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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
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第85話 モンスターボックス


 モンスターボックスの敵は強いから大変なのではなく、量が多くて大変だった。


 エリーちゃんの修繕してくれた剣でなければもっとつらかったと思う。

 とにかく切れ味がいいのだ。敵が死ねば体が消えると同時に剣についた血も消えるのだが、これだけ多いと乾く間もない。それを気にせずバッタバッタを切り倒せるのはこの剣に浄化の付与が効いているからだ。


 アイリスも俺と同じようにとにかく切り倒していたし、プラムとチェリーは広範囲魔法を使って敵を倒していた。カイルはそれなりに倒してはいるものの、別の何かを探しているような感じで……と思ったら黒い蝶の羽を持つピクシーを倒すとモンスターが出て来なくなった。どうやらそれがこのモンスターボックスのスイッチのような働きをしていたようだ。


 アルからはそう言った話は聞いていなかった。周回するうちに面倒になったので1歩入った瞬間にダンジョンが壊れるかもしれないギリギリの強度の攻撃魔法を1発放って、ボックス内の全モンスターを倒すという方法を取っていたそうだ。そうするとダンジョンが死んだモンスターを再吸収する前だから全モンスターの魔石を取得でき、宝箱の中身も豪華になってとうとう聖剣まで入っていたのだ。


 でも俺たちにそんな真似は出来ないのでカイルの方法が正しい。だから宝箱の中身がしょぼくなるのは否めない。そんなわけで俺たちはここを周回しているのだ。今で8度目だ。はっきり言って飽きた。疲れた。もう他の所に行きたい……。


「なぁ、普通一番いいものはダンジョンの最終階層にあるんじゃないのか?」


「聖剣はこっから出るんだよ。つべこべ言わず働けよ」


 ゲーム知識ってわけね。知らなかったら納得できないよな。


「働いているだろーが。とりあえず休憩、休憩な。俺がこれだけ疲れてるんだ。女性たちはもっとしんどいはずだ」


 チェリーはもう顔色が変わっているし、文句は言わないがプラムも疲れ切っている。アイリスは剣聖スキルなのか、敵を倒せば倒すほど体力が付くらしくピンピンしている。もちろんカイルは黒い蝶ピクシーだけを狙っているので、俺たちに比べて消耗が少ない。

 彼は俺と違って運がいいらしく、宝箱の中身はそれなりにいいものだ。剣もあったが短剣で聖剣ではないらしい。



 休むことは出来たものの、食事係である俺やプラムが消耗していてみんなで食べるのは簡易の固形食だ。こういう時に元気すぎるアイリスが出来たらなぁと思う。でも生粋の貴族令嬢で討伐に出ても上げ膳据え膳な対応だったはずだ。


 でも今後はこの討伐に成功し英雄となっても、彼女は今までと同じ扱いを受けることはなくなるだろう。なぜならアルフォンス君と結婚しない彼女にウォルフォード伯爵位は離れてしまうからだ。つまり平民が貴族に遇される男爵位相当になるだろう。それが帝国で侯爵になり、皇帝の娘と結婚することで公爵に陞爵しょうしゃくしたレッドグレイブ男爵に忖度する方法だから。


 とはいえ今のアイリスに雑用をさせようとは思わないけど。彼女は本当に剣とそれ以外に振り切れていて、よく貴族令嬢のマナーや教養を身に付けさせたものだと感心する。彼女は興味のないことは全くしないタイプだ。ケガをした人間の止血をしたり、折れた骨の支えになる棒を宛がったりぐらいはする。でもその人物に薬を与えたり、熱のせいの汗をぬぐったりなんてしない。応急処置までが自分のすることで、看護は彼女の仕事ではないのだ。まぁこれまでは使用人がそうしていたからだろうし、カイルと暮らしていくうちに変わっていくんだろう。


 ああ、俺疲れてるんだな。こんな今と関係のないことに気を逸らすぐらいには。どうやったら聖剣が出てくるんだ。これを何十回もやるのか? ゲームの操作だけならともかく俺たちは生身だぞ。いい加減にしてくれ。


 ああ、エリーちゃんのスープが飲みたい……。



 そう思ったら自分の足元になにやらふかふかしたものがくっついていることに気が付いた。

 触ると3歳児ぐらいの大きさである。姿は見えないままだがきっと着ぐるみを着たままここにいるのだろう。

 俺がみんなに聞こえないように小声で声をかける。


「……エリーちゃんか?」


「そうよ。リアンをたすけにきたの」


「どうして聖剣が出ないんだ? 運ゲーなのか?」


「えっとね、カイルのレベルがたりないんじゃないかな? それでね、リアンならたりてるから、つぎはリアンがたからばこをだすといいよ」


「でも俺が出すとミミックになるし、俺のものになるんじゃないか?」


「そのミミックをカイルにたおさせるの」


「わかった。つまり俺が黒い蝶のピクシーを倒すんだな」


「うん。これをつけていれば、かってによってくるから」


 そう言って彼女は俺のてのひらに小さな匂い袋を置いた。嗅いでみるとさわやかなミント系の匂いだ。気持ちが上向いて頭がすっきりする。これでおびき寄せられるのか?

 俺はそれを胸のポケットにしまって、立ち上がることにした。



 9回目のモンスターボックスは今までと変わらなかったが、俺は黒い蝶を探しつつ倒すことにした。カイルが楽をしているせいで、アイツのレベルが上がらないんだ。俺たちの8回分の体力やポーションを返せって言いたくなる。でも今は仲間だし、俺が元の世界に戻るために我慢する。


 そう思って目を凝らしていると見つけた!

 何となくだが俺の方に近づいている気がする。エリーちゃんの言う通り、匂い袋に惹かれているのに違いない。

 俺はおかしく見えないようにそのピクシーの方に向かっていった。


「おい! そっち行くな‼」


 カイルが怒鳴る。どうやらヤツも見つけたようだ。だが断る!

 もうこんな面倒な討伐は嫌だ。


 俺は他の襲い掛かってくるモンスターと共にその黒い蝶のピクシーを切り裂いた。


お読みいただきありがとうございます。

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