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-01:記憶
195年前の記憶
「景国……景国!目を覚ましてよ!」
少女が必死に叫ぶ。声を枯らし、泣き叫びながら。一人の男を抱えて。その男は満身創痍、失血状態で意識を失っていた。
「もう無理!諦めるのよ!彼を助けるには、あなたの呪いが無いと無理――でも、そんなことをしたら……!」
その場にいた女性も叫ぶ。彼女もボロボロの状態だった。
「構わない。それでも景国を助けたい!」
「……本当に、良いのね?」
「ああ」
目の前には強敵が立ちはだかる。苦戦を強いられた一行。負わされた傷も尋常ではない。
後に歴史に名を残す、途轍もない大決戦。「伝説」と呼ばれることになった三人と、招かれざる敵。彼らの激しい戦闘は、190年後、無に帰すのであった。
「悔いは、無い」
自分は、弱い。
自分は、脆い。
自分は、儚い。
自分はまだ何もしてないのに――
あなたはいつも優しかった。
自分はまだ何も返せていないのに――
あなたはいつも勇気をくれた。
自分はまだ何も果たせていないのに――
あなたはいつも代わりになって出た。
自分はまだ何も動いていないのに――
あなたはいつも率先的だった。
どうか楽になろうなんて思わないで。
あなたがくれたいろんなもの、
まだ、まだ、まだ。
こんなに悔しいのに。
あなたは無理をしていたのでしょうか。
自分は無理をしていたのでしょうか。
私は何を間違ったのでしょうか。
どうしてこんなに辛い目に遭わなければならないのでしょうか。
全てのことに目を瞑り、全てを思わなければ、楽でしょうか。
もし神様がいるのなら、という前提では届かないから、神様、どうかお願いです。
自分はいなくなってもいい。目的を果たせたのなら。
あの敵を倒せるのなら、みんなが幸せになれるのなら。
自分は何もいりません。
どうか、どうか、お願いします。
10年前の記憶
熱い、熱い。
後ろで火の燃える音。生来経験したことのないような、熱さ。
炎と煙のせいで真っ赤な視界。人々の悲鳴、木材の倒れる音。
助けが来る可能性はほぼ無い。希望も期待も祈りも通じない。
ああ、「死ぬ」ってこんな感じなんだ……
「父さん、母さん…」
家に残してきた妹たちが思われるが、今は瀕死の家族が三人いるのだ。
「助けてあげようか」
突然上の方から声が聞こえた。優しくて鋭い、若い男性の声。しかし、その一瞬後、意識が飛びそうな感覚。前に頭を強く打って気絶したことがある。そんな感覚がした。頭は打っていないのに。
「……………………」
何か言っていた気もするが、遠のく意識。眠い……