89話 モブ令嬢が『破談になるって聞いたのに…?』と混乱! 周囲が“おめでとう”で盛り上がってしまいましたわ!
卒業パーティー翌日、学園生たちの間で「リヒト殿下は婚約破棄するって話だったのに、実は結婚するんじゃないか?」
という話題が炸裂し、なかでもモブ令嬢たちが「破談になるって聞いたのに…?」と半ば驚愕まじりに私へ問いかけてくるようになった。
「セレスティア様、本当は婚約破棄されるって噂を耳にしてたんですけど、殿下が昨日あんなふうに『破棄なんてありえない』って言うなんて……一体どういうことなんですか?」
モブ令嬢の一人が大胆にも朝の廊下で尋ねてきた。
すると取り巻きが「そうですそうです! 前世の知識では悪役令嬢は破滅が定番でしたのに、今回まったく来ませんわ……」と便乗する。
私はため息をつきながら、「ええ……私も最初はそう思ってたけど、現実はこうなっちゃったのよ」と苦笑しか出ない。
そこへ通りかかったリヒト殿下が、「学園のみんな、すまないな……もう破棄なんかしないよ。むしろセレスティアとの仲は安泰だから、楽しみにしててくれ」と言い放つものだから、周りが一斉に盛り上がり「えー、本当に!?」「ざまぁシーンなし!?」と口々に質問責め。
殿下は「うん、残念ながら……“ざまぁ”どころか俺のほうが負けたんだ」と自嘲ぎみに肩をすくめる。
結果、「破談になるって聞いたのに、全然そんな兆しなかったですね!」とモブたちが大笑いし、「まあ、セレスティア様と殿下の仲は盤石ですよ!」と結論づける。
そこにアニーやガイ、アレクシスらが通りかかると、「おめでとう!」「うん、これが新時代の悪役令嬢破滅回避だね」「そもそも悪役じゃないだろ!」など、口々にツッコミ合い、まるでお祭りムードに包まれる。
私はその光景を目にして赤面しつつ、「ほんとにもう破滅フラグって完全に消えたのね……」と実感する。
モブ令嬢の言う通り“破談になるはず”という噂がずっとあったのに、今は“逆にほぼ結婚”が既定路線になっているわけだから、こんな大逆転は他に類を見ないかもしれない。
「これで卒業式を迎え、学園を去っても、私にはもう破滅の心配はないわね……」
そう思うと、気が抜けるように安堵が広がる。悪役令嬢として突き落とされる図を警戒していた私が、今や学園中から祝福される立場。
もはや婚約破棄を誰も信じず、むしろ“早く結婚すれば?”という声すら出てきた。
そしてその日の放課後、取り巻き令嬢ズが私のところへ駆け寄り「セレスティア様、これまで波乱を期待しちゃってすみませんでした。
結局破滅とか見られなかったけど、私たち、ドラマチックなハッピーエンドも大好物なんですよ!」と涙ながらに言う。
私は呆れながらも「あなたたち、ほんとに欲張りよね……破滅でも喜ぶ、ハッピーでも喜ぶって」と笑うと、取り巻きは「あはは。でもセレスティア様が幸せそうならそれでいいんです!」と手を握ってくる。
「ありがとう……私も、皆が私を支えてくれたから、闇の王も倒せたし、破滅なんてどこへやらだし……本当に救われたわ」
素直にそう伝えると、取り巻きが泣き笑いしながら「やだ、セレスティア様ってば……かわいい!」と盛り上がる。私も彼女らの支えを感じながら、この学園が優しすぎる環境だったことを再認識する。
前世知識では悪役令嬢が散々な目に遭う物語をよく見たが、ここでは“周囲が全員転生者”のせいで、破滅が寸断されてしまう結果になったのだろう。
最後にモブ令嬢が「破談になるって聞いたのに……嘘だったんですね!」と口にして周囲が笑い合い、私が「だって殿下が破棄する気ないんですもの」と微笑むエンディング。
学園生活ももう間もなく終わるが、婚約破棄ではなく“おめでとう!”で送り出される未来が約束されるかたちだ。
ついに“悪役令嬢のはずが、婚約破棄はない”と皆が確信している今、私が破滅するフラグは完全に消失したといっていいだろう。
残るイベントは卒業式と、そのあとの進路報告。
私はリヒト殿下の隣に立って国へ戻り、いずれ王太子妃として仕えるのだろう。
もう誰も“破談”など期待しないし、私自身も破滅なんてまっぴら。こうして学園での“悪役令嬢転生騒動”は、断罪の一度も起きないままゴール寸前にたどり着いたのだと私は噛みしめるのだった。
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