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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
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第75話 オークキングの剣


 オークジェネラルの討伐後、プラムは聖女の盾を解除した。俺がポーションを渡すと彼女はそれをグイッとあおって、説明してくれた。


「来てくれて助かったわ。さすがに私たちでは無理だったから」


 

 最初は順調にみんなでオークを倒していたのだが気が付くと集落のハズレに追いやられていて、突然待ち伏せていたジェネラルが現れたのだという。カイルが逸って1人で戦おうとしたがさすがに厳しいと判断。聖女の盾と呼ばれる結界魔法を展開した。だがジェネラルは狂戦士化することで強い攻撃をし続け、彼女から魔力を失わせる戦法を取り始めた。何とかしのいではいたがそろそろ魔力が厳しかったところだったそうだ。


「間に合ってよかった。俺たちの方もキングを倒してきたんだ。あとははぐれを見つけて討伐し、魔石やドロップ品の回収しようぜ」


 それで俺、サリー、チェリーと、アイリス、カイル、プラムに分かれて掃討戦に勤しむことにした。



 周囲にオークの気配がなくなり、俺たちは回収作業に入るとサリーもやっと震えが止まったようだ。狂戦士化したオークジェネラルは相当怖かったらしい。意外なことにチェリーの方が落ち着いていて俺に質問してきた。


「そっちはどんな戦いだったの?」


「そうだな、毒で弱らせた雑魚を俺が減らしている間に、アイリス様がキングを倒したんだ」


「……剣がいつものと違うね」


 さすが商人の娘(サリー)。見るところが違うね。


「そういえばいつもの剣は鞘の中なの?」


「キングの剣が当たって刃の半ばで折れたんだ。親父から餞別にもらった剣だったから一応回収だけはしといたけど直せないだろうな」


「じゃあ今持っているのってオークキングの剣なんだ」


「うん、いつものよりは重いけど、切れ味は抜群」


「じゃあ次からはそれを使うの?」


「いや、これはかなり性能がいいけど、ドロップ品扱いがいいと思う」


「どうして? なんか強そうじゃない」


「俺の戦闘はスピード重視なんだ。今回はオークだったから動きが遅くて困らなかったけど、下級デーモン相手では通用しない。少しでも不安材料は減らしておきたいんだ」。


 肉体改造してムキムキのパワー系戦士になるには2か月程度じゃ無理だし、リアン君の体格ではかなり厳しい。


「そんなに重いの?」


「じゃあ2人共持ってみる?」


 俺は地面にいったん置いて彼女たちに持ち上げてもらうと、サリーは持ち上がらず、チェリーは持ち上がったが振り上げることは出来なかった。身体強化しても無理やり持ち上げたのかチェリーから汗が引かない。


「わたし、身体強化が得意なのに……。こんなに重いなんて」


「俺も身体強化しないと持ち上がらない。余分な魔力を食うことになるのも理由だな」


「……負けられない戦いだものね」


 どうやらサリーは自分が本当に死ぬかもしれないと、やっと自分の置かれた立場をしみじみと感じたようだ。頭でわかっているのと体感するのは違うからな。



 討伐が済んだ後、俺たちは魔石やドロップ品を全員に公開する。これは収入を6:4で分けると決めた時に、良いものを隠匿しないためである。

 並べてみるとやはりオークキングの剣が一番良いものだな。ジェネラルの魔石もデカい。


「あれ? オークキングの魔石がないな」


「あるわ。これよ」


 アイリスが指さしたものはジェネラルよりも少し小さめの魔石だった。オークとしては大きいが王となりえたものの大きさではない。


「でも間違いなくこれなの。神と精霊に誓っていいわ」


「アイリス様が不正を働くとは思っていません」


 彼女は剣聖という称号を維持するために、泥棒のような明らかな不正はやってはいけない。称号を与えた神や精霊に嫌われてしまうからだ。だから彼女がカイルを好きになってアルフォンス君を裏切っていても、自分の心に正直であるため精霊的にはOKなのだ。


 俺はリアン君の知識を辿ってみた。


「……もしかしたらこの剣の効果かもな」


 俺がオークキングの剣を指さした。


「稀にだけど武器や装飾品の効果で、自分の力より跳ね上げちまうものがあるんだ」


「リアンは使ったんでしょう? 何かなかったの?」


「俺はなかった。たぶん条件を満たしていないんだと思う」


「条件……」


「このオークが満たしていて、俺が満たせてない何かだ。王者の資質のようなものかもしれない」


 でも王者の資質ってなんだ?

 それで名門貴族であるアイリスに1度ふるってもらった。彼女は先祖に王女が降嫁したことがあるので、王族の血が流れている。そうして剣を握った彼女は数回素振りをしたがすぐにやめてしまった。



「アイリス、どうかしたの?」


 プラムが顔を覗き込むと、彼女は首を横に振った。


「これはわたくしには不向きな剣だわ。でも条件はわかりました」


「何だったんですか?」


「敵を討ち果たすこと。その敵とは人間のことで、集落のオークの数よりも多くよ」


「ここのオークは50匹以上いたから、オークキングはそれ以上の人間を殺していたのか……」


「ええ、わたくしは盗賊団の壊滅も行っていてその程度は討伐しているわ。それにオークキングにとどめも刺した。だから権利があるのでしょう。でもわたくしがオークキングになることはないから不必要ね」


「人間の王になることはないのか?」


「なれても簡単ではないだろうな、カイル。俺は10人以上盗賊の討伐を行っているが、このパーティーのリーダーにならなかった。それに前の王を倒したわけではないし、使っても条件も与えられなかった。つまりその権利があるのはアイリス様だけってことだ」


「リアンの言う通りなら、わたくしを倒してその権利を奪い、王になるために自国民と同じだけの人間を殺さなければならない。それはそれは人々に恐れ憎まれる王になるということよ。なぜならわたくしたちはオークではないのですもの」


「とても危険な剣だ。アイリス様さえ倒せれば、王になれるかもしれないのだから。剣聖であるあなた様を簡単に倒せるとは思わないが……」


「わたくしも人間です。眠っているときや年老いれば負ける日も来るでしょう。ですがこの条件はわたくしのように権利がないと知ることができません。ここにいるみんなが口をつぐめば知られることはないはずです」


「俺も見知らぬ人間に売るのが最上だと思う。アイリス様のことは伏せて、ただのドロップとしてギルドに出そう」



 俺はそう提案したが、カイルは反対した。


「でも現状一番いい剣だ。俺が使いたい」


 マジで? まさかアイリスを殺して王になりたいとかじゃないよな?


「今の話聞いてなかったのか? この剣はアイリス様の権利のことを知ることのできない人間が持てばただの切れ味のいい剣だ。でも知っているお前が持てば、その分危険が増すんだ」


「俺がアイリスを狙うって言うのか⁈」


「馬鹿が! お前自身が狙わなくても、お前が条件は明かせば狙われるかもしれないってことだ」


 もちろん俺たちの誰かでもだ。


「俺が持っていればアイリスを守れるじゃないか!」


 そんなこと、オークジェネラル程度、自力で倒してから言えよ!


「お前、まだ全然弱いじゃねーか! 本気で殺されると思った時に人間は言ってはいけないことも口走るもんなんだよ。アイリス様の側にこの剣は置いておけない」


 俺とカイルが言い争いになっている間、アイリスは黙って聞いていたがやがて口を開いた。


「いいわ、カイル。あなたがこの剣を持っても」


「アイリス様!」


「その代わりあなたがわたくしに不利益なことをすれば殺すわ。わたくしの信頼を裏切るのだから、そのくらいの覚悟はしてね。そうそうこの剣は買取にしましょう。あなたの取り分からこの剣の金額を支払ってね。1/6分も値段が安くなるのだからお買い得よね」


「共同財産にした方が安上がりですよ?」


 サリーがそう提案したが、アイリスは認めなかった。


「カイルは自分が持ちたいと言ったのだから、彼の物にしましょう。あなたは会計係なので、できるわね」


 そうしてオークキングの剣はカイルのものになった。

 彼を信頼しているから? でも彼女はカイルの中身を疑っている。

 正直アイリスがどう思ってこの剣をカイルのものにしたのか俺にはわからなかった。

お読みいただきありがとうございます。

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