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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした

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第86話 エメラルディア


 俺は他の襲い掛かってくるモンスターと共にその黒い蝶のピクシーを切り裂いた。それと同時に奥にいた金属鎧のオーガも倒れた。どうやらエリーちゃんのおかげで剣の威力が増し、剣圧で倒せてしまったようだ。


「うわっ! お前何してんだよ‼」


 カイルが相当焦ったようで、素の叫び声をあげた。どうやらいつものように強がってられなくなったようだ。まるで普通の子供ようで、高額な不正ソフトを買いあさる犯罪者じゃないみたいだ。いや、ゲームのミスが許せないタイプなのかもしれない。


「悪い、思ったより力が入っちまった。お前の邪魔するつもりじゃなかったんだ」


 黒い蝶のピクシーを倒したのはわざとだったけど、この部屋のボスを倒したのは思ったより力が入ったからだし、カイルが勇者にならないと困るのは俺なので邪魔するつもりなんて毛頭ない。



 ピクシーが死んだおかげでモンスターの発生は止まり、この部屋のボスと思わしきオーガ(周回してわかったのだが、毎回ボスは変わるのだ)も倒せたので宝箱が出てきた。どうやら報酬はこれだけだ。

 アルたちの前に攻略した時の報酬はもっとすごかったようなのになぜと思ったら、後で聞くと制限時間内に全モンスターを倒すともらえるボーナスだったようだ。


「カイル、残念だけどこの宝箱の権利はリアンにあるわ」


 アイリスがそう言うと、チェリーが困ったように俺の方を見てきた。彼女は同じパーティーだから俺の謎のミミックスキル(あれはスキルなのか?)を知っているのだ。


「カイル、俺が宝箱を開けるから、お前はミミックを倒せ」


「はぁ? ミミックだと⁈」


「ああ、俺が開けるとなぜかほぼ宝箱がミミックになるんだ。でもうまくいけば普通の宝箱よりもいいものが入っているぞ」


 もちろん全然ダメな時もあるけど、女神であるエリーちゃんが出ると言ったのだ。間違いなくこのミミックで聖剣は出る。


「わかった、やる。チッ、面倒かけやがって」


 そうそう、カイルはそれでいい。なんか素のコイツがまるで俺と同じガキみたいで、勇者を押し付けるのに罪悪感を持ちそうだからな。



 俺はミミックに噛まれたとき用の手袋をはめて、用意して置いた短剣を握った。ふたを開けるのだから当然俺の手に噛みつこうとするからだ。この手袋もエリーちゃんのお手製ではめていると噛みつかれても全く痛くない。でも気分的に良くないので、噛みつかれる前にふたの間に剣を差し込んでかませるのだ。その間にカイルが倒してくれればいい。ちなみにこの短剣は売り物にもならないゴブリンナイフである。ミミックによっては大事な剣が噛み折られることもあるからな。


 俺が蓋を開けるとほぼ同時にミミックは牙を剥いてきたので、すかさず差し込むとゴブリンナイフは簡単に折れた。そしてもう1度俺に噛みつこうとふたを大きく開けて舌を伸ばしてきた。噛むだけじゃない気持ち悪い方のミミックだ。蛙が虫を舌でとらえるように、俺を狙っている。

 俺は別のゴブリンナイフで突き刺すが粘膜が張っていて刺さらない。でも俺に完全に意識が向いているのでその隙にカイルが例のオークの剣で中身の舌を切りつけた。粘膜で切り落とせなかったが、重い一撃でダメージは通ったようだ。舌が箱からデロリと出て痙攣けいれんしている。


「チェリー、援護を頼む」


「了解!」


 実はこの攻撃は俺がダンジョンでよくやっているので彼女も慣れたものだ。ファイアーボールの魔法陣をとりだすと痙攣で動きが鈍くなった舌に向かって発動させた。

 火で焦げたところには粘膜がなくなるので、次のカイルの剣は舌を切り落とすことが出来たがミミックはまだ死んでいない。


 いつもならこういう時にサリーがハルバードでふたを殴りつけてくれる。今いないのが残念だ。彼女は俺たちの中ではとてもいい連携が取れるのにな。でもこのパーティーを抜けられてよかったと思う。


 自分の攻撃では仕留められなかったカイルは攻撃方法を変えて、ふたをオークの剣でガンガン打ち付けていた。幾度となく叩きつけているとふたが割れてミミックは死ぬ間際に自分の持っていた宝物を吐き出した。飾り気のなく、まだ刀身が短い剣だが、エリーちゃんの言っていた聖剣に間違いないだろう。これは自分の成長に合わせて強くなっていくタイプのものだ。


「やったぞ! 俺の聖剣だ~!」


 エリーちゃんと俺がおぜん立てしたんだが、カイルは手に取って大喜びしていた。頬ずりまでしている。こいつ1人だったら取れなかっただろうなぁ。


「おめでとうカイル。聖剣の名前が必要よ。どうするの?」


 事情を知らないプラムが手を叩いて喜んでいる。


「ふふん、この剣の名前は……エメラルディアだ!」


 アイリス、チェリーはキョトンとした顔になった。


「エメラルディアってエメラルドってこと? 全くその要素がないんだけど……」


 何の飾りもないし、緑の要素もないからな。

 俺も一応首をかしげて置くが実はエメラルディアの正体を知っている。


 元の世界でやっていたウェブ小説発のアニメ作品の中に宝石人たちが出てくるものがあって、その中に強い女性の宝石人は主である勇者の剣として戦う話があるのだ。その中の1人、エメラルド色の瞳を持つのがエメラルディアだ。他にはルビーティア、サファイアナ、スピネリーゼなどみんな宝石の名前をもじっている。

 そう言えばエメラルディアは瞳こそ緑色だがおかっぱの黒髪で、主人に絶対服従の無口なクール系巨乳キャラだ。エリカと一緒じゃん。コイツ、推しキャラの趣味だけは一貫しているな。


「もう! アンタも好きねぇ。もっとちゃんと考えなさいよ」


「考えてこうなった」


「アンタの趣味が一貫していることだけは認めるわ」


 プラムがニカッとカイルはお互いに笑いあっていた。うん俺も激しく同意だ。

 こいつらやっぱ仲がいいんだな。でも確かに男と女というより、友達同士って感じがする。


 とにかく無事聖剣が取れたんだ。次の低級デーモン退治に行かなくてはな。


お読みいただきありがとうございます。

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