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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした

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第91話 泉


 泉が枯れていたことでプラムとカイルが目的を見失い気落ちしていたが、俺はそんな二人を冷たく睨んでいた。


 正直、プラムの正体に気づいた瞬間ははらわたが煮えくり返りそうなくらい怒りに満ちていた。でもそんなとき、俺の脚にモフモフしたものがくっついてきた。ステルス状態のモカとミランダ、モリーが俺を落ち着かせてくれたのだ。


 とにかくこいつらと一緒に行動を共にしないといけないんだ。ケンカになって戦線離脱されたらたまった物じゃない。そのためにも俺は冷静でいないといけないんだ。

 だがやる気を失ったやつらを無理に動かしても危険なだけだ。それで俺たちはとりあえずリンダの用意してくれた部屋に泊まることにし、次の行動についての提案をした。


「どちらにせよ元泉の場所はモンスターの出没しやすい所なんだ。下級デーモンの遭遇率も高いので行く価値はある。それに水自体は枯れていても、奴らが現れるのにはきっと理由がある。それを見に行くだけでもいいんじゃないか?」


「魔王城に行くためには下級デーモン討伐は絶対に必要なことですもの。わたくしは賛成だわ」


「私も賛成します。1日でも早く帰って、家族に無事を知らせたいもの」


「チェリーが知らせたいのはキースでしょ。あたしはこちらに残るけど、北部に商機があると思うから、1度王都に帰りたいわ。こんなやっつけ仕事でない、ちゃんとした商談がしたいのよ」


 アイリス、チェリー、サリーは賛成してくれたが、ガックリした2人は無言のまま項垂れていた。


「でもあの泉が強化になるなんてホント知らなかったぜ。たぶん普通に飲むだけじゃダメなんだ。何か条件があるんじゃないか?」


 そういうとプラムは思い当たる様子でハッとしたようだが、俺たちには何も言わなかった。


「それでどのくらい強くなるんだ?」


「……ランダムで2~20倍」


「カイル!」


 プラムが口止めするように鋭く呼びかけたが、もう聞いた後だ。


「それはすごい。20倍ならさすがに俺より強くなるかもな」


 俺は自分を抑えて、何とか2人を前向きになるように仕向けてみた。


「今、水はないけど、プラムの言う通り一時的にでも浄化して取り戻せばカイルが1回飲む分くらいは手に入るかもしれないぞ。やるだけやってみよう」


 カイルが頷いてくれたので、明日の朝枯れ泉に向かうことになった。



 寝床に入ってしばらくすると何か動いている。初めは夢うつつだったけどここが北部だということを思い出して剣を抜いて身を起こしたら、そこにいたのはモカたちだった。


「なんだ……変なヤツに夜這いかけられたかと思ってびっくりしたよ」


「へへへ、あたしとしては夜這いかけられるとこ、ちょっと見たかったけど……へぶっ」


 モカの言葉はそれ以上聞けなかった。ミランダが彼女の意識を刈り取るべく、後頭部を華麗に蹴り飛ばしたからだ。俺が呆気に取られていると、心話モードになって教えてもらった。どうもミランダは腐女子の腐っているを本当に腐ることだと心から信じていて、モカがそういう発言をするたびにそれ以上腐乱しないように気絶させるのだという。


(モカおねーちゃんのびょうきはじゅうしょうなの。おかーさんにうつるといけないの。リアンにもなの)


(結構物騒だけど、確かに俺にうつらない方がうれしいな。それでなにかあったの?)


 モリーが伸びて体の中に収納していたタブレットを渡してくれた。彼女は上手に触手をのばして起動させると相手はアルとエリーちゃんだった。


『やぁリアン。夜遅い所、悪いね』


「いや、俺の方も情報を伝えたいと思っていたところだ」


 それでプラムの正体がどうやら俺たちと同じのようだと伝えると、アルはあまり驚いていない様子だった。まぁ怪しさ満点だったしな。


『モカから泉の話が出たって聞いたんだけど、彼らは泉の水で強化する話をしたんだってね?』


「ああ、ゲームの通りなのか?」


『まぁね、でもゲームでは水を飲むことで癒しと能力アップぐらいだけど、こちらでは別のものだった。泉の地下に光と闇の精霊女王の幼体が眠っていたんだ』


 アルの話はこうだ。3年前のこの世界に飛ばされて一番最初にしたことが魔王城付近の探索だったそうだ。そこに向かう途中、エリーちゃんがこの泉のことに気づき寄ってみて、その精霊女王たちを見つけたというのだ。


『彼女たちはちょうど代替わりの次期で、そのせいもあって守りが緩んで悪魔の侵攻を防げなかったそうだ。それで彼女たちを保護して他の精霊女王たちの所に送り届けた。そうしたら泉が枯れちゃってね』


 つまり泉が枯れた原因はエリーちゃんだったのか。


『彼女たちの生命を守るための水だったから、強化アイテムだったようだ』


「リアン君は強化されたように感じていないけど?」


『それはその集落のほとんどがここの水を飲んでいたからに他ならない。それに強化は最初の1度きりだ。北部の人間は他の地域より格段に強い。そうでなければその瘴気の中生きていけないからね。ここ数年生まれの子どもたちはリアンたちと比べてとても弱いはずだ。違うかい?』


 つまりリアン君はすでに強化されているけど、子ども時代だからたいしてわからなかったってことか。そういえばマーゴが身を挺して子どもたちを救ったと聞いた。昔だったら逃げられていた子どもたちが自力で逃げられないと見てそうしたのかもしれない。


『そうか……それは申し訳ないことをしたね。でも僕らが精霊女王たちを救わなければ、彼女たちが悪魔の手に落ちていただろう。そうなったらそれこそ無理ゲーになってしまう。北部が狙われたのも、彼女たちの捜索のための可能性が高いからね』


「よく見つからなかったな」


『この世界の(管理者)の力で守られていたからね。それで大丈夫だと思ったんだろう。その守護もエリーが神だから簡単に受け入れられたのだ』


 おいおい、管理するんだったらもっとしっかり管理してくれよと心から言いたくなった。


「他に情報は?」


『今のところその程度だ。それで罠を仕掛けたいと思う。君はプラムに泉の復活を持ち掛けてくれ。彼女の正体をあぶり出したい』


 おお! 俺、たまたま1回ぶんぐらいなら手に入るかもって言ったよな。適当なこと言っただけだけど、超ファインプレーじゃん。


お読みいただきありがとうございます。

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