。

 全然手ごたえがなかったが、見ればスルトの体にエリーちゃんの水の魔法陣が張り付いてそこから溢れんばかりの水が噴き出している。本当にどこからでも水が湧き出していた。

 それと同時にスルトの体の火力が急に弱まった。


 どうやらあの魔法陣がスルトの魔力を吸い取って、水に変えているのだ。蒸気で前が見えなくなるがミランダがちゃんと飛ばしてくれる。その隙にアイリスが縦一文字に切り捨て、真っ黒な炎の巨人はまるで濡れて消えた燃えカスのようにばらばらと崩れ落ちた。


「やった! さすがアイリス‼」


「か、勝てた……」


 そう言って彼女は膝をつき、肩で息をしていた。思ったより余裕のない戦いだったようだ。この勝利はエリーちゃんの魔法陣の威力もあるが、自分の力を過信せず日々の努力を怠らない結果だと思う。アイリスは鍛錬を惜しまない。それは心が委縮しても体が動くようにしているからだ。

 剣聖である彼女だって下級デーモン以上の敵はそうそうお目にかからない。だからこそそれに備えていついかなる時でも鍛錬をするのだ。


「お疲れ様です」


 俺はポーションの封を開けて渡した。彼女はそれをすぐに飲んでくれた。プラムがいないとポーション頼りになるしかない。


「この先はこんなのばかりかしら?」


「どうでしょう? 行かないとわかりません」


 こういう時に知っているけど言えないって辛いな。スルトは魔王城の挑戦者を振り落とすためかなり強力な敵だ。中にいる比較的弱いのがトロルだ。あとは大体強いと思う。顔は美人なのにものすごく不快なモンスターもいる。だけどそんなめんどくさい敵はアルやみんなが一撃で倒していたのでよくわからない。


「そうね……援護ありがとう。それからあの攻撃は何?」


「手持ちの強力な魔法陣をスルトの体に貼りつけたんです。俺としては水がちょっとかかって気を逸らせたらと思ったんですが、それ以上の効果がありました」


「強力な魔法陣って私のじゃないよね?」


 チェリーも気になっていたようだ。


「ああ、街の薬屋さんで売ってた」


 嘘ではない。エリーちゃんはアイビーおばあさんの薬屋に同じものを下ろしていた。


「そう、探せばよい人材はいくらでもいたのね……」


 いやエリーちゃんはただ一人だから探しても無駄だ。でも仲が良かったアイリス様のためならきっと手助けしてくれただろうに……。だから俺はそれには答えず、先を促すことにした。


「アイリス様が回復したら行きましょう」


 俺たちは門を潜り抜け、とうとう魔王城の中に侵入した。


お読みいただきありがとうございます。

すみません、まだ門を通っただけです。さすがに鈍足過ぎる……。次からスピードアップします。

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