09話 脳筋騎士見習い、ガイ参上! でも腐男子だった……?
翌週の放課後、学園の中庭で「やあっ!」と甲高い声が響いた。
見ると、まるで漫画の必殺技のようなポーズで剣を振り回している少年がいる。背は高めで筋肉質、活発そうな顔立ちのガイという新入生だ。
平民かと思いきや、最近発覚した伯爵家の落とし子らしく、騎士科に編入したばかりらしい。
彼は人目もはばからず「はああっ! これが俺の秘奥義……ドラゴンスレイヤー・ブレイク!!」と叫んでいるが……周りの生徒は「……まぁ、楽しそうで何より」とユルい反応だ。
「お、おかしい……もっと“すげえー!”とか“キャー!”とか言われるはずなのに……?」
ガイは額に汗しながらキョロキョロと周囲を見回す。明らかに注目されるのを期待していたようだが、転生者が多いせいか皆リアクションが薄い。
そのうえ、取り巻き令嬢ズが「ふふ、必殺技ごっこですの? なんて微笑ましい……」と優しく見守っていて、まるで幼稚園の発表会にでも来た保護者みたいだ。
私もその様子を遠巻きに眺めながら「あの人、結構強いのかしら?」と興味を抱く。
義弟レオナルトによると、ガイは前世で“少年漫画推し”の腐男子だったらしい。
(また腐男子……この学園、腐女子や腐男子多すぎでしょ。いったいどうなってるの?)
「でもガイは実際に戦闘センスあるみたいですよ、姉上。騎士科の実技テストでいきなり上位に入ったそうです」
とレオナルトが耳打ちしてくる。
(なるほど、口だけじゃなくて実力はそこそこなんだ……)
ガイの派手パフォーマンスを見ていたクラスメイトが「へーっ、ガイくんすごいねー」と軽く拍手。
しかし期待したような大歓声は上がらず、ガイ本人は「え、もっと驚けよ! これ俺が前世で考えた必殺技のパクリ……じゃなくて、インスパイアなんだから!」と不満顔。
そこへ私はツカツカと歩み寄る。
「ねえ……あんなに大声でやったら、疲れない?」
するとガイは振り返り、目を輝かせた。
「あ、あなたは……噂の悪役令嬢、セレスティアさんですよね!?」
「ええ、そう呼ばれてるわ。実際には大して悪役してないんだけど……」
ガイは興味津々に私を上から下まで見つめる。
「へぇ……あなたがあの“悪役”か。もっと意地悪そうな顔を想像してたけど、意外と普通だな」
「失礼ね。でも、あなたのほうこそ意外と明るいわ。騎士見習いっていうとクールなイメージだったから」
「はは、俺はもうノリと勢いが命だから! 前世からこういう“熱いバトル”が大好物で……」
と、やはり転生要素を匂わせる。それを聞いて取り巻き令嬢ズやレオナルトが「ああ、やっぱり……」と頷いている。
「まあいいわ。頑張って騎士になってちょうだい。私に迷惑だけはかけないでよね」
「へ? いや、むしろ俺はあなたに絡んでこそ“燃え上がる展開”を期待してるんだけど? 王太子×悪役令嬢と騎士の三角関係とかさ!」
「三角関係って……何言ってるの?」
ガイはニヤリと笑い、まるで少年漫画のライバルキャラのように胸を張る。
「いいか、俺は騎士として強さを追求したい。んで、王子(リヒト殿下)を倒したら、あなた(悪役令嬢)をかっさらうみたいな展開……そういうのに憧れてるんだ!」
「えぇ……それって、あなたが私をさらったら破滅じゃなくなるどころか、話が別方向に脱線するんじゃ……?」
「でも面白そうだろ! 前世の少年漫画だと、最強のライバルがヒロインを奪っちゃう展開、アツいんだよ!」
……もうダメだ、この人も相当ぶっ飛んでいる。
しかも腐男子らしく「王太子×騎士」みたいな発言も混じってきて、本当に混沌としている。
「まぁ、あなたが強いのはわかったから。怪我には気をつけてね」
そう言い残して、その場を離れようとした私にガイが呼びかける。
「ちょっと待って! 俺、あなたの光魔法の素質がすごいって噂、聞いたことあるんだけど……本当か?」
「え、いや、そんな大したものじゃ……ほんの微弱な光しか出せないし」
「そうなのか? でもその光、闇属性に対して特効ダメージが入りそうじゃん! 今後のバトル展開に絶対必要だろ! あー、ワクワクするなぁ!」
ガイは少年漫画の主人公のように目を輝かせる。本当にバトル好きなんだな……。
こうして、脳筋で腐男子という何とも珍妙なガイが加わり、学園はさらにカオス度を増していく。
悪役令嬢としての破滅フラグ? なんだかもうどこかへ飛んでいきそうな勢いだわ……。
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