96話 結婚式の日取りが決定!? “国を救った光の令嬢”として秋に盛大開催ですの!
王太子との結婚式の日取りが、ついに決まった。それは私が花嫁教育を始めてからひと月ほど経過したある日のこと。
宰相から「殿下と国王陛下が式の日程を固められました。再建が一段落する秋頃に、王家の結婚式を盛大に執り行う予定です」と正式に通達があったのだ。
「あ、秋頃……もう半年も先なのね。逆に急ぎでもなくて安心だけど、そんなにはやい気も……」 私は宰相の言葉を反芻しながら、ふわふわとした気分に包まれる。
悪役令嬢として破滅を回避し、闇の王すら倒してきた私が、本当に“王太子婚”を迎えるなんて。しかも半年後なら時間も十分にある。
花嫁教育や社交の準備も間に合いそうだし、気持ちの整理もできそうだ。そう思うと緊張と嬉しさが入り混じり、不思議な高揚感に襲われる。
だが、それを聞きつけた取り巻き令嬢ズやレオナルトが「半年後? そんなに待つなんて生殺しですわ!」とか「姉上、もう少し早めでもいいのに!」など勝手なことを口々に言い出す。
母も「ま、まあ、式の準備は時間がかかるわよ? お客の招待からドレス選びまで考えたら、半年なんてあっという間よ」と宥め、私も苦笑するしかない。
実際、国王陛下と殿下が慎重に決めたのは“民衆への正式なお披露目”を兼ねた超大規模な式典だ。闇の王との戦争を乗り越えた国として、祝賀の意味合いが強い。
だからこそ王城が再建され、ある程度落ち着く時期まで待たなければならない。その判断は至極当然だろう。
夜、私は王宮の仮住まいの自室でベッドに腰を下ろし、ぼんやり天井を見上げる。
半年後、私は本当に“王太子妃”になり、式典で大勢の前に立つことになる。
かつて学園で“悪役令嬢”としてコソコソ陰のイベントを恐れていた時代とは真逆の立場。
むしろ誰もが私を祝福し、褒め称えるような盛り上がりになる——想像するだけで背筋がゾワゾワするが、決して嫌ではない。
少し不安なのは、「私、そこまで立派な女性じゃないんだけど……」という自己評価だ。
ツンデレで気が強い面もあり、殿下に甘えたり素直になれなかったりすることも多い。
でも、その殿下が“それでもお前が好きだ”と言ってくれるのだから、私はもう素直に受け止めようと決めたのだ。
破滅どころか、いつの間にか愛される人生
——多少照れながらも受け入れていくしかない。
そんな葛藤を抱えていると、ふいにドアをノックする音が。
開けてみると、なんと殿下が「ちょっといいか?」と訪ねてきた。
最近は自由に出入りし合っているわけではないが、夜の見回りで近くを通ったらしく、少しだけ顔を見にきたと言う。
「こんな夜分に何? ……人目があるから長居は困るけど、入る?」
恥ずかしさ半分で問いかけると、殿下も若干頬を染め、
「いや、中へは失礼にあたるからここでいい。……式の日程のことを報告しようと思ってさ」と声を低める。
もう宰相から聞いたと伝えると、「そうか。じゃあ、お前はどう? 半年後なんて待ちきれない?」と殿下が冗談まじりに言う。
私は「別に……そんなに急がなくてもいいわよ。むしろ落ち着いた状態で式を挙げたいし」と
素直に返すと、殿下はほっと息をつく。
「よかった……俺も無理に急ぐより、国が復興してから盛大にやりたかったから」と微笑む。
その表情には、以前の“破棄イベント”を狙っていた影がまるで感じられない。
「さて……半年後か。まだ日があるようで実はあっという間かもな。お前のドレス姿を心待ちにしてるよ」
そういう殿下の言葉に、私は心臓がバクバク高鳴る。
思わず視線を逸らして「な、何を言ってるのよ……」とツンデレが出てしまうが、殿下は嬉しそうに笑って「ふふ、久しぶりのツンデレが見れた」と言い残し、廊下を去っていく。
私はドアをそっと閉め、頬を押さえる。この半年間、私たちは“恋人”らしいやり取りをあまりしてこなかったけど、こういう小さな会話が甘くて苦い刺激を与えてくる。
(破滅フラグが消えて終わりじゃないんだわ。これから婚約者同士が、じっくりと互いを知り、正式に結婚式へ……大丈夫、私ならきっと頑張れる)
そう胸の中で繰り返し、私はベッドへ崩れ落ちる。
結婚式まで半年。長いようで短い時間を、有意義に過ごしていこう。
毎日の花嫁教育や社交レッスンに全力を尽くせば、“この国を救った光の令嬢”にふさわしい王太子妃になれるはずだ、と自分に言い聞かせる。
私は正式に結婚式の日取りを知り、若干の緊張と期待を胸に日々を過ごすことになる。
破滅はとうに消え、あとは半年後に迫る挙式へ向けて“王道の準備期間”を過ごすのみ。破滅エンドを避けきった私は、いまや王道真っ只中を歩んでいるのだ.......
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