98話 当日、国中が祝う“王太子婚”! ウェディングドレスで高笑いリクエストも!?
いよいよ結婚式当日が決まった。秋の晴れやかな朝、私は仮再建された王城の大広間で“王太子婚”のリハーサルに臨むことになる。
国王や殿下、宰相が主導して進めるこの式は、国中から要人や貴族、さらには外国の使節まで招待した大規模なものだと聞いていた。
何百人もの来賓が集う盛大な催しで、実質的には“私たちが闇の王を倒した記念イベント”の意味合いも含まれている。つまり超盛り上がることは必至だ。
その分、私の緊張は極限まで高まっていた。花嫁教育の場では「あなたなら大丈夫」と散々言われたが、実際にこれほどの大舞台に立つのは初めてだ。
学園の卒業パーティーで殿下のプロポーズを受けたときとは比べものにならない緊張感がある。
リハーサルではドレスの裾をどうさばくか、どのタイミングで殿下と腕を組むか、王冠をいただく際の跪き方など細かな所作を延々と繰り返しチェックするから大変だ。
「はあ……ドレスって重たいのね。裾のレースも豪華すぎて、自分が埋もれそう……」
愚痴をこぼすと、侍女や取り巻きが「本番はもっと人前に出ますし、さらに緊張しますわよ!」と笑う。
私はもう言葉を失う。
学園での学芸会レベルとは全く違う、王族の正式婚がどれほど重厚なイベントか思い知るばかり。悪役令嬢として破滅を怖れていたころの自分に知らせたらどう思うだろう——あまりの展開に目が回りそうだ。
そこへ殿下が登場し、「大丈夫か? 俺も当日までに全部覚えられるか不安だけど、一緒に頑張ろう」
と肩を叩いてくれる。
殿下だってきらびやかな礼装で登場する予定だそうで、スケジュールはパンパン。
国王陛下のスピーチから始まり、祝辞や来賓の行列など盛りだくさん。途中にはちょっとしたパレード形式で市民にも顔を見せる計画らしく、私など“どこまでがシナリオでどこからがアドリブ?”と混乱するほど盛大なのだ。
それでも殿下がいると心強いし、ガイやアレクシス、アニーなど親しい仲間も来賓として列席予定だから心を保てる。
アレクシスに「お前がいよいよ王太子妃か……世の中分からないな」と冷やかされても、もはや笑って済ませられる。レオナルトに「姉上なら絶対美しい花嫁になれます!」と元気に応援されれば恥ずかしくも嬉しい。闇の王を倒した仲間たちが全員私を後押ししてくれるなら、破滅の“は”の字も起きようがない。
リハーサル終了後、殿下が私のドレス姿を見て微妙に頰を染め、「おお、すごい……ほんとに綺麗だな」と呟いてくれる。
私が「え、べ、別に普通じゃない……?」とツンデレ反応すると、殿下は破顔して「いや、やっぱりお前は光が似合うわ。闇の王を退けた令嬢だもんな。白がぴったりだよ」と嬉しそうだ。
学園時代、破滅フラグを恐れていた私が、こんな風に王子に堂々と褒められる
——それだけで胸がいっぱいになる。
夜、自室へ戻った私はうっかり涙ぐんでしまう。
たぶんそれは喜びの涙。悪役令嬢転生を自覚して焦っていた幼い自分が、ここまで幸せになるとは思ってなかった。
しかも学園の仲間と絆を築き、闇の王から国を救い、王太子妃になる道を進むなんて……。
これこそ破滅エンドの真逆、最高に幸せな大団円の予感だと実感する。
翌日以降も細かい打ち合わせが続き、式に向けての準備は加速する。殿下も書類や式典のリハーサルで顔がやつれているが、会うたびににこりと笑って「もうすぐお前を正式に迎えられる」と言ってくれる。
その言葉を聞くだけで、私も疲れが吹き飛ぶから不思議だ。
学園であれだけ破滅断罪を警戒していた二人が、いまやこんな甘酸っぱい空気を醸し出すようになるなんて。
こうして、結婚式当日のリハーサルが進み、私と殿下はもう後戻りできないところまで来た。
完全に“破滅回避”どころか“破滅の逆を突き進む夢の結婚式”が現実となる。
周囲の仲間も、私のかつてのツンデレや殿下の断罪妄想を懐かしむほど、いまは平和で幸せな最終ステージだ。
あと数日のうちに、私たちはいよいよ正式に夫婦になろうとしているのだ。
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