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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
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第81話 サリーの怒り


 残ってくれたサリーに事情を話すと、彼女は驚きと怒りでアイリスを睨みつけた。


「少なくともこれまでアイリス様が境遇の悪さにめげずに頑張っていらっしゃると信じていました。それなのに勝てないとわかっていて、ここにあたしたちを連れてきたんですか? そんな自殺行為にあたしたちを巻き込むつもりなんですか? しかもプラムはずっと組んでる仲間ですよね? こんな状態なのに心配もしないなんて、それでも本当に剣聖なのですか⁈」


 サリーが怒るのも無理はない。俺たちはアイリスに忠誠がある訳でもないし、死にたくもない。それにプラムの件もおかしい。決して彼女たちは仲が悪いわけではなかった。カイルを巡ってのライバル関係ならいざ知らず、あの2人の間に恋愛感情は皆無なのだ。


 アイリスは黙って俯いていたが、しばらくして言いにくそうに言い訳を始めた。


「……自殺のつもりはなかったわ。わたくしはとにかく婚約破棄期限引き延ばしたかっただけ……。それにプラムはこういう状態によくなるの。ダンジョン討伐で帰りが遅くなったらいつもよ。わたくしが何度彼女を負ぶって寮まで連れて行ったことか! 屋敷に泊めたことだってあったわ。彼女は魔力切れを良く起こすし、今みたいに体温が低くなる。珍しいことじゃないから馬車で休ませる程度でいいと思ったのよ。

 カイルだっていつもそう言っているじゃない! プラムが倒れるのは時間が遅くなったから、都合は悪いからだって」


 時間が遅くなった? 都合が悪い? それで意識を失うのか?


「カイル、そうなのか?」


「ああ、いつもはそうだが……今回はちょっと具合が悪いのかも」


「そうなのか? 元気そうに見えたが。なぜ初めから体調が悪いって言わない?」


「だって今回は大丈夫って……言ってたし」


「つまりよくわからないが体調が悪いのではなく、時間が遅くなったわけでもなく、都合が悪いわけでもない別の理由で倒れたってことか?」


「えっと、その……うん」


 なんだよ、意味わかんねー。ウルトラマンのカラータイマー3分じゃあるまいし。


 見かねたチェリーが間に入って来た。


「とにかくここで言い争ってもダメだよ。理由もなく倒れたのなら、やっぱり体調が悪いんだわ。できるだけ明るい内に前の村に戻りましょう。そこで色々相談した方がいいと思う」


 彼女の提案に乗って、俺たちは馬車でオークの特に世話になった村まで引き返した。



 目的の村には夕暮れ過ぎにやっと着いた。サリーがかなりのおかんむりだったため、引き離そうとアイリスと俺は白い騎士服に着替えて冒険者ギルドに、残りでプラムの看病と宿屋を取ってもらうようにした。


 皆の姿が見えなくなるとアイリスの方から謝って来た。


「迷惑かけて悪かったわ」


 俺はそのまま謝罪を受けなかった。俺にだけ言ったってしょうがないし、一言言ってやりたくなったのだ。


「どんなに訓練を積んでも人にはそれぞれ限界があります。サリーの能力は魔法士よりも商人向きです。覚悟を決めてこれまで戦ってきても自分の限界を感じ、これ以上は無理だと悟ったところであなたの甘い考えを知ったのです。俺らからしたら今回の件は無理心中に付き合わされているも同然です。さすがのサリーも怒りを抑えられなかったのでしょう」


 そんなつもりはなくても、オーガであれだけ苦戦したのだ。下級デーモン以上の敵にこのまま勝てない以上、その気はなかったと言われても信じられない。


「とにかくカイルには勇者になってもらわないと困ります。ご決断ください。俺は勇者にならなくてかまいません。俺にとって大事なのはフレデリカとの約束ですから」


「……わかったわ。勇者になるためにはあるダンジョンを攻略しないといけないの。それには剣聖と聖女は必要よ。できればチェリーも貸して欲しいわ」


「わかりました。サリーと俺はここに残ります」


「わたくしとしてはリアンにも来てもらって、あなたが勇者になってもいいと思うわ。カイルが出来なくてもあなたが身代わりを務めてくれれば……」


「いや、さすがに俺はそこまでお人よしじゃないですよ。それに俺はあなたたちのせいでレッドグレイブ様に恩義があります。俺が勇者で魔王討伐したのに。カイルがその栄誉を受けるなんて許せるわけないです。あなた方でチャレンジしてできなかったら俺がやりますが、1度はカイルに機会を与えたらどうですか?」


 そんな余裕は時間的にも能力的にもない。でもやってもらうしかないのだ。俺はプレイヤーじゃないんだから。



 冒険者ギルドでオーガ討伐の報告と換金を行うと、さすが剣聖様とその場で拍手が沸き起こった。アイリスはそれを何事もなかったように受けた。本当はギリギリの勝利でプラムの意識不明という状況なのに、自分を律して答えていた。この辺はさすが剣聖というところか。


 必要物資が足りなくなって戻って来たと報告すると、彼女は地元の名士から食事の誘いを受けた。仲間が宿を探してくれているからと断ると、この時間では見つかりにくいとこちら用意してくれるということで受けることになった。これも国王のプロパガンダ活動のため、ひいてはリアン君の貴族位相続のためだ。


 貴族令嬢であるアイリスは、正式な食事のための着替えや化粧が必要なので残ることになった。それで俺はみんなを迎えに行こうと冒険者ギルドを出ると、なにやらモフモフしたものが俺に飛びついてきた。


「リアン、久しぶり。会いたかったよ」


 モフモフしたものは着ぐるみのエリーちゃんで、その後ろにはイケメン冒険者姿のアルがいた。

 どうして2人がここにいるんだよ? 


お読みいただきありがとうございます。

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