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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
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第78話 オーガとの戦い


 囲まれていることがわかった時、一番巨体のオーガが咆哮した。その声を聞くと俺の体はカチンと凍ったように動かせなかった。声も出ない。どうやら威圧を受けたようだ。それなのに気が付くと俺の右手は剣の柄を握っていた。何度も何度も戦い抜いてきたリアン君の生きるための反応だ。それで落ち着くことが出来た。


「みんな、落ち着け! 作戦通りにするぞ‼」


 集落ではなくなったがこの場でプラムとチェリーの浄化を行えるように、俺たちで彼女たちを守りながら1匹でもオーガを倒すのだ。

 俺の声にアイリスが頷き、サリーがチェリーから購入した威力増幅の魔法陣を取り出した。まだぼんやりしているのはカイルだけだ。俺は彼の背中を叩いて活を入れた。


「カイル! 何でもいい。とにかく生き延びろ。討伐はその次だ」


 ヤツはハッとして頭を振った。俺の声で威圧が解けたようだ。いつもの調子に戻り大声で返事を帰した。


「うるさい! 俺もやる‼」


 そういってオークキングの剣を抜いた。俺のアドバイスは聞き入れてくれなかったようだ。この場にいる半成りは3匹。他の約20匹は普通のオーガだ。プラムとチェリーが倒れなければ勝算はある!



 俺、アイリス、カイルはオーガに切りかかった。オーガの物理的弱点は心臓だ。まず首を落としてから心臓を貫く。ただ心臓をすぐに攻撃できないと首を拾ってつなげてしまうぐらい治癒力も高い。知能が低いので時々後ろ前につなげたり、斜めにずらしたりつなげたりもあって、リアン君はフレデリカからおかげで生き延びたと笑い話を聞いていた。


 それでサリーの土魔法、ストーンバレットで切り落とした頭を粉々に砕いてもらうのだ。大分強くなったとはいえ彼女の戦闘力ではオーガを倒せない。だが切り落として防御力の弱った頭なら潰すことが出来る。そのための威力増幅の魔法陣だ。

 さすがのオーガも頭が潰れると簡単に復活できない。生きた首無しの体では隙だらけで、さらに攻撃が楽になるという寸法だ。それで彼女にはプラムとチェリーの側に居て、安全な所から魔法をかけてもらうのだ。


 つまり3人(実質2.5ぐらいだけど)で他の3人を守りながら20匹以上と戦うという、もう死に物狂いだった。気が付くと清らかな光が上からも下からも満ちてきて、オーガたちが全員消えてくれた。プラムの浄化(上)とチェリーの浄化魔法陣(下)が間に合ったのだ。


「た、助かった……」


 カイルがポツリと呟き、崩れ落ちた。

 半成りは下級デーモンに成りかけだけあって、ひどく強くて俺たちはかなり劣勢だった。特に剣の重みで動きが遅くなってしまうカイルは重点的に狙われて、俺やアイリスもなかなか助けにいけなかった。

 彼がここで死ねば俺は帰れなくなるとゾッとしたが、プラムの結界が結ばれて、チェリーの魔法陣が効いてきてからは普通のオーガが減って楽になった。さすがに半成りはそれでも俺たちと戦えていたが、プラムの浄化魔法は絶大でその光を浴びると霧散した。さすが聖女だと感心した。


 これまで彼女はずっと自分の力をあまり見せようとはしなかった。一応は仲間だから癒しも浄化もやってくれるけれど、魔力は基本節約で自分を弱そうに見せていたのだ。リアン君の値踏みの能力がなければ俺は彼女が実力を隠していたなんて思わなかったに違いない。



 俺は疲れすぎて地べたにうつ伏せているカイルに近寄った。


「よく生き延びてくれた。お前、頑張れるんだな」


「はぁ? 俺はやるときはやるんだよ!」


「おう! その調子でこれからも頼むわ」


 手を差し伸べるとさすがに疲れていたのか男の娘だとは嫌悪しないで、普通に俺の手を借りて起き上がっていた。いつもこの程度に素直になってくれるといいのに。



 俺は馬車からポーションを取り出すと、比較的疲れの少ないサリーに手伝ってもらって配り始めた。エリーちゃんが作ったとても効果の高いおいしいポーションだ。


「なにこれ! おいしい~」


 一口飲んだチェリーが目をみはって声をあげた。あの無口なチェリーがだ。他も言わずもがなだ。エリーちゃんのポーションは疲れた心と体に染みるんだよ。さすが女神様(神力は使っていないそうだ)。

 サリーがこの薬師紹介してとばかりに俺の方を期待のこもった眼差しで見てきたが、今はまだ戦闘中である。そんな暇はない。


「みんな、ポーションを飲んだら全員で集落周辺を見回って、残りのオーガがいないか確認しよう。今叩いておかないと仲間を呼ばれて強化されると困るからな。

 いかがですか? アイリス様」


 俺がアイリスにこれからどうするか問うと、彼女はすまなそうな顔になった。


「ごめんなさい、そういうのはわたくしがするべきよね」


「いえ、アイリス様は騎士団と実戦経験を積まれたんですよね? 今まで細かい命令は下さなかったのではありませんか? こういうポーションを配ることような細々としたことや情報を集めて進言することは副官がすることなんです。俺は安全のために案を出しました。部隊の将はその案を追認するか、別の案を出すかして、この部隊をどう導くか判断してください。俺は掃討すると言ったけれど、あなたがみんなの疲弊具合をみて無理だと判断したら撤退してもらっても構いません。ただ俺たちは先に進むためにも、安全を期するためにも今は休まない方がいいです。プラムの治癒魔法でみんなケガもありませんし」


「そうね、わかったわ。ポーションで回復後、掃討を行う。まだ半成りが残っていることも考慮して全員分かれず一緒に進むこと」


「承知しました!」


 俺が騎士の礼を取ると、他のメンバーもそれに習ってアイリスの恭順を示した。もちろんカイルもだ。やっと俺たちは、魔王討伐パーティーとして1つになれたと感じたのだった。


お読みいただきありがとうございます。

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