表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

我の流用

作者: タマネギ

子供の頃はずっと、

人前に出るのが

苦手だった。

苦しかった。

とっても怖かった。


小学校に行くのが

嫌なものだから、

とにかく熱を出して

お腹を痛くして

流れる雲を見ていた。


話しながら通う

子供たちの声が、

見知らぬ国の言葉に

聞こえていた。


それでも、それでも、

どうにか出席して、

自分ができることは、

どうにかやってきた。



日溜まりの中の

名も知らぬ花と

窓に透ける空の、

円を描く鳶が

よく目に留まった。


そういう大昔から

あるだろうことは、

頭に入ってきたのに、

およそ、勉強には、

近づけなかった。


勉強ができないと、

大人に叱られた。

眠い目で漢字を書き、

計算をして泣いた。


それでも、それでも、

どうにか卒業して、

頼りないながらも、

どうにか生きてきた。



もういいよと思い、

ある日座り込んだ。

自分には無理だと

肝心なことを止めた。

格好だけつけた。


好奇心も冒険心も、

人の気持ちも薄れて、

人との関わりからも、

距離を置いていった。

夢を放り出した。


友情があるとか

愛情かないとか、

わかったような話に

相槌だけを打った。


それでも、それでも、

どうにか仕事をして、

世のためになったのか、

どうにかここにいる。



何を見ても聞いても、

ほんとに贅沢に映る。

ついつい昔話になる。

ついついモノクロで、

永遠に眠りたくなる。


不適切という言葉を

近頃、よく耳にする。

そうそう自分なんだと、

そうそう自分だからと、

黙り込んでゆく。


適切とはなんだ。

嬉しくてぴったりと

当てはまれる自分に

変わるしかないという。


それでも、それでも、

どうにかするしかない。

これが自分なんだから、

どうにか、どうにか、

受け止めてか、踏ん張ってか。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ