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それでも異世界は輪廻っている  作者: 詩森さよ(さよ吉)
第一部 ゲームから出られなくなった俺を助けてくれたのは、キモデブ悪役令息と犬耳幼女メイドだけでした
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第74話 オーク退治


「次はオークの集落だっけ」


 俺が貰ったおやつのあんパンにかじりついていると、モカがそう確認してきた。


「うん、まぁアイリスもいるし大丈夫だろ。それともなんか情報でもあるのか」


 とはいえさすがにオークの場合はゴブリンほど気楽ではない。上位種がいれば統率が取れて連携してくるし、体が大きいだけに力が強くしぶとい。一応策はあるけど、アイリスは嫌がりそうだ。


「その付近の精霊がね。ジェネラルとキングがいるかもって」


 それは手こずりそうな予感しかない。


「うーん最初から総力戦で行った方がいいか? 俺とアイリスで二手に分けた方がいいか?」


 俺は作戦を考え込んでぶつぶつ言っていたようだ。モカが俺の顔をの覗き込んで言った。


「エリーがね、リアンの思う通りにするのがいいって」


 俺はともかくリアン君はオークのようなモンスターは狩り慣れている。つまりこの直感は彼の経験に基づくものだ。



「……わかった。予定通りカイルたちを先行させて、俺とアイリスで頭を潰しに行く。上がいなけりゃ統率が取れなくなり、烏合の衆になるはずだ」


 カイルたちを囮に使う作戦だ。こういう手もアイリスは嫌う。


「カイルが死んだら魔王城は攻略できないよ?」


「ここで死ぬようじゃ、どちらにせよ攻略は失敗する。それにプラムをつけてあるんだ。彼女の実力は本物だから、死ぬ前に癒して防御するだろう」


「わかった。でも心配だから、あたしがサポートするよ。それでその怪しい二人とちょっとは喋ったの?」


「カイルとは相変わらずだな。ヒロイン以外は警戒心の塊で、サリーがいつもイライラしている。プラムは前よりは話すようになった」


 アイリスは戦闘に慣れていても討伐につきもののこまごました事には慣れていない。カイルは怠け者だ。必然的にプラムがやらないと俺たちの都合で全部決めちまうからな。


「リアンもヒロインなのにね」


 モカがニヤリと笑うが、BLネタにだけはなる気ないぞ。


「絶対俺のルートに入りたくないみたいで無視してくるからな」


 俺も同じ気持ちだし、たまに話しかけてくるのは俺の意見に反対して突っかかられるだけだ。だから時間の無駄にしか感じなくなってしまった。文句があるなら代案だせっての。


「そろそろ到着だ。あんぱん旨かったよ。俺はちょっと準備してから行くけど」


「あたしにはステルススキルがあるからカイルたちの側に行くわ。リカはこのままリアンを守ってて」


 心話で了承の意が伝わってくる。俺はエリカに俺かアイリスがオークの頭と対峙したら、影縫いで動きを止めて欲しいと頼んだ。アイリスならば、その隙を見逃すはずがないからだ。



 集落がかろうじて裸眼で捕らえられる位置に着いた。取り決め通り、俺とアイリス以外の4人が作戦通り動き始める。

 俺も馬車を下りて、はぐれのオークを探しに行こうとしていたアイリスを呼び止めた。この討伐の旅に入るにあたって、戦闘中は全員敬語を止めることになったのでタメ口だ。


「待ってくれ。この集落、ちょっとおかしくないか?」


「そう? こんなものじゃないかしら」


「いや、建物がちょっと出来が良過ぎる。人間が済んでもおかしくない程度小屋だ。知能が高い個体がいる可能性が高い」


 エリーちゃんに教えてもらった情報だけど、リアン君の知識もそう判断している。粗末だけどちゃんと人が住めるレベルだ。屋根と壁だけではなく、外を見張るための小窓や侵入者を防ぐ扉があるのだ。知能が高い存在がいる証拠だ。


「いるとしたら何かしら?」


「この分だとキングか、ジェネラル」


「そんな! 先行組が危ないじゃない!」


「俺が馬車を下りる前にさっさと行ったから、言えなかったんだ。だから作戦変更。はぐれ探しではなく、先に頭を潰しに行こう」


「わかったわ。じゃあ身体強化で強行突破する?」


「奥にある一番大きな建物にいると思う。裏側から回って体力温存する。御者台に乗ってくれ。これにはせい霊様の加護があって、姿と気配を消すことが出来る」


 彼女は無駄口を叩かず、すぐに乗ってくれた。やはり戦闘に関して彼女は有能で、判断も早い。



「簡単な作戦を言う。まず俺があの一番大きな家の中をかく乱させる。その時、火と毒を使う。だからこれで口と鼻を覆ってくれ」


 俺はチェリーが防御の魔法陣を刺した布を渡した。これで覆っておけば毒から顔を守ってくれる。


「オークごときに毒まで使うの?」


「でももしキングとジェネラルが一緒にいたら、カイルたちにジェネラルが差し向けられるはずだ。さすがにプラム1人で討伐できるのか?」


「……聖女の護りを発動させて防御一択ね。でないと攻撃をしている間に他の3人がやられてしまうもの」


「ならできるだけ魔力と体力の温存と時間短縮のために必要だ。オークはゴブリンやオーガと違って毒が使えるからな」


 動きを鈍くするだけでもめっけものだ。むしろ雑魚にかまけている間にキングを逃したら、後々面倒になる。ここのモンスターは死んだら消えるので、解体して素材を剥ぎ取るなんてしない。使えるものは使わなきゃ損だ。



 この集落で一番大きく守りの柵も強固な建物に近づくと、アイリスのスキルに引っかかったようだ。


「確かにキングクラスがいるわね。あと20匹ほどで周りを固めている」


「わかった。見張り窓に近づいて仕掛けるから、アイリスはキングのみを倒してくれ。あとの20匹は全部とは行かないだろうが俺が抑える」



 俺はできるだけ気配を殺して窓に近づいた。窓の側に見張りがいるがキングがなにやらブヒブヒ言っているので話を聞いているようだ。

 これはチャンスだ。


 俺は窓からゴブリンのふんどしに乾燥した毒草を包んだものに火をつけていくつか投げ入れた。煙と火の手が上がったので、中にいたオークウィザードが水魔法で消そうとするが消えない。むしろ火が拡散されている。そうこれがゴブリンのふんどしの最大の効果、良く燃えて消えにくいだ。降りしきる雪の中でも水の中でも燃え続ける、とても素晴らしい効果だ。


 火が広がったおかげで、さらにもくもくと毒の煙があがった。これだけでオークが死ななくても視界は遮られ、無駄ない動きが多くなる。アイリスはそれを合図と見なして、オークキングに向かって攻撃を仕掛けた。

 大体2/3くらいが毒で動けなくなっているし、動いている者も混乱を起こしている。同士討ちも起こったようだ。俺はそこにウインドカッターと剣で、アイリスに向かっていきそうなオークから倒していった。彼女以外どこに当たっても問題ないからな。


 彼女のオークキングへの猛攻のおかげで、オークキングの効き手が落とされ心臓が貫かれた。エリカの影縫いも効いたようだ。だがさすがに王座に就いただけあって、なかなかしぶとい。切られた腕を掴んで俺の方に剣を投げてきた。俺は自分の剣でそれを払ったが、方向は少しそれたものの剣が折れてしまった。

 これ、リアン君が父親から貰った剣だったのに……。ごめん、リアン君。


 仕方がないのでキングの剣を引っ掴み、残りのオークを切り倒す。すごい切れ味で分厚い脂肪で深手を負いにくいはずのオークの体がいとも簡単に真っ二つになった。よくバターみたいに切れるっていうけどこういう感じかぁ。さすが王の剣。

 オークキングを倒したアイリスも残りの掃討に入ってくれて、5分ぐらいでこの建物内のオークは全部倒せた。



「ドロップはあとで拾おう。こっちだ!」


 俺はカイルたちがいる方へ走り出した。


「ちょっと! どこにいるかわからないでしょう⁉」


「勘だ‼」


 本当は勘ではない。肉眼では見えないがステルススキルで隠れているモカを、肉球スタンプのおかげでしっかり感じ取れるのだ。俺を案内するために来てくれたようだ。四つ足モードのなかなかのスピードで走るので、俺も身体強化を最大にして追いかけた。アイリスは一瞬迷ったようだが、同じく強化してついてきてくれた。


 案内された先は狂戦士化したオークジェネラルが、プラムの張った聖女の護りを打ち壊そうとしていた。強い衝撃に堪えるたびに魔力が失われていく。彼女の魔力切れと同時に全員の命が危ない。


「わたくしが上へ!」


 そう言ってアイリスは跳びあがりジェネラルを後ろ上空から剣を揮った。首を落とす様だ。俺は彼女に一瞬遅れてだが、邪魔にならぬよう肩から袈裟懸けにした。背中を切りつける程度と思っていたが、切れ味があまりにすごいため首のない体は斜めに真っ二つになった。


お読みいただきありがとうございます。

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